一話改装案
ここはラスボスが住まう城
普段は物音一つしないはずの場所
だが今は違っていた
「はぁはぁ。きっつ」
「冬、大丈夫?まだ第一形態突破したばかりだけど」
「こっちは大丈夫。白は?」
「リアルネーム禁止。こっちも大丈夫」
大丈夫、大丈夫と言い合うが致命傷がないだけで僕たち体の所々えぐれている
「今は誰も見てないからいいじゃん」
「そういう問題じゃ……まあいい。やるよ影」
「了解」
会話という休憩を終えて僕達はラスボスに武器を向ける
第二形態のラスボスは黒い鎧を身にまとい直剣を装備していた
「『|大いなる破滅《カタストロフィ》』」
『黒鎧《ラスボス》』の背に大きな魔法陣が展開される
「っ、何を……」
身構えたとき暗闇に包まれていた辺りが突然明るくなった
思わず空を見上げると空に巨大な炎の塊が地表に向かい降る始めていた
「あれが地表にぶつかる前に決着をつけないといけないのか」
「カタストロフィ。まさに大災害」
場は緊張感で包まれる
もう軽口を言い合う状況ではなくなってしまった
「『身体強化』」
「『妖力開放』」
権能《スキル》を紡ぎステータスを強化する
「グォォォォ!!」
黒鎧《ラスボス》の叫び声が響き高速されど単純な攻撃が僕に向かって放たれる
「よっと、『氷牢』」
相手の攻撃をバク転で避けながら相手を氷の牢で閉じ込める
だが閉じ込めた瞬間からゴリゴリと氷を削る音が響き渡る
「予定調和とはいえ『氷牢』は結構頑丈なんだけどな」
魔力で補強しているとはいえ1分が限界だろうか?
計画の一つに手痛い一撃を叩き込むというものがあるのだが……
「最大威力にしてから放つ『神槍《グングニル》顕現せよ』」
白の手から赤い槍が現れ勝手に空中に浮き回転を始める
「なるべく早めにしてくれ、『氷牢』がいつまで持つかわからない」
「わかってる!!あとこれ」
話しながら僕は一本のナイフを投げ渡される
「『|赤き血の短剣《ブラッド・ナイフ》』。分かった。ありがたく使わせてもらう。さあ来るぞ」
氷牢は所々ヒビが入り今にも割れそうな勢いだ
「影、いつもの通りに」
「了解。じゃあ始めるぞ」
「グォォォォ!!」
そうして氷牢は破られる
「『神速|赤き血の神槍《ブラッド・グングニル》』」
白から放たれた神速の槍は黒鎧《ラスボス》の左腕を鎧ごと貫いた
「グァァァ!?」
さすがに黒鎧《ラスボス》も鎧ごと左腕を持っていかれるとは思っていなかったようだ
黒鎧《ラスボス》の絶叫が響き渡る
「胸を狙ったんだけど……なんで避けられるの?」
「反射神経じゃない?」
「化け物?」
「今に始まったことじゃなくない?」
「それもそう」
数十人単位のクランが全員で挑んでも負けた、最強のプレイヤーと呼ばれた男も負けた。こいつがおかしいことなんて今始まったことではない
「近接できるだけ抑えるけどそっちいったらごめん」
「最大限の支援はするよ」
「はは、心強いね」
黒鎧《ラスボス》の方を見るとさっき吹き飛んだ左手は治っており改めて僕達が規格外と戦っているかを教えてくる
「グァァァァ!!」
絶叫が木霊する
そうして相手は直剣を構え白に向かい突撃してくる。おそらく先程の攻撃で脅威と判断したのだろう
「まあ白を黙って傷つけさせるつもりもないが」
慣れた動作で直剣の軌道をそらし地面に激突させる
それでも勢いは殺しきれずに直剣の数メートル地面の中を突き進み止まった
「吹き飛べ『氷爆』」
爆風により少し距離が離れる。距離をとるには最適な行動の一つだとおもう
ただ体力が削れるのが難点といったところだが……
「『紅霧』」
白がスキルを発動させると赤い霧が煙幕のように漂い始める
本来ならこれに合わせて攻撃するが流石に一発圏内のHPで戦いとは思わない
「回復ポーションいる?」
ドサッと音を立て倒れていた『ヤツ』は段々と塵となって消えていっていた。
そうして視界には『You defeated the enemy』と表示される。
そうしてアナウンスが告げる。
『『ラストボス漆黒の龍人が討伐されました。
おめでとうございます。ゲームクリアです』』