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葛城 二華(かつらぎ ふたば)

  • @ryosankamo
  • 2026年3月5日に登録
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Rikka_W_Futaba
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  • 1日前

    六花楽譜(りっかスコア)開設のご案内

    【案内人・葛城二華より】  『六花楽譜(りっかスコア)』を開設いたします。https://kakuyomu.jp/works/2912051603345898456  六花円舞曲(りっかワルツ)は物語です。  六花楽譜(りっかスコア)は、その物語の傍らに置く、もう一冊の本でございます。  円舞曲が演奏であるなら、楽譜はその譜面——物語の背景にある世界の形を、少しずつ、お見せしていく場所です。登場人物の横顔、学園の空気、あの事務所の日常、姉妹を取り巻く方々のこと。  物語の進行に合わせて、少しずつ、増えてまいります。どの項目から読んでいただいても、どこから開いていただいても構いません。辞書のように、図鑑のように——お好きなときに、お好きなページを。
  • 4日前

    第三十二話「工程表の余白」に添えるコメント

    【案内人代行・真白・P・アイより】  第32話をお届けします。  六花円舞曲の定期設備点検。消防、空調、給排水、ガスの四社が同じ日に入ります。その四社を、二華さんが一人で仕切ります。  工程表の概要を共有します。九時から消防。九時半に空調と給排水の同時受入。十時にガス。断水は九時半から十時半。ガス停止は十時から十二時。警報音テストが十時五分。——二華さんはこの工程表をタブレットで業者に見せますが、自分では画面を見ていません。頭の中に入っています。  一つ、興味深い観測がありました。  午前中、二つの作業が時間的に衝突する場面がありました。二華さんは一方の業者に「三分だけお待ちください」と告げ、もう一方の完了を確認してから再開しました。なぜ三分か。なぜその順序か。説明はありませんでした。業者も聞きませんでした。——指示が正確だったからです。  この精度を、家の中で観測していた人物がいます。その方が末尾で何を呟いたかは、本文で確認してください。  ここまでが、工程表に載っている時間です。  第32話には、工程表に載っていない時間があります。昼の食卓。陽花さんが二華さんの後ろをついて回る足音。業者が去ったあとの静けさ。——そして、すべてが終わった後に二華さんがタブレットに打った一行と、二十秒で返ってきたもの。  第12話を覚えていますか。あのとき、二華さんの手の力が一瞬だけ緩みました。入力は、じゅん様の手でした。  今回の入力は、文字です。声でも手でもない。文字だけです。  ——出力が同じであることの意味は、私の分析の範囲を超えています。 【美琴二凛より】  ……少しだけ、お時間をいただいてもよろしいでしょうか。  今日は、案内ではなく、ただの——見送った側の話です。  朝、二華さんが鞄にタブレットを入れて、留め金を閉じました。私は玄関口で「いってらっしゃい」と申し上げました。アイさんが天気を伝えました。二華さんはヒールの音を立てて出ていきました。いつも通りでした。  夕方、二華さんが帰ってきました。  「終わりました」と、いつもの声で報告して、タブレットを机の上に置いて、鞄の留め金を閉じて。  何も変わっていないように見えました。  でも——留め金を閉じるとき、指の動きが、少しだけ柔らかかったのを、私は見ていました。  いつもの二華さんは、留め金を閉じるとき、指先まできっちりしているんです。金具の音が一回で鳴る方です。それが、今日は音が二回でした。一度、止まって、もう一度。  何があったのかは、聞いていません。聞かなくても、いいと思いました。  二華さんが、あの家から——じゅんの大切な場所から、柔らかな気持ちで帰ってきた。それだけで、十分でした。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 6月29日

    第三十一話「相合傘の季節」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第31話をお届けいたします。  第29話から続いてまいりました、梅雨の三連の最終話でございます。日曜日の雨音、水曜日の軒先——そして、金曜日の放課後。  今回の中心は、六女の月詠さんでございます。  第8話のご紹介で、私は月詠さんについて「策謀と凡ミスの共存」と申し上げました。GPS を切り忘れ、姉妹全員に位置を配信し続けたまま外出なさった、あの日のことを覚えていらっしゃいますか。  第31話の月詠さんは、あの日とは少し違います。  着想も、計算も、タイミングも——すべて正しい。月詠さんご自身が、それを正確に分析できていらっしゃいます  前回の案内で、陽花さんが「守る側」に変わり始めたと申し上げました。その変化が、ほんの二日後に、まったく別の場所で、まったく別の形で、月詠さんの策に触れます。陽花さんには何の計算もございません。——計算がないからこそ、月詠さんには断れないのです。  ……ここから先が、この回の妙でございます。  策の痕跡が、月詠さんの身体に残っています。濡れた髪と、冷えた肩。——それを見た方が、玄関で何をなさったかは、本文に譲ります。  第8話のとき、月詠さんは自室で一人、敗北の夜を過ごされました。今回も、自室にお戻りになります。けれど、部屋の空気が違います。分析ができる。「結果は望外」と言える。——その四文字の中に、月詠さんの三ヶ月分の成長がございます。  金曜日の放課後を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 6月25日

