本編完結にあたり、設定などをメモしておきます。
今回は舞台設定や小道具についてです。
雪椿は主人公の一人称で進む物語のため、基本的に主人公の見えるもの、感じたこと、知っている語彙で話が進みます。
この編集ノートでは、本編ではほとんど説明しなかった舞台設定や小道具について、少しだけご紹介します。
ご興味のある方はぜひ。
◆注意◆
重要キャラクターの設定や小道具など、本編後半のアイテムについても解説しています。
ネタバレが気にならない方、もしくは本編読了後にご覧いただくことをお勧めします。
【設定】
主人公の家の食事
基本は麦飯でおかずは少なめ。
初めての食事シーンで焼き魚を食べていますが、山奥の里としては、少しご馳走よりです。
白米、卵、砂糖は贅沢なもの。
椿様の屋敷
洋館+和館の造り。
本来の一族の生活の中心は洋館ですが、療養に戻ってきた雪水は和館の奥の二間を療養兼生活の場として使っています。
主人公(と読者)は庭の方から雪水の部屋を見るので、奥の間と前の間の関係性が逆に見えています。
本来は前の間=公的な場所、廊下から入った部屋。箪笥などがある。
奥の間=私的な場所。寝室。主人公と雪水が会っていた部屋。
屋敷の造りは、実在のお屋敷を一部参考にしました。
奉納神事
舞では長い裾を引く姿を描きたかったため、祝詞をあげる神事のあと、舞台上で装束を重ね、化粧を施す流れにしました。
神事の際はベースとなる赤の単衣に白い小忌衣(おみごろも)を重ね、白袴と薄布の面布を身に着けます。
舞の時にはさらに裾を引く赤の衣と白の衣を重ね、黄色の平緒を結びます。
手には椿の枝を持ち、神事では「白・赤」、舞では「白・赤・黄・緑」の四色が揃うように設計しました。
奉納舞は実在の舞を参考にしつつ、『雪椿』用にアレンジしています。
「あちら側」と「こちら側」
「赤の椿はまだいい。あれはまだ『こっち側』だ。だが白の椿は違う。あれはもう『あっち側』だ、触れちゃなんねぇ」
あちら側(異界側)の食物を口にすると、こちら側に戻れなくなる。
あちら側(異界側)のものに触れることは、死や境界に近づくことにつながる。
逆にあちら側(異界側)の存在がこちら側の食物や物を受け取ることも、こちら側に影響を及ぼす。
椿家の能力
・椿家の直系
「近いうちに人が亡くなる」ということがわかる
椿が落ちると、どの家に関わるものかがわかる
ただし、「誰が」亡くなるのかまではわからない
・椿様(当主)
死が近づくと、「誰が」亡くなるのかまで分かる
椿が落ちると、おおよその時期もわかる
→葬儀やお山登りの準備を整える
なお、当主も椿が落ちてからいつ亡くなるかという日時までは分かりません。
「十日ほど」といったおおまかな期間だけです。
本編では、椿家の力について詳しく語られることはありません。
里の葬儀
里の葬儀を取り仕切るのは、当主だけの仕事。
椿家の葬儀は里の住人とは違い、詳細は里の人々には公開されません。
椿家は、墓地も里の住民とは別の場所にあります。
【小道具】
ラムネ
古き良き、ガラス瓶にビー玉で栓がしてあるタイプです。
現在よりは炭酸がやや弱いという記述を見かけたため、開けるときの音も控えめにしました。
「ポン!」「シュワ!」ではなく、「ことん」「しゅわ……」。
夏休みの宿題
宿題ドリルの出現はもう少し後の時代のようでした。
そのため、夏休みの宿題は教科書の問題の復習や日記といったものになっています。
日記も絶対に毎日書かなくてもいいくらいの緩さです。
線香花火
現代のように花火の締めに一本ずつ楽しむのではなく、娯楽の側面を強めに出して、買った分が終わるまでふたりで楽しんでもらいました。
主人公は「椿は線香花火がうまい」と悔しがっていますが、「いつも主人公の火玉が先に落ちる」ということは後半の象徴でもありました。
べっこう飴
現在ほど薄く画一な形ではなく、厚さも大きさもばらばらで無骨なイメージです。
まだビニール袋は一般的ではないので、薄い木の板(経木)にくるんで持ち帰りました。
ポケットに入れる主人公。袂に入れて、落ちないか確かめる雪水。重みが違います。
団子
秋祭りでの団子は素朴な上新粉などを丸め、軽く醤油であぶった簡素なもの。
雪水がもてなしで出した団子は現在のみたらし団子に近いもの。白玉粉などを使った、祭の団子よりももちもちと柔らかくのびがいい団子です。
さらに高級品の砂糖をふんだんに使った甘辛のみたらしあんと、炒って砂糖とまぜたきなこが使われています。
主人公に供された時点で「焼き目がついていてほんのり温かい」ことから、準備のほどがうかがえます。
行灯の火
こちらも関係性を示す小道具として機能していました。
「部屋に入って火をともす」ことはもちろん、
「もうすぐ戻るかもしれないから明るくする」
「出かける前に火を少し落とす」
あたりです。相手の事を思っての動きや、先の行動の予告になっていました。
お茶の道具
雪水の持ち物は全体的に「派手ではないがいいもの」を意識していました。
鉄瓶 使い込まれた南部鉄瓶
湯飲み 蓋つきの陶磁器の湯飲み 模様入り
漆の茶托
お茶会
本来は冬なので厚いお茶碗が一般的。ですが、雪水は先の季節の「水色の薄い茶碗」を用意します。
茶碗 灰青磁の茶碗(貫入が激しくはないもの)
菓子皿 椿の葉を模した織部(懐紙ではなく皿で)
お菓子 椿を模したお菓子
お茶菓子は、奈良でお水取りの時期にだけ販売される「糊こぼし」をイメージしています。
時期が難しいので、ここは椿家の権力を利用して(笑)、出入りの職人さんに作ってもらいました。