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第76話 屋上

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第76話 屋上
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――――【善行目線】

 最近若葉は雅人のようなクズに力ずくで良いようにされないために菜々緒から色々と習っているようだったが、心配なことは間違いない。それにあんなに毛嫌いしていた龍崎と共に教室を出たのが気になって仕方なかった。

 龍崎晶……雅人とはまた違ったヤバさをひしひしと感じる。

 思い込みが激しくて、とにかく若葉に絡んでくるからだ。

 方々を探していると、

「若葉ちゃん? イケメンくんと階段を昇っていったよ」
「うんうん、なんだか若葉さんは不安そうだったけど」
「ありがと」

 廊下にいた二人の女の子に声をかけると、若葉たちを見ていたようで、指差しで行き先を教えてくれた。

 校舎中央の階段は屋上に通じている。二人は間違いなく屋上へ行ったのだろう。

 俺は若葉になにがあっても見捨てないし、必ず取り戻す。絶望して若葉を残し、ひとりで逝ってしまうこともしない。

 そうとなれば俺は段を飛ばして、階段を駆け上がって屋上へと通じる扉を勢いよく開け放っていた。

 開け放った瞬間に薄暗い踊り場に明るい陽の光が差してして目を腕で覆う。目が慣れてきて、霞んでいた視界がクリアになると龍崎は真っ青な顔をしており、対照的に若葉はとても晴れやかな表情を浮かべていた。

 それでも俺は気が気でなく……。

「若葉、ここにいたのか……なにもされてないか?」
「兄さん……はい、無事です」

 俺が若葉に声をかけると、彼女は以前のような照れからくるツンはどこへやら素直に好意を示していた。

「お、おい若葉!?」

 ぜったいに俺から離れないと強い意志の下、龍崎へ見せつけるように、俺と若葉の間に隙間などまったくないといった具合にぎゅっと俺たちは密着していた。

「ありがとう、兄さん……必ず駆けつけてくれると信じてました」

 上目づかいで俺を見つめる若葉の瞳から一滴の涙がこぼれる。

「若葉!? やっぱり龍崎に……」
「いいえ、違います。兄さんとこうやって過ごせるのがうれしいんです」

 俺の心配は杞憂だったようで人前だということを忘れて二人で抱き合い、ここで保健室の続きを始めてしまいそうなくらい甘いひとときとなっていた。

「う、うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!」

 俺が若葉の頭の後ろと背中に手を回して抱きしめると、隣で見ていた龍崎はムンクの叫びかよってくらいに端正な顔立ちを歪ませ、叫び声を上げていた。

「分かったでしょう? 私のしあわせは兄さんといることなのです。あなたが何者なのか、私には微塵も興味がありません! はっきり言って迷惑なので私たちの仲をそっとしておいてくれませんか?」

 静かだが若葉の言葉は超高圧なプレス機のように、すでに半死半生といった感じの龍崎を押しつぶした。

「や、八乙女善行っ! ぼくはぜったいに若葉をおまえから引き離してやる。おまえに若葉は相応しくない! 若葉、キミはこの男に洗脳されてるだけなんだ。ぼくが必ず救い出してみせる!」
「頼んでもいないことを勝手に……」

 龍崎は捨て台詞のように俺たちに言い放つと、若葉の言葉も最後まで聞かずにそのまま屋上から立ち去ってしまった。

「なんだったんだろうな?」
「そうですね……放っておいてほしいです。それより……兄さん……」

 若葉が頬を桜色に染めながら、ちらとスカートをたくしあげると彼女の内股から絶え間なく滴が落ちてきていた。俺は龍崎にばかり気が行ってしまっていて、若葉がいまノーパンなのをすっかり忘れていた。

「妹をこんなにせつなくしておいて……責任取ってくれますよね?」
「もちろんそのつもりだけど、もしかして若葉はわざと穿き忘れたの?」

「ち、違います! 私がそんな破廉恥なこと……するわけありません……」
「若葉!?」

 若葉に訊ねると“わざと説”を否定したのだがスカートをぜんぶたくしあげてしまい裾を唇で挟んで、彼女の大事なところは俺だけにまる見えになってしまっていた。 

 銀色に美しく輝く毛髪と赤ちゃんが産まれてくるご神体に俺は思わず僥倖とばかりに若葉のまえで手を合わす。

「兄ひゃんは馬鹿れす……」
「若葉のこんなきれいなところを見せられたら、男はみんな馬鹿になる」

 俺は黒いソックスの履き口にまで届こうとしていた滴を一滴たりとも逃さないという思いで舐め始める。

 義妹のしなやかな太ももに手を置き、子猫がミルクを舐めるようにぴちゃぴとゃとはしたない音をわざと立てながら……。

 まさか義妹と屋上でえっちなことをしようとは露ほども思ってなかった。あ、いま俺がすすっているのは若葉の露だけど。

 ――――あふんっ!