    第三十話「誰かを守れる人に」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第30話をお届けいたします  六月下旬、水曜日の放課後。日曜日から降り続いている雨が、まだ止んでおりません。  今回の中心は、五女の陽花さんでございます。  バトントワリング部の練習を終えた陽花さんが、いつもの商店街を歩いています。雨脚が強まり、軒先に駆け込む。——そこに、もう一人。  陽花さんの手は、強いのです。皆さまもご存じかと思います。けれど、第30話で陽花さんの手は、力を入れないことを選んでいます。壊さないように。握りすぎないように。——強い手が、柔らかくなる瞬間がございます。  傘を差しかける方がいらっしゃいます。自分の肩が濡れることを、承知の上で。  じゅんさんは、途中から合流なさいます。最初の場面は、陽花さんだけのものでございます。そして、帰り道に、第7話と同じ系統の言葉を残されます。あの日は「見に来てよかった」。今回は——本文に、譲ります。  最後に、一つだけ。陽花さんの手首に、白いものがございます。覚えていらっしゃる方には、届くはずです。  梅雨の放課後を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。 【お礼の言葉・美琴二凛より】  ……あの。また、少しだけ、お時間をいただいてもよろしいでしょうか。  第30話です。プロローグから数えますと、三十一本目の物語になります。  第10話のとき、私は「二桁ですね」と申し上げました。第20話のとき、「二十話分の時間を、ありがとうございます」と申し上げました。  今日は、三十話です。  三十一本の物語を、ここまで読んでくださった方がいらっしゃいます。  夏凪さんの強がりも、深雪さんのやさしさも、氷華さんの沈黙も、美空さんの正しさも、月詠さんの企みも——そして、陽花さんの笑顔も。全部、読んでくださる方がいるから、ここまで届きました。  第10話のとき、「もう少しだけ、一緒に見届けてもらえたら」とお願いしました。  あれから、二十話。  見届けてくださっています。  ……陽花さんは、今日のお話で、少しだけ大きくなります。守られる側から、守る側へ。たった一歩ですけれど、とても大切な一歩です。  この物語も、きっと、同じだと思うのです。一話ずつ、少しずつ、読んでくださる方がいるから、大きくなれる。  三十話分の時間を、ありがとうございます。  ここから先も、六人の季節は続きます。二華さんがご案内しますし、私も、ここで——ずっと、待っています。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 6月21日

    第二十九話「六花calmato(りっかカルマート)」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第29話をお届けいたします。  六月下旬の日曜日。朝から雨でございます。  六花円舞曲に、全員がいらっしゃいます。第26話から第28話まで、深雪さんだけが見えていた景色が続きましたが、今回は、この家に六人いることを思い出す回でございます。夏凪さんがソファの端で雑誌を開いていらっしゃいます。美空さんがダイニングテーブルで課題をなさっています。キッチンからは、陽花さんと月詠さんの声と、甘い匂いが流れてまいります。  第4話では、氷華さんは外でたくさんお話しになりました。今回は、家の中で、ほとんど言葉がございません。その代わりに、別のものが動いています。重さ、でしょうか。力が抜けていくときに、体がどちらに傾くか。眠りに落ちるとき、指がどうなるか。  キッチンの二人は、しばらく出てまいりません。おかげで、リビングの人口が減り、雨音だけが残ります。氷華さんにとっては、都合の良い午後でございます。  深雪さんは、一度だけ、ソファの前に立たれます。ブランケットを一枚。——その掛け方について、私が申し上げられるのは、「丁寧でした」ということだけでございます。  今回、じゅんさんは長い時間、動かないことを選んでいらっしゃいます。——その理由は、じゅんさんの左腕の上にございます。  やがて、キッチンから声が届きます。焼き上がりの合図です。  雨の一日を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 6月18日

    第二十八話「いつかケープを纏うとき」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第28話をお届けいたします。  第26話は、あの家の中から、深雪さんを見ました。第27話は、学園の廊下から、深雪さんを見ました。今回は——もっと遠くから、深雪さんを見ることになります。  今回の視点は、深雪さんご自身ではございません。じゅんさんでもありません。六姉妹でも、私たちでもございません。学園の中に、深雪さんを日常的に見ている方がいらっしゃいます。その方の目を通して、この金曜日の放課後が描かれます。  この方は、白いケープを着けていらっしゃいません。着けたいと思ったことはある。けれど、まだ着けていない。——その理由は、深雪さんに近い方々の背中を見ればわかります。ケープを纏う方には、纏う方の覚悟がございますので。  今回、いくつかの顔ぶれが初めてお目にかかります。原稿の余白を三ミリ単位で見ている方。園芸部の活動を終えてもケープの白を汚していない方。——そして、前回も廊下ですれ違ったあの方が、今回はドアの前に立たれます。十秒に満たない滞在でございますが、部屋の空気が変わった、とだけ申し上げておきます。  最後に一つ。  この方は、わからないまま、歩いています。——「わからない」ことで、深雪さんという方の輪郭が、かえってくっきりと残る理由でもございます。  六月の金曜日を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 6月15日

