「今日もいい天気」
さっと朝ご飯を食べて今日も高校へ行く。
天気は快晴。
私の「頭の上に生えたサトイモちゃん」も太陽の光を浴びて今日も元気そうだ。
「みんな、おはよう」
「おはよう、椎名(しいな)」
「今日も元気? 椎名ちゃん」
「相変わらず葉っぱも元気そう」
私は斉藤(さいとう)椎名、その人であった。
頭からサトイモが生えている。
世界にダンジョンができるようになって二十年。
私のようにファンタジックな特徴のある子も増えている。
他にもエルフ症候群とよばれるエルフ耳の子なんかもいた。
あとはフェアリー症候群といって背中に蝶の羽が生えている子とか。
サトイモが寄生しているわけではなく、これは私の一部らしい。
寄生されていて根っこが頭の中に広がっている……とかだったら怖いでしょ。
頭の葉っぱは太陽の光が好きで、登校中の日を浴びて今日も青々としていて元気だった。
なんとなく、こういう日は私も元気いっぱいだし頭もよく働く。
授業を普通に受けて、お昼休み。
みんなでお弁当を広げる。
「いただきます」
「お、今日は佃煮あるじゃん、佃煮、ちょうだい」
「いいよ」
「やった」
友達の佳枝菜(かえな)が私のお弁当からサトイモの茎の佃煮を奪っていく。
実はこの佃煮、私の頭に生えたサトイモの葉っぱを剪定したものだ。
放っておくと、葉がものすごい数に増えるので定期的にハサミで切っているのだ。
それでなぜかこのサトイモの茎、謎の旨味があり、結構おいしい。
みんな好きで、こうして欲しがる。
「椎名ちゃん、もぐもぐ」
「私が食べられてる……」
「実際そうですし、おすし」
「あはは」
まあいいんだ。みんな喜んでくれるし。
お昼のハンバーグ美味しい。
「ごちそうさまでした」
体育とかをするときは注意が必要だ。
たまにボールとかが当たると、茎が折れたり、グシャッてなって大惨事になる。
みんな手加減してくれるものの、まあ事故とかはある。
窓際の席で太陽の光を浴びながら、もくもくと授業を受ける。
やはり葉に光が当たっていると頭が冴えるので、バリバリと課題をこなす。
いっぱい光合成して栄養を作らないと。
「えへへ。今日も頑張りまっしょい」
「もう、日が当たると椎名ちゃん元気なんだから」
「みんなは午後眠いもんね」
「そうそう」
家に帰ってきて、ご飯を食べて、お風呂の時間だ。
「ふぅ、生き返る……」
お風呂は大好きだ。ゆったりと湯船に浸かる。
そして、お待ちかね、シャワーの時間だ。
「へっへへへ」
頭からシャワーを浴びる。
私は少しぬるめにしている。
葉っぱにも水が当たり、なんだかサトイモちゃんも元気になるのだ。
毎日水でこうして洗い流すと気持ちよさそうに、ピンッとなる。
人間の髪のほうにはシャンプーをしてごしごしと洗う。
サトイモは傷つけないように慎重にやるよ。
「さて剪定しようかな」
鏡に頭を映して、どれを切るか慎重に選ぶ。
「これかな、よいっしょ」
パチン。
また新鮮なサトイモの茎が取れた。
まぁ厳密に言えばサトイモではないらしいが。
でも食べても美味しいし、みんなサトイモだと思っている。
「髪型」が決まったところでお布団に入って寝るのだ。
「おやすみなさい」
夜はサトイモちゃんも寝る時間だ。
それでは、また明日。晴れるといいな。
※イラスト、furu_さん