• 異世界ファンタジー

次に書くなら…

現在「はぐれ聖女 純情派」を書いておりますが、やはり私に女性主人公は難しかったという反省点と、もふもふ成分が欲しい!という自己の欲求を満たしてみたく、なんとなく、書き出しだけを書いてみました。
まだ何も考えていません。

タイトルをつけるなら、「賢者はつらいよ」でしょうか。
そのうち形にしてみたいものだと思っております。

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パイロット版「賢者はつらいよ(仮)」

初夏の爽やかな日差しの中。
草原の中を通る街道を歩きながら、私の左肩に乗っかってふて寝している子猫に向かって話しかける。
「なぁ、チェルシー。そろそろ機嫌を直してくれないか?」
「にゃっ」(ふんっ)
「いや。悪かったと思ってる。しかし、あのくらいのことでそこまで怒らんでもいいだろう?」
「ふしゃー!」(あのくらいじゃと!?)
「あー…すまん。いや、別に事態を軽くみているわけじゃないぞ?ただ、ちょっとした事故だったんだ。勘弁してくれ」
「ふみゃぁ!」(あの肉は我が育てていたんだぞ!)
「…すまん。この埋め合わせは必ずする」
「…んなぁ」(…埋め合わせをと言うなら、竜の肉を所望じゃ)
「んなっ!おいおい。いくらなんでもそれは要求が過大すぎる。豚バラの恨みはせめて豚トロくらいで手を打ってくれ」
「…にぃ…」(…食い物の恨みは大きい…)
「くっ…。しかしそいつは…」
「…んなぁ」(…まったく。仕方ないな。シャトーブリアンあたりで手を打ってやろう)
「なっ!お前、あれがいくらするのか知ってて言ってるのか!?」
「んにゃぁ」(お主の稼ぎなら問題あるまい)
「…まぁそうだが」
「にぃ?」(それとも、なにか?酒場で散財する金はあっても我に肉を食わせる金は無いとでも言いたいのか?)
「くっ。それを言われると…。致し方あるまい。次、どこか大きな町に寄った時にでも探してみよう」
「にゃっ」(ふっ。わかればよいのじゃ)
そう言うとその猫、チェルシーは私の肩からスタッと飛び降り、
「にゃぁ!」(抱っこじゃ!)
と言って、私に抱っこ紐で抱っこすることを要求してきた。

私がこうして話ができる猫とこんな田舎道を歩き、なおかつやや尻に敷かれ気味なのには訳がある。
説明すると長くなるが、ざっくり言うと、賢者の私が魔王との戦いで何かしでかしてしまったらしい。
なぜか魔王の魂が消滅せず、その飼い猫、チェルシーに乗り移ってしまった。
本来なら国に報告する必要がある。
しかし、そんなことをしたら、この猫は間違いなく殺されてしまうだろう。
それは耐えられない。
というか、私の責任問題だ。
国から何を言われるか、どんな処罰を受けるかわかったものじゃない。
そんなことを思って、猫好き故の甘さと、責任回避したいという理由で私は今の状況を選んだ。

あと、単純な興味もある。
現在、魔王こと猫のチェルシーは私と話ができる以外、何の力もない。
いや、正確に言えば人間と同じものをたらふく食えるという能力はあるようだが、それは別にどうでもいいだろう。
ともかく、消滅からだいたい200年周期で復活してくる魔王の魂が子猫に閉じ込められているというこの奇妙な現象の行方を見てみたい、と単純に興味を持ってしまった。

私がこの世界に「おそらく」転生してから200年くらい。
いくら長寿のエルフといえどもあと100数十年の人生。
軽く100年ほどは生きると言われているラッキーキャットことケットシーと旅をするのはいい暇つぶしになる。
私はそう思って、この奇妙な現象を私だけの胸にとどめておくことにした。

(はぁ…。それにしてもこの魔王の性格がもう少し可愛らしければなぁ…)
と思いつつ、私の胸にぶら下げた特製の抱っこ紐の中で呑気に昼寝をしているチェルシーに視線を向ける。
「…んなぁ…」(…にく…)
とチェルシーが寝言を言った。
(…ったく。呑気なもんだ)
と苦笑いしつつ、その頭を軽く撫でてやる。
すると、チェルシーが、
「…ふみぃ…」
と気持ちよさそうに鳴いた。
(寝てる時は可愛いんだよな)
と思いつつ、また苦笑いで軽く肩をすくめる。
不意にどこか麗らかな初夏の風が吹き抜け、辺りの草をさわさわとなびかせた。
(平和だねぇ…)
と心の中でつぶやく。
私はポケットをまさぐり、吸うとスースーするシッカパイプ取り出すと口にくわえて、
「ふぅ…」
と軽く息を吐いた。

4件のコメント

  • 前作の頃より、毎朝出勤前にコーヒーを飲みながら最新話を読むのを楽しみにしてます。
    今作は特にタイトルがツボってしまい、最近の展開から次回作は「さすらい聖女 旅情編」かなぁ、と勝手にワクワクしてましたが、あれ?「賢者はつらいよ」でしたかw
    こちらも楽しみです。
    今後の更新も楽しみにしております。
  • ありがとうございます。
    次はまたおっさんの話になりそうです。
  • あら面白そう。
    上の方と同じく、朝の出勤前に最新話を読むのが日課になってます。
    のっけから情報量~!!ってなってますが、こちらも楽しみにしております。
  • ありがとうございます。
    ぼちぼち原稿を進めているところなので、そのうち公開できればと考えております。
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