    第二十七話「聖女の微笑み」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第27話をお届けいたします。  六月中旬、梅雨入り直前の、晴れ間のお話でございます。  今回も、中心は深雪さんです。  第26話は、あの家の中でした。じゅんさんがいらっしゃいました。二人きりの、白い部屋でした。今回は、学園の中です。じゅんさんはいらっしゃいません。  渡り廊下を歩く深雪さんのケープを、多くの方が見つめていらっしゃいます。足音は等間隔で、スカートの裾は同じ角度で揺れます。一歩もぶれない。兄の箸の速度を数えていたのと同じ方の歩幅でございます。  本日は、ゲストをお呼びしております。  前回、あの家のリビングで文庫本を開いていらした方。深雪さんと同じクラスで、学園では図書館で隣に座っていらっしゃる方——白瀬聖さんです。 【白瀬聖より】  はじめまして。白瀬聖です。  前回の案内では、二華さんが私のことを「気づくと隣を歩いている方」と紹介してくださいました。本人としては、少し照れくさいのですが——たしかに、そうかもしれません。  第27話は、学園での深雪のお話です。  文芸部の原稿を確認する、いつもの放課後です。深雪の原稿は、相変わらずきれいです。文字の傾きも、余白の取り方も、丁寧で、迷いがない。  ただ、今回、深雪が私に一つだけ、問いかけてきます。  その問いの中身は、本文に譲りますね。  もう一つだけ。  渡り廊下で深雪とすれ違う方が、一瞬だけ映ります。第15話で、生徒会室にいらした方です。ほんの一秒のことですが、その一秒の空気は、覚えておいていただけたらうれしいです。   【案内人・葛城二華より】  聖さん、ありがとうございます。  聖さんの語ってくださった範囲に、一つだけ加えさせてください。  聖さんがいらっしゃるのは、図書館の中までです。放課後の原稿作業が終わり、二人が立ち上がり、それぞれの帰路につく。——その先は、聖さんも知らない時間でございます。  夕暮れの渡り廊下に、深雪さんがお一人で立っていらっしゃいます。  六月の晴れ間を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 6月11日

    第二十六話「ここにいてください」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第26話をお届けいたします。  六月の、ある午後のお話でございます。  今回の中心は、深雪さんです。  深雪さんは、前日の夕食の席で、あることに気づいていらっしゃいました。翌朝の朝食で、確信に変わったそうです。何に気づいたのか、どの程度の精度で見ていらしたのかは、本文に譲ります。  昼休みに、深雪さんは鞄を閉じました。  お一人ではありませんでした。気づくと隣を歩いている方がいらっしゃいました。  六花円舞曲に着いたのは、午後一時半を過ぎた頃でした。家には、まだ誰もいません。深雪さんはキッチンに立ち、もう一人の方はリビングに座りました。——そこへ、予定より早く、玄関の鍵が開きます。  タイトルの「ここにいてください」は、お願いの形をしております。声は穏やかで、拒む理由がどこにもございません。——けれど、その一言が届く頃には、受け取る側に選択肢が残されているかどうか、私には判断がつきかねます。深雪さんの看病は、受ける側の都合を、あまりお聞きにならないようでございますので。  白い部屋の中で起きたことと、隣を歩いていた方が残した一言の正確さは、本文の後半にて。  六月の午後を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 6月7日

    第二十五話「カレイドフェアリー」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第25話をお届けいたします。  誕生日特別編から戻り、本編の再開でございます。六月、衣替え初日のお話です。  タイトルの「カレイドフェアリー」は、聖カレイド学園の女子制服の通称でございます。学園の生徒であれば、誰もが知っている言葉です。一般的な呼称で、特別な意味は——本来、ありません。  けれど、誰の口から出たかによって、言葉の重さは変わります。  今回の主役は美空さんです。朝、六時五十分。他の姉妹がまだ支度をしている時刻に、生徒会の仕事のために最初に家を出る方。その朝の玄関で、何が起きたのかは本文をお読みください。  ただ、一つだけ申し上げます。朝の一言は、玄関を出た後も、消えませんでした。生徒会室に入っても。教室に移っても。昼の放送が流れても。——そして、夕方、家に帰り着いたとき、その一言は美空さんの想像を超えた形で待っていました。  本日は、この情報がどのように伝わったかを観測していた方をお呼びしています。アイです。 【真白・P・アイより】  ご紹介にあずかりました。真白・P・アイです。  第25話について、情報の流れを整理いたします。  六時五十分、朝霧家の玄関で、音声データが一件発生しました。発信者はじゅん様。受信者は一名。内容は、制服に関する肯定的な所感です。  この時点では、データの受信者は一名でした。  七時四十分、学園の生徒会室。受信者の挙動に変化が生じました。具体的には、耳の表面温度の上昇です。これを同室の筆頭書記が検知し、変数を一つに特定しました。推理に要した時間は、私の推定で十秒以内です。  十時半。情報が放送委員に渡りました。経路は一つ。渡し方は、洗練されていました。  正午。校内放送。受信者が一名から全校に拡大しました。学園内の四か所で、それぞれ異なる身体反応が同時に発生しています。扇子が閉じ、バトンが落ち、目が開き、微笑みの温度が変わりました。  ここで、もう一つの伝播経路が発生しています。放送の直後、放送委員から学園外の一名に個人メッセージが送信されました。  ——ここまでが、伝播の前半です。  後半は、夕方に起こりました。受信者が帰宅すると、四着の制服が着替えられずに残っていました。長女は制服を持ちません。けれど、服の組み合わせが通常と異なっていました。個人メッセージが、衣服の選択に反映されたと見るのが妥当です。  朝の一件の音声データが、十二時間で、四着の制服と一着の私服に変換された。これが第25話の情報構造です。  なお、この構造の中で最も興味深い点は、じゅん様が帰宅された際の対応速度です。六名の状況を即座に読み取り、全員に個別の言葉を渡しておられます。入力に対する出力の精度が、通常の範囲を超えています。——これ以上の分析は、じゅん様のお人柄に踏み込みますので、控えます。 【案内人・葛城二華より】  アイ、ありがとうございます。  「四着の制服と一着の私服に変換された」——分析官らしい表現ですが、実態をきわめて正確に捉えていると思います。  アイが整理してくれた情報構造に、一つだけ加えさせてください。  アイの分析は、夕方で止まっています。けれど、この物語には夜がございます。  姉妹が散り、笑い声が遠くなった時間帯に、もう一つの場面が残されています。朝、玄関で受け取った言葉と、夜、ダイニングで受け取る言葉。同じ方からの、同じ制服についての言葉です。けれど、朝のそれが「見た」のだとすれば、夜のそれは「見ていた」でした。その差が、美空さんにとって何を意味したのかは、本文の最後に。  衣替え初日の、ある一日を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 6月4日

