ちょっとした内容ですが解説を書いてみます。
そもそもが短いお話だから、読んだあとにこちらを見てもらえたら嬉しいです。
『お迎え』
https://kakuyomu.jp/works/822139843680081649
──────────
『お迎え』は、夏をテーマにした一話完結のお話として書きました。
元々は夏がテーマだっホラーを書くぞ!と意気込んだものの、いざ書き始めるとその表現の難しさに慄いて、早々に方針転換。
読み手を怖がらせようとするのをやめて、主人公(⇒蒔人)の心理描写にシフトをしました。そうして心理描写を大事にするならと、物語の焦点を「怪異」ではなく「主人公自身」に当てることにしたわけです。
結果的に、不気味な雰囲気を残しながらも自分にとって比較的扱い易いテーマになる「家族」を取り入れて、過去の清算と未来への希望とが繋がるような短編小説になったと思います。
夏の情景には明るさと不気味さの二面性があると捉えて、それを蒔人(まきと)の抱える弱さと素直さ、郁(いく)が与えてくれる安心と緊張感とに現れるようにも意識しました。
物語に奥行きを与えるなら、こういう輪郭のない部分こそなのかしら、と考えていた覚えがあります。
以下は、いくつか話しておこうかなあと思うところを順に書いていきます。
1.二人の名前
蒔人は「種を蒔く人」から、そして郁は「育む人」から取って、「蒔」と(人)「郁」という名前を採用しました。
お話も、蒔人自身に起因する罪悪感や過去の記憶が「種」になって、郁の登場でそれらが物語として膨らむつくりになってます。
2.郁の役割
郁って結局誰なの?という感想が散見されました。 解釈の余地を残してもいいかしら、と思いつつ、不親切だったかな、とも思ったので私の考えを書いておきます。
ただ、物語は外に出した瞬間から、受け取った人のものでもあるから、最初にこうかも?と思った想像を大事にしてほしいです。
最初に言うと、郁は蒔人の「これから産まれる弟」です。
それは例えば、蒔人と合流時の台詞で、
「お前、蒔人だろ。俺は郁。お前の弟になる……予定?」
と、そのまま言っていたり、蒔人も彼と瞳の色が似ていることに気が付いたり、二人の距離感を不思議と居心地よく感じたりと、ヒントになるような表現がいくつかあります。
ただ、未来の弟がどうやってここに?という方法の部分は意図的に書いていません。
これは蒔人の物語なので、そこは蛇足かなあと思った部分が大きいです。
ただ、注意してみていると郁は蒔人に当たり前に手を差し伸べたり、裾の砂を払ってあげたり、仕草の面倒みがいいんです。
それでいて、気を使おうとして茶化したり、頭を撫でようとして帽子を上から叩いてしまうようなところもあって、優しさを行動に移すのにちょっと不器用なところがあります。
きっと、郁は蒔人にたくさん面倒をみられて育ったんじゃないかなと思います。
転んだところに手を差し伸べたり、砂を払ってあげるのも、同い年のコミュニケーションというよりは、上の子が下の子にするそれっぽいです。
郁は蒔人に対して、無意識に、お兄ちゃんの真似をしているんじゃないでしょうか。
逆に言えば、蒔人は今後、自分が母にしてもらったように小さな郁を連れて山の方へ遊びに行ったりするということです。
迷惑をかけて、それでいてお世話になった道祖神を大切にしたいと思ったのかもしれません。
そうやって郁の面倒を見つつ、道祖神の手入れをしながら、何度も過去の体験(⇒お迎えの出来事)について話し聞かせたんじゃないでしょうか。
それもあって、いつか郁が不意に過去に飛んでも、(ああ、これが)って受け入れられたのかもしれません。
ある日突然みた夢かもしれないし、ある夏にひとりで山を訪れた日の不思議な出来事かもしれない。
郁は兄から聞いていた、「蹲る蒔人」をこれからの未来へ、まさしく迎えに来たんだと思います。
3.タイトルについて
「お迎え」が「母のお迎え(幼少期)」「山からのお迎え(異形)」「母のお迎え(現在)」、最後に、上記で触れた「郁のお迎え」といくつものパターンがあるのが、物語の軸そのものだなあと思ってそのままタイトルに採用しました。
物語の中で歩む物理的な道筋(⇒駅/畦道/道路/戻って山)自体も一本道で、シンプルなつくりになってます。
記憶が、コップの底の方から浮かんでくる泡みたいプカプカするので、せめて混乱しないように、寄り道しないを心がけました。
こんなところでしょうか。
元々は、夏かあ何書こうかな、と思って歩いてたときに、木陰が目に入ったのかきっかけで思いついた話です。
街路樹の葉っぱの影がさわさわ~と揺れていて、見上げたら幾重にも葉が重なって揺れるのを見て、(この隙間ひとつひとつから視線が自分に向いていたらヤだな)と思ったのを、そのまま物語の「イヤ 」なところに昇華しました。
面白いですよね。
何でも、何かないかな~と思って歩いてたら、こういう「種」をもっと見つけられるかもしれません。
もう少し長いお話として、次作に『夢渡る帆船』を公開しています。
是非、読んでもらえたら嬉しいです。
以上です。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。