 内股の太い血管に沿って、露の川を舌が遡上していくと若葉はこそばゆいのか、ぷるぷると震えだしていた。

 そのまま内股から行かずに俺は本丸を攻める!

「兄ひゃんっ!?」

 驚いた若葉は咥えていたスカートの裾を離してしまい、俺にスカートという暗幕がかかったが、そこは勝手知ったる義妹の身体。本能に従い、俺はあふれ出る漏水を止めようとお口ポンプをフル稼働させていた。

――――――――――自主規制―――――――――

 犬ってバターが好きなんですかね?

――――――――――自主規制―――――――――

 舐められた若葉はガクっと膝が落ちてきたので慌てて立ち上がり脇を抱えて身体を支えた。若葉はピクピクと震えていたのでベンチに座らせる。

 上履きを脱がすとジャスミンのような爽やかな香りが漂ってきて、俺は紅茶のテイスティングのように蒸れるソックスに鼻を近づけた。

「か、嗅がないでください……そんなところ……」

 唇に指を当てて、恥ずかしそうに俺を見下す。

 あっちよりも脚はもっと恥ずかしいらしい。

「俺は若葉の脚の匂いも好きだ!!!」
「兄さんのばかぁ……」

 恋人だけに許される甘い罵倒に酔いしれながら、おパンツを穿かせた。

 そのとき見えた欄干からの光景に俺は既視感を覚えた。

 まさかな……。

「兄さん……授業が……」
「おっとそうだった」

 ようやく震えの収まった若葉のまえで、俺は背を見せしゃがむ。ぽんぽんとズボンの後ろポケットを叩くと若葉はゆっくりと俺に身体を預けた。

 階段を降り始めた俺に、若葉はふーっと吐息を俺の耳に吹きかけるようにささやく。

「兄さん……続きは帰ってからしてくれますよね?」

 俺は答えずに若葉の脚を持っていた手を離し、若葉の手の甲に触れ、無言で返事する。すると若葉は俺の首筋に頭を預けてきていた。


――――【晶目線】

 これぢゃ、ボクが逃げ帰ったみたいぢゃないか……。屋上から戻ると悔しくて、ボクは親指の爪を噛む。こればかりは前世から治ってない。

 なぜなんだ……。

 ボクの身体を乗っ取ったあいつが他の女の子たちと淫行を重ねている秘密を暴露したのに若葉はまったく動じなかったどころか、それを知っていた。

 知っていても、なおあいつに寄せる信頼……。

 間違いない、あいつは若葉を、いや他の女の子たちも洗脳しているんだ。

 視線を横にやると雅人は手の内に収まるケースに入ったファンデーションをパフでなぞるとぱたぱたと顔に当てて化粧をしている。

 肉体が女性化しつつあると精神にも影響を及ぼすんだろう。

 ボクは忘れない。

 雅人がボクから若葉を奪ったことを!

 だがもう雅人のことなんてどうだっていい。このクズさえ片づければボクは若葉をしあわせにできると思っていたのに、雅人以上に厄介な相手が若葉につきまとっている。

 いったい何者なんだ、あいつは……。

 八乙女善行はボクなんだ!

 ボクの肉体を奪い、さらに若葉を洗脳して他の女の子たちとも淫らな関係を結ぶなんて、クズにも程がある!!!

 ボクは奴を完膚なきまでに叩き潰して、若葉をしあわせにしてみせる。こんな身体じゃできることは限られてるが、それでもあの偽善行だけは排除してみせる。それこそどんな手段を使ってでも……。

「はじめまして、ボクは龍崎晶と申します。若葉さんの件でご相談かありまして……」
『あんな恩知らずのことで電話なんて、寄越さないで!』

 ボクは放課後、酷い扱いで若葉と接していたゴミどもに連絡していた。

2件のコメント

  • 先ほどは、素晴らしいキャッチコピーをありがとうございました。
    ほぼあのアイデアで行こうかと思います。

    少しキャラが変わりますので、言葉の使い方が変わるかもですが、感謝いたします。
  • いえいえ、気になったことを申し上げたまでですので……。
    私よりも先生のご助言をご参考にされてください。
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