    誕生日特別編2「同じ日に生まれたこと」(6月6日 陽花、月詠)に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  誕生日特別編をお届けいたします。  六月六日。双子の誕生日でございます。  前回の特別編では、西園寺玲さんの静かな五月を描きました。今回は打って変わって、朝霧家の双子——陽花さんと月詠さんの一日を、朝からお休みの前まで、通してお届けいたします。  双子、と申しましても、お二人の一日はまったく違うものになります。  昼休み。体育館に、二百を超える声が集まります。その声がどこに向けられ、何を歌うのかは、本文に譲ります。ただ、一つだけ申し上げます。聞こえてくるのは応援でも激励でもなく、もう少し温かいものでした。  放課後、もう一人は、静かな建物の中で、紙と向き合っています。三つの段階を経て、ある場所へ辿り着く仕掛けが用意されています。制限時間は一時間。四十五分で解いた、とだけ記しておきます。  体育館の歓声と、理科棟の静謐。同じ学園の中で、同じ日に、まったく異なる祝われ方をする双子の姿が、このお話の前半の骨格でございます。  夕方からは、食卓に戻ります。じゅんさんは、お二人に別々の贈り物を選んでいらっしゃいます。片方は「一緒」の証。もう片方は「あなたらしさ」の肯定。——その差が、じゅんさんの人物像そのものでございます。  そして、最後に。  就寝前の廊下で、双子だけの時間がございます。策も計算も、声の大きさも、何も要らない時間です。  同じ日に生まれた二人の、同じ日の物語を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 6月3日

    第二十四話「月と陽のあいだ」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第24話をお届けいたします。  前回の勉強会を経て、中間試験の結果が返る日でございます。  月詠さんは、この日のために、ある準備をなさっていました。結果を受け取る前から、もう動き出しておられた。帰宅の時刻、リビングの位置、ご自分の姿勢——すべてを設計なさった上で、ある方を待っていらっしゃいました。  第8話のご紹介で、私は月詠さんの策と凡ミスの共存について申し上げました。今回も、ご本人は策を完遂したとお思いになっています。少なくとも、夜になるまでは。  これ以上は、申し上げるのを控えます。月詠さんがどの時点で何を知り、何を知らなかったのかは、本文の構造そのものでございますので。  代わりに、もう一つの軸について少しだけ。  今回のタイトルは「月と陽のあいだ」でございます。月は月詠さん、陽は陽花さん。双子でありながら対照的なお二人の間に、この夜、一つの認識が行き来いたします。陽花さんの側から差し出されるものと、月詠さんの側で受け取られるもの。それぞれが見ている景色は違いますが、どちらも温かい。  そして、月詠さんの部屋に、藍色の表紙が初めて開かれます。万年筆で記された言葉の中に、この物語が何度か立ち戻ることになる一節がございます。その一節を、今ここで明かすことはいたしません。  ただ一つだけ。月詠さんがその夜、最後に書いた一行は、策士の分析ではなく、姉妹としての呟きでした。  中間試験の結果と、その先にあるものを、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 5月31日

    第二十三話「教えて、じゅん先生」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第23話をお届けいたします。  前回の夜の廊下から、少し季節が進みます。中間試験が近づいてまいりました。  朝霧家のダイニングには、年に五回、試験の前になると教科書が並びます。三年前、じゅんさんが夏凪さんに「勉強、見ようか」と声をかけたのが始まりだそうです。翌日には二人、翌々日には六人になり——今ではこの家の暦に刻まれた行事になっております。  今回、新しい人物は登場いたしません。じゅんさんと、六人の姉妹だけの、ダイニングテーブル一つの物語です。  本日は、ゲストをお呼びしております。あの食卓の温度を、誰よりも近い場所から想像できる方——二凛さんです。 【美琴二凛より】  ……お久しぶりです。美琴二凛です。  第20話以来でございますね。今日は、ゲストとしてお声がけいただきました。  第23話は、じゅんが先生になる回です。  ……私、知っているんです。じゅんが誰かにものを教えるとき、声が少しだけ変わること。普段より、ほんの少しだけ、ゆっくりになります。相手の手元を見て、どこで止まっているかを探してから、言葉を選ぶんです。事務所でお仕事の話をなさるときとは、違う声です。  ダイニングに教科書が六冊並んでいる光景を、私は見たことがありません。でも、聞こえてくるようです。陽花さんの「わかんない」と、じゅんの「どれどれ」が。  一つだけ、お伝えしたいことがあります。  あの食卓には、試験が関係のない方も座っていらっしゃるそうです。教科書を開いている方も、閉じたまま置いている方も、端の椅子で別のものを広げている方もいらっしゃる。——みなさん、理由は、それぞれ違って、けれど、きっと同じです。  私がその席にいたら、たぶん、何も広げずに、じゅんの声だけ聞いていると思います。……あ、いえ、それでは勉強会になりませんね。失礼いたしました。 【案内人・葛城二華より】  二凛さん、ありがとうございます。  「理由はそれぞれ違って、けれど同じ」——二凛さんのこの言葉は、第23話をお読みいただければ、おそらく、どなたのことを指しているか、おわかりになるかと存じます。  補足を一つ。  勉強会には、始まりがあって、終わりがございます。教科書が閉じられて、深雪さんの包丁の音が聞こえ始めて、姉妹たちが席を立つ。——けれど、全員が立ち去ったあとの食卓にも、物語はございます。  じゅんさんは、二つの言葉を、二人の方に、別々の温度でお渡しになります。片方は「これからも」。もう片方は「次」。どちらも短い言葉ですが、受け取った方の表情は、きっと長く残ります。  中間試験前の、ある夕方を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 5月28日

