【揺蕩いし叢雲】
(たゆたいし むらくも)
鳴り咲きし百雷の旗艦にして、超大型飛行要塞艦。
エルゼフィオラが当主を務める軍需財閥『サラハ・アヴェル』が管理・運用する、超古代文明の遺物。
全長約1,200メートルを誇る超大型飛行要塞であり、その外殻には現代魔導工学では解析不能な超古代文明特有の紋様が刻まれている。この紋様は単なる装飾ではなく、艦全体へ膨大な魔力を循環・制御する魔導回路であると考えられている。
艦内には約3,000機の魔導戦機を収容可能な巨大格納庫を備え、司令部、整備工廠、補給基地、兵器工場、医療施設、居住区画を内包する巨大移動要塞都市として設計されている。強力な攻撃兵装こそ搭載していないものの、その圧倒的な輸送能力と兵站能力によって、一つの軍事国家に匹敵する戦略的価値を有する。
通常乗員は約3,000名。戦時には約5,000名が運用に従事し、最大約10,000名を収容可能。長期間にわたり補給を受けることなく、独立した軍事行動を継続できる高い自己完結能力を備える。
反重力機関と超高効率魔導炉を動力源とし、水深約15,000メートルの超深海から大気圏内外、さらには宇宙空間まで自在に航行可能。その航続能力と作戦継続能力は、現存するいかなる艦艇とも一線を画す。
最大の特徴は、超古代技術による《完全隠遁能力》である。艦体を特殊な魔力場へ同調させることで、視覚・魔力・熱源・電磁波をはじめ、あらゆる探知手段からその存在を消失させる。隠遁中の揺蕩いし叢雲を発見することは極めて困難であり、その技術は現代魔導工学をもってしても再現・解析には至っていない。
建造年代、建造者、本来の建造目的はいずれも不明。現在確認されている歴史資料にも、その建造を記した記録は一切存在しない。
【歴史】
伝承によれば、揺蕩いし叢雲はハルラート民族の祖先とされる大賢者【ルル・シュジッダ】が、超古代文明末期の大戦において旗艦として運用した要塞艦であるという。
しかし、それを裏付ける史料は現存せず、その真偽は現在も明らかになっていない。
超古代文明の滅亡、ルル・シュジッダの最期、そして揺蕩いし叢雲の本来の使命は、いずれも解明し得ない謎とされている。
【船の心】
揺蕩いし叢雲には、《船の心》と呼ばれる意思が存在する。
航行制御、機関管理、格納庫運用、艦体修復など、艦のあらゆる機能はこの意思によって統括されており、乗組員たちは「叢雲」と呼んでいる。
現代の研究者は、超古代文明が遺した高度な人工知能であるとの見解を示しているが、当の《叢雲本人》はその説を明確に否定している。
叢雲は建造以来の全記録を保持していると語る一方、その膨大な記憶の大半は何者かによって厳重に封印されており、自らも閲覧することができないという。
封印された記憶には、超古代文明滅亡の真実、揺蕩いし叢雲の本来の使命、建造主の正体、そしてルル・シュジッダとの関係が含まれていると考えられているが、その真相を知る者は存在しない。