初めまして! 何か気の利いた事を書こうとしたけれど、今僕の心はひどく憂いているようで、あなたの口角を少しでも上げられるような話は書けそうにない。 初恋の話をしよう。 あなたは初恋を覚えているだろうか。 僕は覚えている。はっきりと覚えている。 色鮮やかに鮮明に、今も宝石のようにきらきらと輝いている。 あれは僕が物心付いた時だ。 気付けば僕は木板の床に座り込み、積み木の描かれた絵本に目を落としていた。 ここはどこだろう、ふとそう思い辺りを見渡した。天井近くの壁にちぎり絵で描かれた大きな桃の絵があった。ここは桃組、幼稚園年少組の部屋だ。 こんなものを眺めている場合じゃない。 そう思いすぐに立ち上がって駆け出し、園庭に出られる引き戸を開いた。 大きな蝉の声が響く。夏の眩い日差しに僕は目を細めた。 白く眩んだ目が慣れると、園庭では見覚えのある顔が楽しそうに声を上げて遊んでいる。 しかしそこに彼女はいない。いない事は分かっていた。 右に目を向けると、彼女はいつものように縁側に腰掛けていた。何か本のようなものをじっと見つめていた。 僕はいつもそうしているように彼女のもとへ向かい、触れ合うほど近くに腰掛けた。 彼女はかけ算の計算ドリルを見つめていた。彼女には姉が二人いる。きっと上の姉から借りてきたものだったのだろう。 一緒になって僕はかけ算の計算ドリルを眺めた。意味なんて分からない。だけど彼女が一人でいる時僕はいつもそばにいた。もっとも彼女は僕がそばにいようがいまいが、気にも留めていないようだったが。 時々彼女は垂れた髪を耳に掛ける。深い夜の海の色をした大きな瞳で真剣そうに、じっと計算ドリルを見つめている。 僕は彼女のそんな目が好きだ。 いや――彼女のすべてが好きだった。 インプリンティングという言葉をご存知だろうか。生まれたばかりの雛鳥が初めて見た動くものを親だと認識する学習現象、いわゆる刷り込みだ。 僕は物心が付いた時から彼女の事が好きだった。 あるいはもしかしたら、物心が付く前から好きだったのかもしれない。 そして今も。 小学校を卒業してから一度も会っていない彼女の事を、未だに誰よりも愛している。
やっていきます
意外に書けるもんだ。
初めまして どちらかというと、心理描写より物語重視のジェットコースター的な作品をアップしています。 ファンタジー、SFなどなど、ショートショートから長編まで、楽しんで頂けると嬉しいです!(^O^)// 青樹加奈 ツィッターID:@kana_aoki_1
工業大学卒。自動車研究職。作家を目指したものの文才より数学に成長補正があったためエンジニアになる。制御工学、機械工学に強い人。現在現実逃避のためにVR技術開発の職に勤務中。仮想のVR小説は書かないけど現実のVRは作れる。
ネット小説界隈に生息しています。 細々と小説を書いて電子書籍を出したり投稿したり、最近はノベルゲームに挑戦したりしています。デザインも勉強中です。 ★Twitter https://twitter.com/Narumiluminous ★ホームページ http://izmnrm.wpblog.jp/
艦これと東方と仮面ライダーをこよなく愛する変人。突然野球選手の物まねをする変人や実の妹に命を狙われている変人とよくつるんでいる変人。秋月型の艦娘が好きなのに好きな仮面ライダーはBLACKとかいうカオスが今日も彼をさいなむ。おのれゴルゴム。ネタがよくわからない人はお父さん辺りに訊いてみよう!