『趣味・競艇』
この文字を見た時、「あれ? この人、趣味はウォーキングでは?」と不思議に思ったのが去年の話。
広大なるネットの海で拾い上げた、私の好きな声優さんのプロフィールの話だ。
ちなみに、我が家は一切、かけ事とは無縁の家庭だ。
祖父がパチンコ好きだったが、彼を指さし母は私に教えた。
「お爺ちゃんみたいになっちゃだめだからね!」
父は数学好きなので中学生になった私を呼んで『如何に賭け事が非効率的あるか?』を永延と説いた。
私自身も宝くじを時々買うが、当たって精々500円。
だから、賭け事に疎い。
それから二十年以上。
よもや、私が競艇に行くなんて誰が思うだろう?
ただ、群馬県は「かかあ天下」であるせいか賭け事のあらかたは揃っている。
伊勢崎オートレース、前橋競輪、今は無いが高崎競馬場(今はGメッセ)、パチンコ屋なども田舎でもある。
そして、桐生競艇。
車のカーナビで約一時間で着いた。
正直、初めての、一人でやる賭けである。
まず、問題は何をどうすればいいのかすら分からない。
とりあえず、多くの人がマークシートに塗って発券機に入れている。
「?」
とりあえず、やってみる。
発券機に入れたら不備を指摘され、離れると「君、お金忘れているよ!」と見知らぬ紳士に言われて慌てて取る。(ありがとうございます、見知らぬ紳士)
何とか、発券を完了させる。
(ほぼ、意味不明状態ですが)
コースを見る。
意外と水などのにおいがしないことに驚く。
『ああ、あの人もここに来たのかな? それで、仲間たちと楽しんでいたのかな?』
――どうか、天に召されたあなたが好きな野球や賭け事、酒、煙草が出来ますように
――私が勝ちますように(はい、邪念ですね)
小さく手を合わせて祈る。
意味が分からないまま始まり、意味が分からないまま終わった。
感想は、「後続の人って大量に水を浴びるんだな」以上。
案の定、負けた。(100円だけど)
たぶん、その人が生きていたら「あのな、せめて最低限ルールとかは覚えてきなさい」というかも知れない。
作家の墓はネットなどで調べれば出るが、声優などになるとほぼ分からない。
でも、私はその声優さんの声で色々妄想するのが好きなので「あー、謝らないと駄目だね」と思い、競艇場に来た。
ようするに、お墓参りツアーの亜流版である。
「馬鹿だねぇ、俺はもう、いないんだよ」とその声優さんが天国で言っても、私はまた、ろくにルールを覚えずに競艇場に行くだろう。
聞こえないし、その声優さんが「あー、俺が生きていたらもっともっとこの作品は面白くなるのに・・・」と思わせる作品を作りたいからだ。
そんなこんなで「隅田天美が競艇に行ってきた話」は終り。