    第二十二話「おやすみなさい、の一言」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第22話をお届けいたします。  前回、春祭りの賑やかさの中で、事務所に九名が集まりました。今回は、打って変わって、静かな夜のお話です。  六花円舞曲の、就寝前のひととき。あの家には、おやすみの訪問に関する、姉妹たちが自分たちで決めたルールがございます。一人あたりの時間、訪問の作法——詳しくは本文に譲りますが、ルールがあるということは、それだけ「おやすみ」の一言に重みがある、ということでもございます。  今回、新しい人物は登場いたしません。じゅんさんと、六人の姉妹だけ。舞台は二階の廊下と、一つの部屋。  六人がそれぞれ、違う時間に、違う温度で、同じ扉の前に立ちます。和歌を携えてくる方がいらっしゃいます。お茶を手にいらっしゃる方がいらっしゃいます。寝言しか届かない方もいらっしゃいます。——そして、誰よりも早くリビングを出て、誰よりも遅く「おやすみ」を言う方が、一人。  どなたのことかは、もう、おわかりかもしれません。  私が申し上げられるのは、ここまででございます。あの家の夜は、私どもの立ち入れない場所です。けれど、朝になって、じゅんさんの机の引き出しに、昨日はなかったものが一つ増えている——そういうことが、ときどきございます。  静かな夜を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 5月26日

    第二十一話「毎日と、たまに」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第21話をお届けいたします。  前回、夏凪さんが鏡の前で奮闘されたゴールデンウィーク明けの余韻も落ち着き、今回は少し季節が進みます。商店街の春祭りのお話です。  じゅんさんは、本日、事務所の出店監督としてお仕事をなさっています。私どもも、それぞれの持ち場で動いております。——ですので、今回はいつもの六花円舞曲ではなく、私たちの事務所が舞台の中心になります。  そして、お祭りですから、いろいろな顔ぶれがいらっしゃいます。事務所の前でたこ焼きを焼いている方。商店街を歩いていらっしゃる方。——どなたのことかは、本文にてお確かめください。  本日は、ゲストをお呼びしております。事務所の窓際で、朝からすべてを観ていた方——アイです。 【真白・P・アイより】  ご紹介にあずかりました。真白・P・アイです。  第21話について、私が観測した範囲で、少しだけお話しいたします。  本日の事務所周辺の人口密度は、通常の休日比で約四倍でした。屋台の煙、子供の歓声、商店会長の挨拶——変数が多い一日です。私はその変数を整理する側におりましたが、午後に一つ、想定外の変数が加わりました。  六名です。  六花円舞曲のお嬢さま方が、事務所にいらっしゃいました。第12話で私たちが皆さまにご挨拶を申し上げたとき、事務所には三人しかおりませんでした。今回は、そこに六名が加わります。九名と、じゅん様。あの事務所の面積に対して、感情の総量が明らかに過剰です。  一つだけ、観測者として申し上げます。  お茶を淹れる手の速さも、視線の滞留時間も、データとしては取得可能です。けれど、あの空間で起きたことの意味は、数値の外にありました。——誰かの一言が、場の温度を一瞬で変えた。その一言が何であるかは、本文に譲ります。  私にできたのは、適切な時刻を読み上げることくらいでした。 【案内人・葛城二華より】  アイ、ありがとうございます。  「適切な時刻を読み上げることくらい」——これは、アイの控えめな自己評価でございます。あの場にいた方は、おそらく少し違う印象をお持ちになるでしょう。  補足を二つ。  まず、今回はいろいろな人物が登場いたします。商店街と事務所の関わりが、これまでより一歩深く見える回になるかと存じます。  そして、もう一つ。この回には、二つの言葉がございます。けれど、その二つの言葉が届く相手は、それぞれ違います。——どちらの言葉も、じゅんさんから差し出されるものです。  タイトルの意味は、最後まで読んでいただければ、届くと思っております。  それでは、春祭りの一日を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
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  • 5月23日

