Twitterで連載していたにいづましょうぎ第十一章が、ようやく完結しました!
連載期間は1/3~7/9までと、半年以上かかってしまいましたが(^^;
その分、ボリュームは過去最長に!(約11万文字、原稿用紙400枚超)
濃密な『棋』を巡る物語をお楽しみ頂けるのではないかと思います!
推敲作業後、投稿させて頂きます。今しばらくお待ち下さいm(__)m
以下、冒頭の予告編です↓
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ポンと投げ付けられたのは、熊の縫いぐるみだった。
目玉をくり貫かれ、腹を裂かれ、綿を引きずり出されたその子は、小さい頃に両親からプレゼントされた物。
寝る時はいつも一緒。親離れできたのは、その子のおかげだった。
もう要らないでしょ? ぎらつく視線が問い掛けて来る。
私が居るから、と。
……嫌な夢を見た。
頬を冷たい汗が一筋、流れ落ちる。
あれが縫いぐるみでなく、本物の動物や人間だったならと思うと、ぞっとする。夢のはず、なのに。
布団の中には、私の他にもう一人居た。
ああ、夢であれば良かったのに。
あの子の代わりに、私と一緒に寝ているのは。血の繋がった、私の所有者だった。
あなたは、お姉ちゃんのモノなの。
お姉ちゃんがあなたのことを好きにして良いのよ。
絶対に逆らっては駄目。お姉ちゃんの言うことを聞きなさい。言うこと、だけを。
幼い頃から、そう教えられて来た。
だから、当然のように受け入れていた。
姉に従属する日々。ご機嫌を取っていれば、姉は優しかった。
姉の怒る姿は見たくなかった。誰かが傷つき、何かが壊される。不思議と、私に手を上げることは無かったけど。それでも、胸が苦しかった。
周りの人間のことなど意に介さず、父や母さえも見下し。彼女は、わがままの限りを尽くして育った。
人の形をした超人は、いつしか『鬼』と怖れられるようになっていた。
単純に、人並み以上の力があるだけじゃない。
あの爛々と輝く紅い瞳が、人々に逆らう気力を喪失させるのだ。
彼女はまた非常に頭が良く、数多の才能に恵まれていた。特に優れていたのが、将棋だ。
誰も敵わなかった。有段者の大人さえも。
姉の凄まじさは、傍目で観ていた私にも十分過ぎる程理解できた。
そう、だから。
姉を怖れ、怯えながらも。心のどこかでは尊敬し、慕っていたのだ。
逆鱗に触れる度に何か大切な物を奪われ、精神を傷付けられても。それでも、姉から離れたくはなかった。
一生彼女に付き従う。姉のために生きる。本気でそう信じていた。疑う気持ちは微塵も無かった。
──あの時までは。
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