• 異世界ファンタジー
  • SF

書籍化記念!SS

11/17 KADOKAWA電撃の新文芸様より『森に生きる者』書籍化させていただきます~!
たくさんのお祝いありがとうございます!

もう明日!!
一足先に手元に届きましたが、大興奮でございました(*>∀<*)
アル可愛い……ブラン可愛い……
素敵なイラストもたくさん描いていただきまして、感無量!!

アニメイト様、ゲーマーズ様、メロンブックス様にてそれぞれ別のss特典付きの書籍をご購入可能ですので、是非そちらもチェックしてください!
お手元に置いて楽しんでいただけますと嬉しい限りございます……!

PRの仕方がよく分からないので、とりあえず喜びのまま小話を載せます。

皆様のご健康とご多幸を祈って――――


*******

 ≪いつかやりたい10のこと≫


 温かな木漏れ日は眠気を誘う。
 ブランは大きく口を開いてくわりとあくびをした。

「眠そうだね、ブラン」
『……うむ』

 隣に座っていたアルがくすくすと笑いながら優しく撫でてくる。その膝に置かれていた本のページが風に遊ばれた。

「あ」
『どこまで読んだのだ』

 軽い紙でできた本だったらしく、瞬く間にどこまで読んだか分からなくなる。アルは暫く沈黙して、諦めたようにため息をついた。パタンと本を閉じるので読書はやめるつもりらしい。

「今日はもういいや」
『ふーん……。そもそもなんでこんな森の中で読書なんてするのだ』
「だってここ居心地がいいんだもの」

 笑ったアルが本をバッグに仕舞うのを見つつため息をつく。

『お前は読書以外にしたいことはないのか?』

 アルは森に来ると、冒険者としての仕事をするか、読書をするかしかしていない気がする。ブランからするとあまりにつまらない生き方に見えた。

「したいこと、かぁ……」

 パチリと瞬いてブランを見たアルが、首を傾げつつ空を見上げた。
 ゆるりと撫でてくる手の下でブランは目を細めて身動ぎする。ちょうどいいところに膝があるので、のそりと起きて膝の上に寝転がった。頭上で空気を含んだ小さな笑い声がする。

「そうだなぁ」

 アルが途切れ途切れに語り出すのに耳を澄ませた。

「美味しいご飯を好きなだけ食べたい」
『うむ、我も旨いものは好きだ』
「満天の星空の下で眠りたい」
『開放感のある寝床もたまには良いな』
「好きに魔道具開発もしたい」
『……すればいいんじゃないか?』
「図鑑でしか見たことのない植物を採取したい」
『……やればいいだろう』

 アルが言うことがあまりに些細なこと過ぎて返答に困る。したいと言うなら今すぐすればいいのに。

「……旅に出たい」
『ん?』
「今の立場をぜーんぶ捨てて、自由に生きたい」

 ブランが見上げる前にアルが覆い被さってきた。表情は見えないが声が苦しそうだ。

「人と関わらずに生きていたい」
『……』
「誰も僕を知らない場所に行きたい」
『……』
「いろんな場所に行って、美味しいものを食べて、探索するの」

 疲れたような呟きを聞いてブランはため息をついた。アルは気づいていないようだが、酷く寂しげな口調で語っていた。全く、手のかかる人間だ。

『我が一緒に行ってやろう。お前がしたいことを共に』
「え……」
『我は随分長いことこの森に居たからな。久しぶりに遠出するのも悪くない』
「ブラン……」
『どこに行こうか。何をしようか』
「……ふふ、ブランが居てくれるなら、どこに行ってもきっと楽しいよ」

 アルが顔を上げた。幸せそうに綻んでいる。それを見てブランは尻尾をパタリと動かした。

「ブランとずっと一緒にいたいなぁ」

 叶わない望みであるように寂しげに呟かれる言葉を鼻で笑う。

『お前が望むなら我は共にいよう』

 この言葉はちゃんとアルに届いただろうか。
 ブランは嘘をつかない。アルが本心で望んだなら、いつだって旅に出ても構わないのだ。
 アルはまだ全てを捨てきれない。だから、アルの言葉は今はまだ夢想。でも、いつの日にか、もしかしたら。

 ブランは居心地の良い場所で目を伏せた。いつの日にか訪れる日々を楽しみに、今はただのんびりと静かな日常を過ごすだけ。うつらうつらと微睡みの中――――




コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する