今回ご紹介するお話は、拙著「無貌の神の悪戯」の主人公である大江又三郎が、どのように出来上がったかについてです。ちょっと長くなりますが、よろしければお付き合い下さい。
元々は異世界転生ものの話(それも出来れば日本刀を武器にした活劇系)を書いてみたかったのですが、「主人公がチートで強い」という設定は避けたかったという根幹がありました。
となると、「元から日本刀の扱いに慣れた武士」「平然と人を斬る、一見すると冷酷非情な人斬り」みたいなキャラを主人公に据えてみたいと思い、僕が行き当たったのは幕末の時代……でも、維新志士側の立場で主人公を作ると、どうにも左頬に十字傷がある「あの人」とキャラが被りそうです。個人的には「包帯ぐるぐる巻きの人」の方が好きですが。(笑)
では、新選組側の人物ならどうだろうかと思いましたが……有名どころを主人公に据えても、全然面白くない。というか、単なるありきたりな架空フィクションになってしまいます。
ただ、幸いにも新選組の隊士には、様々な出自の人達がいた模様で……そこで「じゃあ架空の剣術の流派を遣う、架空の隊士を作っちゃえ」ってことで生まれたのが、大江又三郎でした。
ちなみに、又三郎の剣術の流派「無双一刀流」は、東北方面の小野派一刀流(会津藩伝)のさらに傍流という裏設定を組んでみました。
実在する流派の遣い手にしなかったのは……僕にそっち方面の詳しい知識がなかったからですね、はい。現在の正統派の方々から色々とツッコミが入ると、全くお答えすることが出来ません。(泣)
また、新選組六番組の隊士にしたのは、京都伏見(淀千両松)の戦いで戦死した井上源三郎の部下だったという設定だったりします。僕がざっくり調べた中では、京都伏見の戦いで、ある程度まとまった戦死者が出ていたのは淀千両松の戦いだったようで、又三郎はそこで組長の井上と一緒に戦死したということに。
あと、主人公の回想シーンには新選組の様々なエピソードを使ってみたいと思っていたのですが、会津若松での戦いや函館での戦いまで生き残っていると、流石に話が冗長になるかなと思いまして……ということで、又三郎には新選組結成初期に入隊し、鳥羽伏見の戦いで戦死してもらうことにしました。
キャラクターの基本的なモチーフは、僕が昔から好きな某時代劇の主人公です。見た目や性格は全然違いますが、喋り方はどうしても影響を受けていますね。一人称は基本「それがし」で、Interludeパート(一人称表記)の時と"人斬り"の時は「俺」です……あ、イメージCVは津田健次郎さんでお願いします。(笑)
ということで、拙著をご覧いただいている読者の皆さんに、登場人物のイメージなどをより掴んでいただけたらいいかなと思って、色々と書いてみました。
もし皆さんからのご希望などがあれば、他のキャラクターの解説などもしてみたいと思いますので、ぜひコメント欄にてお教え下さいね。それでは、今回はこの辺りで失礼いたします。