クヴァラヤ王国の首都にして、世界最高峰の魔導科学都市。
北側はマサフィ湾に面し、海と空、そして大地を一体化させた巨大都市として発展を遂げてきた。総人口は約三千万人。その規模は世界最大級を誇り、政治、経済、軍事、学術、魔導科学のすべてが集約された、王国文明の中枢である。
都市全域には超高層建築群が林立し、地上交通に加え、空中回廊や飛行艇専用航路、立体的な魔導交通網が幾重にも張り巡らされている。昼夜を問わず人と物流が絶え間なく行き交い、その光景は「空まで都市となった街」と称される。
都市全体は、王都地下深くから供給される膨大な魔力によって展開される守護結界に覆われており、外敵の侵攻や大規模災害から市民を守っている。また、生活用水はマサフィ湾の海水を高度な魔導技術によって淡水化することで安定供給されており、都市機能を支える莫大なエネルギーのすべては、ナシュタシュリ城最下層に安置された《魔元素核分裂炉》から供給されている。
この神代の遺産によって、王都は世界でも類を見ない高度な文明を築き上げ、クヴァラヤ王国は長きにわたり繁栄を享受してきた。
しかし、その眩い繁栄の裏側には、深刻な社会問題が静かに根を張っている。
経済発展の恩恵を受けた富裕層と、取り残された貧困層との格差は年々拡大し、都市の一角には巨大なスラム街が形成されている。豪華な高層都市の足元で、多くの人々が貧困や失業に苦しみ、治安も悪化の一途をたどっている。
さらに、労働力不足を補うため長年推し進められてきた積極的な移民政策により、王都には世界各地から多様な民族が流入。その結果、多文化都市としての発展を遂げる一方で、文化や価値観、宗教の違いによる軋轢も深刻化している。
近年では不法移民の急増も社会問題となっており、生活基盤を失った人々は、それぞれの民族共同体や宗教組織へ救いを求めるようになった。
各地には民族ごとに異なる宗教コミュニティが形成され、思想や信仰の対立は武力衝突へと発展することも少なくない。
王都では人種差別や排外主義も年々強まり、民族間の暴動やテロ事件が断続的に発生している。政府は治安維持に全力を尽くしているものの、内戦の勃発によって状況は悪化の一途を辿っている。
王都ナシュタシュリは、世界最高の繁栄と技術力を誇る理想都市である。しかし同時に、その輝きが強ければ強いほど、文明が抱える矛盾と人々の欲望もまた、濃い影となって街を覆っている。
それは、『はじまりのシャーリア』という物語の舞台そのものを象徴する、希望と絶望が共存する巨大都市である。