いつも本作をお読みいただき、本当にありがとうございます。大沢ピヨ氏です。
さてこの度、カクヨムのキャンペーンやらなんやらがありまして、
①近況ノートでいつも作品を読んでくれる読者へのお礼メッセージを書くと、抽選で500名に100リワードをプレゼント!
②限定近況ノートを投稿すると、抽選で100名に500リワードをプレゼント!
と、書かれていたのに釣られて筆を取った次第です。
カクヨムでは、『限定近況ノート』なる、投げ銭的なものをした人にだけが読めるオマケを投稿すると、少しだけ多めにお金がもらえる仕組みがありまして、毎月色々と書いてはいるのです。
割と面白く書けてる閑話も幾つかありますので、気が向いたら是非読んでみてください。
ただ、どんなものが読めるのか分からないと判断もつきませんよね。そこで今回は閑話の一例として、25年の10月に投稿した『限定近況ノート』を公開します。
今後ともよろしくお願いします!!!
────────
閑話 シマシマさんの、少しエッチな修行(風魔法 第103話読了後 推奨)
津島志麻は自身のスキル熟練度が20に到達していないことを、ほんの少しだけ気にしていた。
◻︎
彼女の実家は、父親が集めた様々なゲーム、アニメ、漫画、映画で溢れており、幼少期よりそれらコレクションに囲まれていたため、誰憚ることもなく立派なオタクに育った。
最近では各種プラットフォームでレトロゲームを気軽に遊べるようになったが、彼女は『実機こそ至高であり、リメイク版やリマスター版は邪道』といった、少し厄介な思想に囚われてしまっており、その様子を見た父親から、少し心配をされている。
そんな彼女は、新旧様々なRPGに手を出しており、スキルを育ててキャラクターを強くするタイプのゲームにも、勿論のこと触れていた。
「むむむむむむ……」
「どうしたの? いつにも増して難しい顔をして」
唸り声を漏らす津島に声を掛けたのは、彼女の幼馴染である小牧真希だ。二人は幼い頃から付き合いがあり、高校進学で別々の学校に進むも、以前と変わりない交友が続いている。
「えっ、私って普段から難しい顔してる?」
「んー、若干?」
「き、気を付けよ……。もっとプリティ寄りでいきたいし……」
「おー、それは…………難儀だね」
「えっ、難儀なの!?」
津島はどちらかと言うとボーイッシュ寄りだ。この先プリティを目指すのであれば、それなりの努力が求められるだろう。
「でー、何を唸ってたのよ」
「どうやってスキルの熟練度を上げようかなって」
「え? ドロボー辞めちゃうの?」
「んーにゃ、辞めないよ。あと『空き巣スキル』ね」
津島が最初に得たスキルは『空き巣』だ。
建物内に人や魔物などが潜んでいないかを暴き出し、罠の看破や解除、自身の気配を消して行動することができる、活躍の場が多い優秀なスキルだった。
先日、静岡ダンジョンで見つかった『スキル拡張石』に触れると、最初に得たスキルを再抽選して別のスキルに切り替えられることが分かった。
小牧は、津島の発言を聞き、スキルを再抽選するための条件、『熟練度10』を目指しているのだと勘違いしたようだ。
「いやね、熟練度を20まで上げて、第2スキルのスロットを開放しておきたいの」
「でもあれって、スロットを解放したところで、第2スキルがすぐに覚えられる訳じゃないんでしょ?」
「まぁそうなんだけど、もし第2スキルを得られるチャンスが訪れた時、『スロットが解放されていないから、また次の機会によろしくー!』ってなったら嫌じゃない?」
「そんな軽いノリで、第2スキルって与えられるんだ」
「例えばよ」
現時点では、第2スキルを得られたという情報は、誰の耳にも届いていない。
ダンジョンの深部を目指し、ある一定の階層まで辿り着いた時、自動的に第2スキルを授かるのではないか。
スキルが封じ込められた水晶を手に入れると覚えられる。
スキルを司る神殿で授かるものだ。
といった感じで、様々な説が唱えられているものの、未だにその真実は明らかになっていない。
「私はゲームでも、取りこぼしがあったら最初からやり直したくなるタイプなの。だから、もしかして『一度きりのチャンスを逃すと、それ以降は第2スキルが得られなくなる』なーんて仕様だったら発狂モノよ」