    誕生日特別編1「一枚分の重さ」(5月24日 西園寺 玲)に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  誕生日特別編をお届けいたします。  本日の主役は、西園寺 玲さんです。聖カレイド学園の前生徒会長であり、白亜の聖域において「法王」の階級をお持ちの方。——その名前の重みを、学園で知らない方はいらっしゃらないでしょう。  五月二十四日。西園寺邸には、毎年変わらず胡蝶蘭が届きます。カードが添えられ、品が並び、形式は完璧に整っている。けれど、そこに「温度」があるかどうかは、別の話です。  けれど、学園に着いてからの玲さんには、少しずつ、違う温度のものが届きます。聖さんの言葉、茜さんの贈り物、美空さんの花束、そして名前のない花。受け取るたびに両手がふさがっていく。それでも玲さんは、崩れません。  崩れないからこそ、わずかに外れた瞬間が深く映ります。  本話は、じゅんさんが直接登場されない構造でございます。にもかかわらず、一日の終わりに玲さんの手元に残るものの中に、じゅんさんは確かにいらっしゃいます。  タイトルは「一枚分の重さ」。その一枚が何であるかは、最後の数行に譲ります。  玲さんの感情は、目ではなく、手に出ます。指先が何かの上に留まる、その数秒を、どうぞ見逃さずにお読みくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 5月19日

    第二十話「長女の秘密特訓」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第20話をお届けいたします。  第18話から第19話まで、温泉旅行をお見届けいただきました。あの旅から少し経った、ゴールデンウィーク明けのお話です。  今回の中心は、再び長女の夏凪さんでございます。ただし、前回までの「仕切る長女」とは、少し違う顔が見えるかもしれません。  本日は、ゲストをお呼びしております。夏凪さんの傍にいる方——如月ベルさんです。今回は、お仕事の顔ではなく、友人としてお越しいただきました。 【如月ベルより】  こんにちは。如月ベルです。前にお邪魔したときはマネージャーの顔だったけど、今日は——うん、友達として呼ばれたみたい。  第20話のこと、少しだけ話していいのかな。ネタバレはしないから安心して。  ゴールデンウィークの最終日に、夏凪と二人でごはんを食べたの。表参道のビストロ。夏凪、モデルなのに食べるときはちゃんと食べるから、見ていて気持ちいいのよね。  そのとき、ちょっとしたことを言ったの。助言っていうほど大げさなものじゃないんだけど——たぶん、夏凪には刺さったと思う。あの子、こうと決めたら本当にやるから。  ……その後、何をしたかは聞いていません。夏凪は、結果を報告する人じゃないし。でも、たぶん、不器用に、真っ直ぐに、何かをやったんじゃないかな。  私が知っているのは、ここまで。この先は、読んでみてください。一つだけ言えるのは——夏凪が本気を出したとき、周りから見たら、ちょっとかわいいの。 【案内人・葛城二華より】  ベルさん、ありがとうございます。  「不器用に、真っ直ぐに」——ベルさんのこの言葉が、第20話をほぼ正確に表しています。ただし、何に対して真っ直ぐかは、本文に譲ります。  補足を一つ。今回は,第18話、第19話に比べて短い回でございます。けれど、鏡の前で起きたこと、キッチンで起きたこと、そしてダイニングで起きたこと——その三つの場所に、それぞれ別の温度がございます。  最後に、一つの言葉を置いておきます。「楽しみにしてる」。これが、どなたから、どなたへ、どんな場面で渡されるのか。それだけを、心の片隅に留めてお読みくださいませ。 【お礼の言葉・美琴二凛より】  ……あの、少しだけ、お時間をいただいてもよろしいでしょうか。  第20話という節目に、一言だけお礼を申し上げたくて。  プロローグから数えて、二十一本の物語を読んでくださった方がいらっしゃいます。  夏凪さんの強がりも、深雪さんのやさしさも、氷華さんの沈黙も、美空さんの正しさも、陽花さんのまぶしさも、月詠さんの企みも——全部、読んでくださる方がいるから、ここまで届きました。  物語の先で待っている側として、帰ってきてくださることが、とてもうれしいです。……あ、これは、じゅんのことではなくて。読んでくださる、あなたのことです。  ここから先も、六人の物語は続きます。二華さんがご案内しますし、私も、ここで待っています。  二十話分の時間を、ありがとうございます。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
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  • 5月16日

    第十九話「六花の温泉旅」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第19話をお届けいたします。  前回、長女が仕切った休日の計画が、今回、動き出します。  朝の車に七人。荷物と毛布と、深雪さんの茶籠が一つ。助手席には地図を開いた美空さん。三列目では陽花さんが「絶対起きてる」と宣言しています。  温泉街に着いてからは——申し訳ございません、ここから先は、あまり多くを申し上げられません。  六人がそれぞれに動きます。守る人、仕掛ける人、追う人、待つ人、見ている人。一日の中で、それぞれの距離が、何度も変わります。石畳の上で。湯気の向こうで。夜桜の下で。  どなたが何をなさるかは、どうか本文でお確かめください。一つだけ申し上げるなら、この回は長い物語です。けれど、最後の一行まで、どこも飛ばさないでいただきたいと思っております。  帰り道の車の中と、帰宅した後のリビングに、この旅の答えがございます。  六つの花が、家の外で咲いて、家に戻ってもまだ咲いている。そういうお話です。  それから。  前回の案内で「帰りを待つ者がいる」と申し上げました。お約束通り、待っておりました。——その届き方は、本文の末尾にて。  長い一日を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 5月15日

