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あとがきっぽいもの(ムダに長いver.)

※エピローグのあとに付けたあとがきっぽいものの、ムダに長いバージョンです。
小生意気にだらだらと書きました。
読んでやってもいいよって思ったら、読んであげて下さい。

予告した画像もあげました。エピローグのコウカをイメージしたやつです。ありがとうAIくん。

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「彼女が彼女になるための〜あるヒューマノイドの人生」を最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
 自身初のSFでしたが、楽しんで頂けたでしょうか。

 コウカの元ネタを高校生の時に思い付いて早ウン十年。ようやく物語にできました。

 最初は女性の社会進出や少子化問題をきっかけに考え出した成長するヒューマノイド(当時はアンドロイドで考えていた)ですが、近年のAIやロボットへの不安を受け、それをどうしたら解決できるだろうと考えて、「幼少期から生活を共にさせて成長を同調させるのはどうだろう」と。
 そうして生まれたのが《人間と成長が同調するヒューマノイド》でした。それなら、“人生”を書いてみるのも面白いかもしれない、ということで、この物語となりました。

 ヒューマノイドという人工物の主人公は難しかったです。しかも成長するという設定……。
 身長は数字で示せましたが、年齢によって言葉遣いに変化を付けながら、機能的な成長を意識して書いたのですが、ちゃんと伝わったでしょうか。
 何か他にいい方法があったように思えてならないのですが、今の円野にはこれが限界です。

 でも、不登校のミヤを助けてあげたり、思春期をまねさせたり、親子喧嘩して家出をさせてみたり、時にはAIらしく、時には人間ぽいことをさせて、こういう時コウカはどうするんだろうって考える時は楽しかったです。
 とにかくコウカには、普通のヒューマノイドがしないことをさせて差別化をはかりました。そのおかげで色んな表情を書けたので、本当に楽しかったです。

 因みに、「あたしはあたしになりたい」というコウカのセリフは、書こうと思ってたセリフではありませんでした。ト書きを書いていて、流れで出てきたセリフです。ですが、このセリフが生まれたおかげで、まだ少し曖昧なかたちだったその後のストーリーが決まっていきました。
 最初にそれを口にした時、コウカ自身はその意味をよくわかっていませんでした。その言葉が自分の可能性を無限に広げ、同時に苦しめることも。その意志があの時に生まれなければ、コウカは今のコウカになっていなかったと思います。きっとコウカにしかできない、コウカだからこその意思決定だったんですね。

 コウカの動力源はどうしようか悩みましたが、彼女を思い付いたきっかけが社会問題だったので、物語を動かすポイントにもなると思ってガラス固化体を選びました。(いきさつは、前に近況ノートにも少し書かせて頂きました。)
 まさか、西銘の暴走に繋がるとは最初は思っていませんでしたが、頭がイカれた西銘を書けて楽しかったです。コウカはリョウヘイとも和解できましたしね。

 西銘親子が出てきたことで、物語後半は二組の親子模様も描けました。
 親子になれないのに親子になった、ミユリとコウカ。親子なのに親子じゃなくなった、ヨシアキとリョウヘイ。ミユリは迷いながらもAIであるコウカの「母」となることを選び、リョウヘイは父親と普通の親子に戻りたいと願うも、AIに阻まれ「息子」になることを拒まれた。

 人によっては、AIとの付き合いによって親しみを覚えたり、AIと距離を置いたことで弊害を生むことがある。それは人間同士と同じで、最初から先入観がある・なしで変化することなんだと思います。
 西銘がなぜあそこまでAI排除に固執したのかと考えると、祖父の話を聞いて、彼の中で祖父への思いが勝手な解釈が加わって色々と形を変えて、その末にあんなことをしてしまったんだろうな……と。

 けれど、何故リョウヘイが途中で目を覚ますことができたのか。リョウヘイは最初から洗脳されていた訳ではなく、ただ迷信のように「父親の言うことだから正しい」という、子供の頃から信じていたことを信じ続けていただけなんです。
 目を覚ますことができたのは、不変の社会に諦念を抱いた他に、きっと昔の記憶で父親との大切な思い出があったんです。彼が一番幸せだったのは、きっと、家族が揃っていた幼少期だったと思うので。昔の父親は、今と違って普通の父親だった頃もあって、そのギャップに悩んだりしたのかもしれません。

 全ては架空ですが、社会がこのままAIの力を余すことなく享受し続ければ、「ジャカロ」のような組織が生まれないとも限らないと思います。私の考え過ぎかもしれませんが。

 そんな風に、このままAI社会が進化し続けたらどうなるんだろう、と想像しながら、未来に残るかもしれない社会問題も織り込ませて頂きました。



 そして。カクヨム(&ノベルデイズ)では、小説家になろうとは違うエンディングを書かせて頂きました。

 なろうの方は、「最先端のヒューマノイドであるコウカの喪失による、AIありき社会からの解脱」を意味したエンディングで、一応「前向きエンド」だと思ってます。
 でもカクヨム(&ノベルデイズ)は、完全な「ハッピーエンド」にしました。前向きに生きようとする登場人物を書くのも、それはそれでいいと思いますが、登場人物も、読んでいる方も、みんなが幸せな気持ちになれる終わり方の方がやっぱりいいですね。
 実は、なろうに投稿したあとから頭の中にあったエンディングだったので、コウカの願いも成就させられたし、こうして書けてよかったです。

 このエンディングは、まさにコウカの執念勝ちですね。「役目を果たしたい」という強い願いはもちろん、「ユウイチに返さなきゃならないものがある」という強い思いもあったんだと思います。
 コウカがユウイチを“宝物”だと確信したのは、長い眠りにつく直前なんでしょうね。その献身的な思いと、好きでい続けてくれる一途さと、助け寄り添ってくれる優しさ。そして、たった一人の大切な人のために尽くしたいという、強くて温かい気持ち。それが“宝物”になるんだと。
 正直言って、コウカはまだ『心』の正体はわかりません。でも、そうだったとしても、ユウイチという存在がいてくれるだけで、励まされて前向きになれる。自分が自分でいられて、ありのままの自分を好きになれた。理由はそれだけだけど、コウカにとってはそれだけで、ユウイチが“宝物”だと思える十分な理由になった気がします。
 きっと、ユウイチやミユリやミヤやカナンの思いが、コウカに『魂』を吹き込んでくれたのではないでしょうか。



 では最後に。

 あとがきに長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。
 皆さまの評価がどうであれ、私としては、長年温めていたアイデアをかたちにできたので、満足しています。新たなジャンルの開拓ができたし、尻込みせずに書いてよかったです。

 作品のフォロー、レビュー、応援、そして読んで頂いた全ての皆さまに感謝します。
 この作品が皆さまのお目汚しにならず、何か一つでも受け取って頂けていたら幸いです。

 これからの時代、人間とAIが正しい付き合いをしていけたらいいですね。

 それでは、次の作品でもお会いできるご縁が結ばれていますように。


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