「んー、まあ絶対にないとは言えないからねぇ……。でも二つ目のスキルなんて必要? 私なんて、第2スキルに『処刑人スキル』とか授かっちゃう方が怖く感じるよ?」
「あっ、それフラグだよ? マキの第2スキルは処刑で決まりね」
「ちょっ、やだし!」
かくして、なぜスキルの熟練度を上げようとしているのかを説明し終えると、小牧はその修行に付き合ってくれると申し出た。
◻︎◻︎◻︎
「中ー! いま出たー、はい、中、出たー!」
「ねぇ、ちょっとシマ。その掛け声、他のに変えない?」
「……え?」
ここは八宮ダンジョン地下一階。空き巣スキルの性能を確認するために建てられたログハウスのすぐ近くだ。
小牧がログハウスへの出入りを繰り返し、津島がそれを見えない場所から言い当てるといった訓練を行っていたのだが、そこで使われている掛け声に問題があったらしく、近くを通りがかった仲間たちの興味を惹いてしまっていた。
「ねぇ、これで本当に空き巣スキルの熟練度って上がってるの?」
「確認のしようがないから分からないけど、10人くらい同時に出入りしてくれた方が上がりやすそう」
「ゾンビ連れてきてもらう?」
「えー、それだと志麻御殿が汚れちゃうじゃん!」
スキル熟練度の存在自体は明らかになっているが、自分が今どの程度の熟練度に達しているのかを調べる術はない。
そのため、なるべく高度と思われるスキルの使い方をして、熟練度を多く得られるように心掛けてはいるが、それが本当に正しい遣り方なのかは不明だ。
「なら、めっちゃ危ない罠を外すとか?」
「失敗したら怖いじゃん」
「すっごい複雑な鍵を開けるのは?」
「そんなの誰にも作れないし」
そう。津島のスキル『空き巣』は、非常に有益なスキルである反面、実地でしか活躍できない側面を持っており、擬似的にスキルを発動させて、熟練度を稼ぐのには向いていなかった。
例えば『木工』スキルの場合、工具と材料さえ揃えられれば、いくらでも熟練度を稼ぐことができる。
事実、『木工』『裁縫』のスキルを持つ二人は、他の仲間たちよりも熟練度が高まっていたのを、つい先日確認されていた。
「じゃあれはどうなの。コソコソするやつ」
「あー、忍び足っぽいやつ? 偵察する時には使ってたけど、人前ではあんま使ってないね」
津島は腰を少し落とし、忍び足を発動させようとした。
しかし──
「あれ? なんかここだと出来ないよ」
「私がガン見してるから?」
「あっ、そうかも。ちょっと見えない位置に行くね」
津島はそう言うと、ログハウスの角を曲がり、小牧から直接見えない位置で忍び足を発動させた。
すると、すぐに彼女の気配は薄れ、吐息や足音が一切漏れ出なくなる。
建物の影からチラリと顔を出すも、小牧に気付いた様子はない。
「いま使ってるのー? 近くにいるー?」
小牧の視線は確かに津島の方を向いているのだが、その存在をまるで捉えられていないかのようだった。
津島が徐々に建物の影から首を伸ばしていくと、顔の全面が露出した時点で、突然忍び足の効果が消え失せた。
「おっ!」
「あっ、シマいた!」
「あー、なんかこの忍び足が少し理解できたわ……」
どうやら忍び足とは、他者から認識されにくくする効果を持つようだ。
「なんかねー、忍び足を使うと身体の周りにバリアっぽいやつを感じるんだけどさ、マッキーに見られてるとそれがどんどん薄くなっていって、バリアが全部削られきると、いきなり技が中断されちゃうみたい」
「えっ? ずっとそこにいたの?」
「そうそう。気付けてなかったでしょ?」
「女湯覗き放題じゃん……」
「今でも覗き放題なんだけど……」
その後も、忍び足について二人で検証を重ねていくと、バリアが削り切られた場合には、再使用に待機時間が生じることや、声を出すと即座に解除されることが判明した。
また、使用者自身が『他者から見られたくない』という気持ちを強く抱いている状態で人の視線に晒されると、より激しくバリアが削られ、その時にこそ、最も熟練度が向上している感覚があると津島は話す。
それから数日。『ログハウスの近くでエッぐい下着姿の、まあまあ美人なサキュバスが現れる』との噂が流れる。
ただし、その魔物の姿を見た冒険者は限りなく少数で、実際にサキュバスの顔まで認識してしまった人は、気まずげに口を閉ざした。
◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