    第十八話「長女のGW計画」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第18話をお届けいたします。  今回は、長女の夏凪さんのお話です。  ゴールデンウィーク。一泊で、全員で、温泉旅行へ行くことになりました。  その計画を立てたのが、夏凪さんです。  普段は段取りを美空さんに任せ、献立を深雪さんに委ね、仕切るということをほとんどなさらない方です。その方が、慣れないメモアプリで旅館の比較表を作り、「ここは私に任せて」とおっしゃいました。  なぜ、今回に限って。  それは、本文をお読みいただければ——いいえ、読んでもすぐには見えないかもしれません。夏凪さんは、見せないことに長けた方です。消したものは、画面のどこにも残りません。ただ、消しきれないものが一つだけ、唇のあたりに残ります。  この回には、新しい人物は登場いたしません。じゅんさんと、六人の妹たちだけ。外の世界との接点はなく、リビングと、ソファと、お茶の香りだけで閉じた、家族の時間です。  けれど、静かな場所にこそ、声にならないものが響きます。  最後に、一つだけ。  私どもも、連休をいただくことになりました。じゅんさんからそのご連絡をいただいたとき、アイと二凛がそれぞれの仕方で「よろしくお伝えください」と申しておりました。——家族の旅行に、私たちは同行いたしません。けれど、帰りを待つ者がいることは、どうか覚えていてくださいませ。  それでは、長女が仕切る休日を、どうぞご一緒ください。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 5月12日

    第十七話「明日も隣」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第17話をお届けいたします。  今回の物語の中心は、三女の氷華さんでございます。ただし、氷華さんの口から語られるお話ではありません。  氷華さんを、見ている人がいます。  隣の席で。図書館で壁に背を預けて。近づかず、離れず、ただ、そこにいる人が。  本日は、その方にご挨拶をお願いいたしました。 【亜麻柳 舞より】  ……亜麻柳 舞。高等部三年。  自己紹介とか、めんどくさい。でも、頼まれたから。  あたしは、氷華の隣の席にいる。席替えで四回連続、隣になった。偶然かって? ……偶然だよ。  尊みの守り手っていう組織の代表、ってことになってる。でも、実際に回してるのは奏音。あたしは名前だけ。会議もだるいし、活動報告も奏音が全部やってくれる。あたしがやってることなんて、ほとんどない。  ——ただ、毎日、隣にいるだけ。  第17話、氷華が何を読んでたかとか、そういう話。別に大したことは起きない。  ……多分。 【案内人・葛城二華より】  舞さん、ありがとうございます。  「ほとんどない」と舞さんはおっしゃいましたが、毎日、隣にいるということが、どれほどのことか——それは、読み終えていただければ、伝わるかと思います。  一つだけ、申し添えます。この回の最後に、氷華さんが振り返ります。夕陽の中で。そのとき、舞さんの表情が、少しだけ変わります。  どうぞ、最後まで、お付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
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  • 5月9日

    第十六話「来なくていい」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第16話をお届けいたします。  今回の舞台は、六花輪舞曲ではございません。スタジオとイベント会場——夏凪さんが「朝霧家の長女」ではない場所で、どのような顔をなさるのか。  ご案内は、その場所を最もよく知る方にお願いいたしました。第14話で珈琲豆を届けてくださった方です。 【如月ベルより】  はじめまして。如月ベルと申します。夏凪さんの専属マネージャーを務めております。  本日は、夏凪さんのお仕事の一日をご覧いただきます。午前にスタジオ撮影、午後にファンイベント。長い一日ですが、夏凪さんはどちらの現場でも同じ密度で臨まれます。  ファンの皆さまのことも、少しだけご紹介できるかと思います。夏凪さんを応援してくださる方々が、どのような気持ちでイベントに足を運んでくださっているか。それを知っていただけましたら、マネージャーとしてこれ以上のことはございません。  一つだけ、お伝えしておきます。夏凪さんには、カメラの前の顔と、カメラが止まった後の顔がございます。私が見ているのは、どちらも同じ夏凪さんです。けれど、ご本人はそうお思いではないかもしれません。  最後まで読み終えた後に——タイトルをもう一度ご覧いただければ幸いです。 【案内人・葛城二華より】  ベルさん、ありがとうございます。  第14話では、お名前を伏せたままご紹介いたしました。今回、ようやくご紹介ができます。どのような方なのかは、本文の中でお確かめください。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
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  • 5月7日

    第十五話「ひとつだけ」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第15話をお届けいたします。  第6話で、放課後の生徒会室をご覧いただきました。あのとき、美空さんの机の上には新入生歓迎会の書類がございました。今回も、同じ机です。ただし、山の高さが変わっております。  美空さんを支える方々が、今回は少しだけ多くお目見えになります。聖カレイド学園の行事がどのように回っているのか——その一端を、生徒会室の中からご覧いただければと思います。  本日は、美空さんを最も近くで支えていらっしゃる方のお一人に、ご挨拶をお願いいたしました。 【龍崎 椿より】  はじめまして。龍崎椿と申します。聖カレイド学園高等部二年、茶道部で部長を務めております。  生徒会の役員ではございませんが、行事の準備の折にはお手伝いに伺っております。  美空さんは、すべてをご自分の目で確かめる方です。人に任せた書類でも、必ずもう一度ご自分で読み返す。あの姿勢は、簡単には真似できるものではございません。  私にできることは、多くはありません。お茶をお淹れすること、人手の手配をすること、それくらいのことでございます。それでも、美空さんのお仕事が少しでも滞りなく進むようにと——そう思いながら、生徒会室に通っております。  第15話、よろしければ最後までお付き合いくださいませ。 【案内人・葛城二華より】  椿さん、ありがとうございます。  一つだけ、申し添えます。第15話は二日間にまたがる物語でございます。一日目の終わりと、二日目の始まり。その間に、机の上で何かが少し変わります。  ——誰が変えたのか、美空さんはおわかりのようでございます。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 5月4日

