『どろろヨガ』の主人公、マル子のように物心ついた時から体が歪んでいたカスタは、何かがおかしくても『そういうものなんだから、何を言っても無駄だ』と諦めて、早くから達観していた。大人になってから急に思いつきでヨガを始め、それがきっかけとなって、絶対に動かせない巨大な石を1ミリだけ動かせるような驚きの体験をする。しかし、その1ミリは何十年も積み重なるうちに、目に見えて大きな違いに変わっていく。 今でもまさに、マル子の右足の付け根が『グリン』と動いて歪みがほんの少しだけ改善したのと同じく、右膝の軟骨がコキコキ言って、その翌日は膝が痛くてうまく歩けなくても、さらに何日かすると膝のインナーマッスルがより強力に鍛えられて、今までできなかったヨガのポーズが突然できるようになったりしている。そして同年代の友人達は、高血圧になったり糖尿病になったり、マル子とヒデカのように極端な話ではないにしても、あの時の『1ミリ』の差で、たぶん健康寿命にも何十年もの差が出てしまいそうだ。 そんなカスタの本業はプログラマーで、『俺様サガ』の『迷宮』システムみたいな、何十年もの歪みに耐えてひしゃげた、陳腐化したシステムを深く調べていくうちに、「これ、自分の体のようだなあ。最低限生き延びることを最優先した結果、歪んだ状態で固定化してしまったのと同じじゃないか。しかし1ミリだけだとしても、改修することができればまだ未来があるかもしれないぞ」と妄想する。しかし現実は、シマダ主任のように先に絶望し終わっていた先輩から「そんなの無駄だ」と反対されて改修はさせてもらえず、なんだかモチベーションを失って会社を辞めてしまって今に至る。 だってさ、仕事って本来は提供できる価値の物々交換なわけじゃん。私が食べ物を調達するから、あなたは住む所をなんとかしてよ、みたいな。それが発展して分業するようになって、物々交換だと交換レートが分かりづらいからお金というものが発明されたんだよね。なのにいつの間にか「私は仕事してるフリしてお金だけもらうね。でもお前はちゃんと働けよ?」って、要領よくやったモンの勝ちみたいになってる。そんなの全員がやり出したら、この世から価値なんて消えてなくなるじゃん。そこにいたら私もそうなっちゃいそうで、本当にイヤだったんだ。 でもさー。 「しかしカスタよ。お主はヨガのおかげでものすごく健康になったのだから、この先人生は長いぞ。もうすぐ年金ももらえるであろう。しかしお主が提供できる価値をちゃんと提供しなければ、死ぬ時に走馬灯みたいに見る『時間の本』のイッキ読みのクオリティが下がっちゃうぞ」 と、心の中の賢人が囁く。 実はカスタは病気と診断されない程度の多重人格なのである。物語に登場するキャラクター達も、もちろん、カスタの内的人格ですが、何か? 脳内人格達がいろいろ言うのはちゃんとした理由があって、要するにエネルギーを腐らせるなということだ。周りを見渡せば、習い事を詰め込み過ぎてストレスが溜まった社長婦人とか、スマホを見過ぎてストレートネックになっちゃった中流階級マダムとか、悪いけどあまり楽しそうには見えないよ。私は自分らしさを発揮して働けたら幸せなんじゃないかな。とりあえず、開発できるものは開発して、創作できるものは創作して、マイペースで発表していこう。 妄想の力で三年寝太郎のように何か役に立つことを考えてみよう。人の役に立つだけではなくて、自分も考えていてワクワクすることがいい。そして『妄想知能指数DIQ』みたいに妄想の力が現実を侵食していき、現実を1ミリだけ書き換えられる時、『時間の本』の現在ページが書き変わって、そこから先の未来も滑らかに連動して変わっていくのだ。 私の考える物語はどんなにマルチバースを超えて壮大になっても、ちゃんと身近なところへ戻ってくる『青い鳥方式』だから、収拾がつかなくなる心配はいらない。 そして今も、カクヨムというシステムを1ミリだけ動かすかもしれない『AI活用埋もれた名作発掘ツール』を開発したけど、これけっこう面白いんじゃないかな。だってね、人目を惹きやすい流行りのジャンルとか、タイトルだけ見て読みたくなるものとか、長期連載ものは圧倒的に有利だけど、逆に1話で完結するすごく面白い話もあるだろうし、人目を引かないけど読んでみたら一生心に残る話もあるはず。カクヨムにはそれが大量に埋もれているんじゃないかな? この物語は壮大なメタフィクション。これからカスタはこのツールを使ってどう現実を侵食していくのか?妄想は現実にどれだけの影響を与えられるだろうか?平面だった世界が徐々に立体感を取り戻していく。 完、もしくは続く。
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