◆第1神
島崎大地と春雨呱米のn回目の誤認逮捕から、落ち着いてしまった春雨。
「うわぁあ!ごめんなさいごめんなさい!」
「お前ら何回目だマジでぇ!」
竜胆さんに怒られ、春雨呱米は謝罪をした。
目の前で逮捕されてしまった神居の人は苦笑いを浮かべ、大丈夫ですよ。と答えてくれる。春雨は半泣きの顔でベソベソと泣いている。
「うぅ、神様の色と似てるのが悪い〜」
「お前らの守護者が何にも言わねえのが悪いわ」
「夏目は正しいぞっていうんですよ毎回…」
ため息をついたのだった。
「──こちらが感染した妖怪です。一応マガツヒは壊したんですけど頭をぶつけてしまったので念のため診てもらっても良いですか?」
「…わかった、診察しよう」
5日前から、春雨の動きが変わった。何かを思い出したかのように落ち着き払った動きをしている。
「…最近は間違えないな」
「やだなぁ、もういつの話してるんですか〜」
「5日前の話だが」
「ふふ、もうしませんよ」
…あの時の無邪気な顔は鳴りを潜め、今はただ何かを知っている顔をした、女がそこにはいたのだった。
◆第4神であった、蓮水と広大
「広大広大〜あのさぁ、今日暇なんだけど一緒に人ナンパしに行かない?」
「行かない、帰れ」
「ひどいよ!僕がいつもこんっっなにお願いしてるのに!」
「関係ない帰れ」
「ちぇっ、いすわっちゃお!」
「居座んな、か・え・れ」
全く話を聞かない蓮水に呆れ返る。ため息をつくと蓮水はニヤァと笑った。
「なんだよ、その笑み」
「ふ、そんなこと言っていいのかなぁ〜僕は特大のネタを持ってきたのに♡」
「…どうせどうでもいいことだろう」
蓮水はふふふふと笑う。気味の悪い笑みだ。こういう時は碌なことがない。
「そんなことないよー!なんと!神無蓮が生まれ変わってましたー!どう?どう??僕としてはもうさいっこうに大きなイベントだよ!」
一拍の間。蓮水はまだ笑みを浮かべている。どこか不気味に笑う顔に、自然と口に出る。
「は…?」
「特大のネタでしょう?」
ああ、ほら。碌なことなんてなかった。
◆第4神 その頃家族は。
「お兄ちゃん帰ってくるの遅いね〜」
「どうせまた不幸な目に遭ってんだよ」
「まあ気長に待ちましょ」
雨音を聞きながら、車の中で気長に待っていると、傘を差した先生が走ってこちらに向かってくる。
「神無蓮くんのご家族様ですか?」
「はい、そうですが…うちの蓮が何か?」
「実は先ほど廊下で倒れてるのを発見しまして、今保健室で寝てて」
「はあ!!?」
慌てて降りた母さんはにいちゃんを迎えにいくから待っててと言い残して兄を迎えに行った。
帰ってきた兄はといえば眠りこけていて体格のいい男性教師におんぶされて戻ってきた。
「えー!何やっても起きないー珍しい〜」
ぱちっと目を覚ました兄は起きて早々に「うわ、膝の上に乗るな」と言ってきた。誰も乗ってない膝の上に向かって何言ってんだこの兄は。
「は?何言ってんのにいちゃん」
「え!?」
キョロキョロとし出して、はぁ、とため息をついた挙動不審な兄に俺たちは首を傾げたのだった。
◆第5神の火雷から電話がかかってきた広大。
書類を片付けている横で、突然電話が鳴った。
まあ、最近忙しいからもしかしたらそういう案件なのかもな…そう思いながら手を取った電話番号は見覚えがない。
とりあえず取る。
『あ!広大?あのね!今蓮がピンチなの!』
脈略も何にもない、でも声が火雷様だということもとにかく蓮が大変なこともよくよくわかった。
答えは一つだった。
「了解しました、今行きます」
通話を切って、息を吐く。
「…あいつはいつも何かに巻き込まれるなぁ…!」
旧友の体質を少しだけ恨んだ。
◆第8神で出てくる女子高生の話。
親友に好きな人ができたらしい。
「蜜柑ちゃんの彼氏だってわかってるんだけどさぁ!かっこいい人に恋しちゃうのは仕方なくない!?」
ファミレスで親友がそう叫ぶ。私ははジュースを片手に笑った。
「間違いない!ちなみに私は會くん派〜」
「芸能人とは違うかっこよさが一馬くんにはあるんだから」
親友が、こそこそ一馬くんを見てはきゃー!と楽しそうに声を上げて笑う顔。
一馬くんが体育で頑張ってる。かっこいい〜本当にかっこいい〜と恥ずかしそうに、でも嬉しそうにしてる姿がとっても可愛かった。
「うぅ〜すきぃー!」
好きが降り積もって、最後に彼女は恥ずかしそうに俯く帰り道。
「明日、一馬くんに告白しようかなって思ってるの…」
照れたように笑う親友に私は驚く。
「ええ!?」
「どうせ無理ってわかってても、後悔したくないからさ!」
そんなまっすぐな目を見たら、止めるなんてできないし。そもそも今までの好きに私なんかが止めるだけ無駄なのもわかったので、親友を抱きしめる。
「なら砕けて来い!」
「うん!ありがとう!」
…次に会った時は四角い箱の中だった。
何も入ってない、四角い箱。
神様はどうして、親友が死ぬことを私に教えてくれなかったんですか?
どうして、あの日に止めるように私はしなかったんでしょうか?
私があの日、あの時!あの瞬間!止めていれば…!
もしかしたら…
なんて、有りもしない願いだけを、あの日と同じ空を見て私は祈るのです。