いつも旅路にお付き合いいただきありがとうございます。
きりしまです。
先日、個人的な聖地巡礼の旅に赴き、その際に資料ついで様々なものを買い込んでまいりました。
聖地巡礼の詳細は別の機会に。
これはその旅の記録、味の記録、いつかどこかで作品に組み込まれる一文。
忘れたくなく、けれどどこかに残しておきたい、お裾分けをしたい……。
ならばここであろう、と記載をするものです。
いわゆる取り留めもない、旅の際、隣に座る誰かの呟きとお思いください。
今回の記録は
<りんごの花からとれた蜂蜜から造られた、蜂蜜酒>
ショットグラスについと注ぐ。黄金色の、僅かなとろみすら感じられる液体。
蜂蜜酒<ミード>。
これはりんごの花からとれた蜂蜜でできているという。
こうしたものはまず常温で楽しみたい。
冷やすと香りが落ち着いてしまうこともあって、個人的に常温から入るタイプだ。
お作法についてはお許し願いたい。
すぅ、と香りを楽しむ。
唇をつける前から微かなりんごの香りが鼻孔をくすぐり、期待を膨らませる。
グラスの縁、傾く黄金色の蜜、唇に触れたものをそっと舐めるようにして口に含む。
まず口内に広がったのは優しい甘さ。
りんごを食べた後のような、しゃくりとした歯切れのよい瑞々しい爽やかさ。
まさしく、りんごの実そのものを食べた後のような食感の錯覚さえ覚えた。
次いで舌にひろがるふうわりとした蜂蜜の香り。そう、蜂蜜酒なのだから当然、しかしながらその香りは穏やかで、日頃イメージしている濃い甘さのものではない。
りんごの影に隠れる恥ずかしそうな少女の姿が思い浮かんだ。
なにやら面映い、ふっと微笑むようにして息をついた。
美味しい。
個人的な好みで甘さの強いものを選んできたが、これは正解であった。
これだけでケーキを食べているような満足感さえ得ることができる。
だが、アルコール度数は10。
ショットグラスでストレートを続けるには酔いが回り、きりしまの体質的にも耐えられない。
ここは大人しく何かで割ろう。
こういう時のために、きりしまは炭酸水を常備している。
こちらも今回は常温、次回はキンキンに冷やして割るとしよう。
蜂蜜酒はショットグラスで2杯、それの4~5倍の炭酸水で割る。
薄っすらと黄金色を保ったままのソーダ割りも美しい。
お酒の何がいいって、この色味だよなぁ、と下戸だからこそ眺めて楽しむ数分。
きりしまは炭酸の強さが苦手なのである。
炭酸が落ち着いてグラスを撫でて浮き上がるものが無くなる頃、いただくことにした。
香りが変わっている。
少し深いグラスにしたからこそ、ダイレクトに立ち上る香気が蜂蜜に変わっていた。
先ほどりんごの後ろに隠れていた少女は、怖いものなどないというかのように手足をぐっと伸ばし、軽やかに柔らかな草を踏んで青空の下に躍り出ていた。
その味を確かめるように口に含む。
舌先を僅かばかり刺激する炭酸の柔い感触、りんごはどこにいったのか、これは蜂蜜酒である、と淡い黄色のワンピースが躍る。
しかし、あぁ、彼女のことを忘れることはできない。
淡い黄色のワンピースが裾を翻した向こう、ピクニックシートに赤いワンピースを広げて座るりんごが頬杖をつき、微笑を湛え、たっぷりとした黄金色の髪を風に遊ばせていた。
<りんごの蜂蜜酒 秩父星花>