いつも本作をお読みいただきありがとうございます。
PVが500万を超えました。
こんなにも多く読んでいただけたことに感動しております。
せめてものお礼に小話を書きましたので、お楽しみいただければ幸いです。
これからも本作をどうぞよろしくお願いいたします。
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いつものように役場で仕事をしていると、コッツから手紙…というよりも簡単な伝言が届く。
内容は、
「ルツ貝の干物が手に入ったがどのくらい必要だ?1箱はトーミ村用に抑えている。できれば急いで連絡をくれ」
という簡単なもの。
ルツ貝はホタテに似た貝で良い出汁が取れる。
私は久しぶりの海鮮出汁に思いをはせ、さっそく次の日、自ら取りに行くことにした。
翌朝。
皆に見送られて出発する。
慣れた道を順調に進みちょうど昼頃アレスの町に着いた。
ちょうどよく減った腹を抱えて、まずは飯を食うことにする。
いつものように「満月亭」にしようかとも思ったが、今回はあえて知らない店に飛び込んでみることにした。
兄上曰く、最近アレスの町の飯が美味くなっているらしい。
そのきっかけを作ったのは私だが、いつもの「雷亭」や「満月亭」以外の発展ぶりはよく知らない。
(やはりここは実地調査が必要だろう。さて、アレスの町の食事情はどうなっているんだろうか?順調に発展してくれていればいいが…)
そんなことを思った私は、期待と不安を胸に、とりあえず目についた定食屋に入ってみることにした。
その定食屋の外見は少し年季の入った感じで、やや煤けた壁がなんとも言えない気安さ醸し出している。
そんな店の外観になんとなく期待を抱きながらその店の入り口を開けると、
「いらっしゃい!」
と、給仕の女性…というよりも、少女が元気よく出迎えてくれた。
「1人だがかまわんか?」
と言う私にその少女は、
「はい。カウンターにどうぞ。あ、日替わりは肉炒め乗せチャーハンです!」
とにこやかに微笑む。
(なっ…!?それは…)
そう思って、ゴクリと唾を飲み込んだ私が、
「その日替わりをくれ」
と即答するとその少女は、
「かしこまりです!」
と妙な敬語で私に了解の意を伝え、厨房に向かって、
「日替わりいっちょー!」
と叫ぶといったん下がってすぐに水を持ってきてくれた。
昼時とあって店はバタバタと忙しそうにしている。
どうやらそこそこにぎわっている店らしい。
(これはけっこうな当たりかもしれんぞ…)
店を観察し、そんな予感にわくわくしながら料理を待っていると、
「はい。おまちです!」
と先ほどの少女が、また変な敬語とともにその日替わりとやらを持ってきてくれた。
その料理は名前の通り、チャーハンの上に肉炒めが乗っている。
なかなかのボリュームだ。
まずはあいさつ代わりにチャーハンの部分を口に運ぶ。
(む。それなりにパラっとしている。炒め加減も少し焦げているところがいい。そして、このちょっとギトギトした感じ。このラードが良い仕事をしているじゃないか。こういう大衆食堂のいい意味での乱暴さは我が家の食卓ではまずお目にかかれない)
そんなことを思いながら、コッツに頼んで広めてもらっているレシピの中にあったチャーハンが確実に広まっていることに感動し、はふはふと何口か食べた。
そして、次に肉の方へと移る。
(お。豚コマの味噌炒めか…。少し辛味が効いているな。うん。これもいい。いかにも大衆食堂の味だ。そしてこの量。これぞまさしく男飯。働く大人の頼れる味方だ…)
濃いめの味付け、こってりとした甘辛さがいかにも飯を進ませる味付けでたまらない。
チャーハンと言うよりも焼きめしと言いたくなる感じがする飯に、大衆感たっぷりの肉炒め。
これをB級と言わずして何をB級と言えばいいのだろうか?
そんな感想が素直に出てきた。
(しかし、もうすでにチャーハンに何かをかけるというところまでアレスの町の飯が発展しているとは…。やはりこの世界は確実に美味くなっている。これもひとえにドーラさんという神がいたからこそだ…)
私はそんなことに感動とともに、ドーラさんという神に感謝をささげる。
そして、B級料理を味わう時の正式な作法としてガツガツと思いっきり肉炒め乗せチャーハンを笑顔で掻き込んだ。