「予想を裏切らないですね」
「ティアが」
「瀕死」
無言の大爆笑で。
笑いすぎの。
瀕死に陥っている。
めったに。
お目にかかれない姿。
「まあ、気持ちはわかります」
──まさか。
──一気飲みするとは。
──思わんがな。
気持ちいいほど。
一気にいった。
花とレモンが。
噛み砕かれ。
「うまっ!」
「さわやかだな」
頷いている2人は。
3人を。
曇りなき眼で。
──あってるよね?
見た。
「あはははははは!」
「お腹、お腹痛い!」
「清々しい!」
琥珀色の髪の美女は。
机に伏して。
ついに声を出した。
「なんと」
「ティアの大爆笑」
「見たかったでしょうね」
普段の顔を知らない。
他の学生たち。
「んっ」
「はいはい」
金色の彼が。
紫色の彼に。
手を差し出した。
「おしぼりですね」
「いつもは」
「おしぼりなんですよ」
趣向を凝らしてみました。
胸を張る。
紫色の彼に。
瀕死の美女は。
グッと、拳をあげた。
「和やか」
黒髪の。
可愛らしい子は。
和やかな。
賑やかな様子を。
にっこりと見ている。
「好きだなあ」
ポツリ。
一滴の。
水の粒が。
広大な湖に。
落ちたように。
静かな音と。
まあるい波紋が。
賑やかな空間に。
広がった──。
「ラナは」
「ん?」
飲みきって。
フィンガーボールの。
おかわりを。
そそいでいる彼が。
「なにが」
「好きなんだ?」
小さく。
チラチラと見ながら。
訊ねた。
「みんなが」
「平和に」
「楽しくしている姿」
「大好き」
にっこりと。
無邪気に。
満足気に。
笑った。
「そうか!」
「おれちたといると」
「楽しいか?」
フィンガーボールの。
おかわりを。
再び。
一気飲みして。
訊ねる。
「うん!」
「楽しい!」
金色の彼は。
「あなた、ちょっと」
「待ちなさい」
紫色の彼の。
制止の前に。
──フィンガーボールの。
──まさに。
──ボールから。
一気飲みをした。
「あはははははは!」
「お腹、もう無理」
琥珀色の美女は。
もはや。
瀕死をこえて。
脇腹、痛いと。
押さえている。
「あの、ラナさん」
「なあにロシュ」
名を呼ばれて。
1度。
椅子に。
額を。
「カニっ!! 推し! 供給過多!!」
謎の掛け声とともに。
強くぶつけた後。
「こ、このオシャンティー?な」
「カニをよりよく」
「食べられるための」
「オシャンティー」
「飲まないのか?」
フィンガーボールの。
別名は。
オシャンティー。
と、本日。
命名された。
「うん!」
「飲まない!」
いい笑顔で。
はっきりと。
お断りして。
「ロシュは」
「もういらないの?」
「いただきます!!」
オシャンティーの。
ボールを。
引き寄せて。
勢いよく。
飲みほした。
ティアルは。
バンバンと。
机をたたいて。
もはや。
話せない。
「オシャンティー」
「流行りそうですね カニ」
「あ、疲れてる」
頭に。
いつの間にか。
こどもが来店したようの。
カニの。
可愛らしいお面を。
額につけて。
カニカニマークをしながら。
フィンガーボールならぬ。
オシャンティーの。
おかわりをとりに。
横歩きで去っていく。
紫色の彼を。
ラナは。
無言で。
激写した。
もちろん。
オシャンティーを。
ボールで飲む。
彼らの姿は。
紫色の彼が。
激写している。
マダム方に。
高く売れる。
よい写真。
オシャンティー。
1枚。
何円からスタートか。
謎の句を詠みながら。
一気飲みするとは。
さすがに。
思わんかった。
と、カニの面を。
顔にずらして。
肩を震わせる。
「あなたがたの」
「ポンコツ具合に」
「わりと」
「すくわれているのですがね?」
いや。
ここまで潔いと。
気持ちいいな。
をい。
「カニ食べよ?」
ラナが。
カニを凝視して。
いつの間にか。
フィンガーボールに。
指先を。
入れたから。
「その、ラナさん」
「飲、みますか?」
金色の彼と。
赤茶の2人が。
オシャンティーを。
凝視する。
「ん?」
「飲まないよ?」
「もらってもいいかな!」
「半分よこせ!」
「させるか!」
いつの間にか。
復活した。
琥珀色の髪の美女は。
「お持ち帰りで」
「承知いたしました」
「なんにつかうのー?」
「庭のひまわりが」
「元気いっぱいに育つように」
「そうなんだー」
「ええ」
「そうですよ」
本当に。
ひまわりに。
あげるつもりで。
言ったのだが。
「よこせ」
「オシャンティーよこせ」
「誰があげますか!」
「ラナ」
「あなた」
「気をつけなさい」
「なにを?」
紫色の彼が。
お面の下から。
真面目な顔で。
言うものだから。
「ごらんなさい」
「カニを器用に食べながら」
「キャットファイトですよ」
「なんで?」
夏の怪談に。
混ざりますねえ、と。
紫色の彼は。
黒髪の可愛らしい子の頭を。
ポンポンとした。
「ありがとー」
「好きですね」
「好きー」
頭を。
紫色の彼に。
優しく。
撫でられるのが。
と、中身を。
とばしたものだから。
「テメェ! 表にでろや!」
「暑いから嫌です」
「お前」
「そんな」
「裏切…」
「なんであなたは号泣するのですか」
金色の彼が。
オシャンティーに。
名をかえた。
フィンガーボールの。
三度目のおかわりを。
ボールごとしながら。
号泣して。
見上げてくる。
「はい、ラナカニさんですよ」
カニの刺し身を。
丁寧にとって。
琥珀色の髪の美女は。
せっせと。
「カニー」
「美味ー」
うまうまと。
口を開ける。
黒髪の子に。
運ぶ。
「なかなかに」
「予想をこえましたね」
ぎゃあぎゃあと。
左右から。
紫色の彼は。
引っ張られ。
「扇がたー」
「3人で学習発表会の」
「練習でしょう」
「すごーい」
「両腕が」
「生ぬるい!」
紫色の彼が。
「カニっ!」と。
気合を入れて。
振り払う。
「感想そこなんだー」
「まあ」
「生ぬるいでしょうね」
スマホで。
扇形をした。
3人を。
激写して。
紫色の彼の。
目が。
「おや、めずらしい」
いきいきと。
輝いていたから。
「好きなんじゃないですか」
「好きー」
「はい、好きですよ」
後に。
このカニ料理店も。
紫色の彼の。
私物だと。
聞いた。
金色の彼以外の。
反応は。
「1番の怪談!」
こわっ!
「え、あいつ」
「たくさん私物」
「趣味で」
「怖っ!」
「嫌だー怖いよ!」
「こっわ」
感覚こわっ!
「ラナ、は」
「あの」
「怖い!」
ばっさりと。
金色の彼が。
言い切る前に。
いい笑顔で。
言ったから。
「なあ、おれさ」
「言いたいことはわかる」
校門前の。
やりとりは。
「初めて」
「セミが静かだなあって」
「わかりみ」
夏の怪談の。
風物詩となった。
青空の底なし。
賑やかな夏。
そこにある。
「オシャンティーの写真」
「買った?」
「買ったわ」
「買うわあ」
「レアキャラばっか」
「いや」
「仕事あがりの」
「会社員の飲みっぷりだわ」
「ビアガーデンのな」
「テレビでよく見るやつな」
推しが。
増えた夏──。
カニカニ祭りが。
恒例になった。
記念の夏──。