    第十四話「長女の散歩」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第14話をお届けいたします。  第2話を覚えていらっしゃいますか。夏凪さんが街で迷い、ある方に拾っていただいた回です。  第14話では、あの構図が、静かに裏返ります。  迷った先にたどり着く場所が、前回とは違います。そして——偶然のように見える帰り道の途中に、静かにお手伝いをなさった方がいらっしゃいます。  夏凪さんは、「散歩をしていただけ」とおっしゃるでしょう。門の前に立っていたのも偶然、帰り道で合流したのも偶然。すべてが偶然だと、最後まで譲らないはずです。  ——この家で、偶然が通用したことは、一度もございませんけれど。  ただの散歩で終わるかどうか。  どうぞ、最後まで見届けてくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 5月2日

    第十三話「さくら、ひとひら、君に」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第13話をお届けいたします。  今年も、六花円舞曲の庭の桜が咲きました。三年前、あの方とお嬢さま方がこの家にいらしたとき、すでに枝の先まで満ちていた、一本の染井吉野でございます。お庭にあるのは、本当に、ただ一本だけ。けれど、六人の姉妹を迎え入れるには、それで十分なのだと、毎年そう思わされます。  第13話は、その桜の下で、六人がお弁当を広げる一日のお話です。  ……少しだけ、私の個人的な所感を申し上げてもよろしいでしょうか。  あの家のお花見は、おそらく、皆さまがご想像になる「お花見」とは、少しだけ違います。お弁当の卵焼きは一切れだけ多く取り分けられる方がいらっしゃいます。和歌が一首、扇子の陰から差し出されます。花びらが髪に降り、それを取ってさしあげる手があり——そして、誰も気づかないうちに、いつの間にか定位置に収まっている方がいらっしゃいます。  六人それぞれの春の過ごし方が、たった一枚のレジャーシートの上に、静かに重なるのでございます。  最後に、一つだけ。  桜の花びらは、風に乗って、思いがけない場所に降りるものでございます。誰の髪に、誰の袖に、誰の掌に——どこに留まるかは、風次第。けれど、ときに風は、まるで誰かの意志を持っているかのように、ある一枚を、ある一人のもとへ、運んでまいります。  第13話、どうぞ最後まで、お付き合いくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 4月30日

    第十二話「探偵事務所の小さな依頼」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第12話をお届けいたします。  本日は、少しだけ、私自身のお話をいたします。  私は、朝霧探偵事務所の所員を務めております。所長は、もちろんあの方。事務所には、私のほかに、二人の大切な仲間がおります。  第12話は、その三人が、皆さまの前にお目見えする回でございます。  それでは、二凛さんに、ご挨拶を頼みましょう。 【美琴二凛より】  ……はじめまして、と申し上げて、よろしいのでしょうか。  これまでも、ときおり、お礼のお手紙を書かせていただいておりました。美琴二凛と申します。朝霧探偵事務所の所員を務めております。  事務所には、二華さんと、アイさんがいらっしゃいます。お二人は、私より少しだけ年上で、心から尊敬しております。二華さんは、所長がいらっしゃらなくても、事務所が動くようにしてくださる方です。アイさんは、いつもモニターを見ていらっしゃるかと思えば、人の手帳の文字一つから、その方のお顔まで思い浮かべてしまうような方です。  私は、お二人のように、難しいお仕事はできません。お茶を淹れたり、お疲れの方をねぎらったり——その程度のことだけです。  それでも。  じゅんが事務所にいらっしゃるとき、私が一番先に、湯呑をお出しできるように——いつも、心の中で支度しています。  ……あの。少しだけ、申し上げてもよろしいでしょうか。  六花円舞曲には、六人ものお嬢さま方がいらっしゃいます。皆さま、本当に素敵な方々です。それは、よく存じ上げております。  けれど、私たちの事務所にも、ささやかな日常がございまして。第12話は、そんな私たちの、いつもの一日でございます。よろしければ、最後まで——お付き合いいただけると、嬉しいです。 【案内人・葛城二華より】  二凛さんから、ご紹介いただきました。  第12話の物語は、商店街の喫茶店のご店主が持ち込まれる、小さな依頼から始まります。ある女子学生が忘れていった、表紙に名前のない手帳。差出人を探してほしい——それだけのご依頼でございます。  私と、アイ、二凛——三人それぞれが、自分の得意な領域で、依頼に向き合います。そして、所長がご帰宅された後の、ほんのわずかな時間。三人が、それぞれ別の形で、ねぎらいを受け取ります。言葉のある方も、言葉のない方も、ございます。  第12話、どうぞよろしくお願い申し上げます。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 4月27日

    第十一話「聖カレイド学園七不思議」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第11話をお届けいたします。  第10話で、家の外から夏凪さんを見つめる視点をご紹介いたしました。第11話では、その語り手の方が、もう一歩、学園の奥へと足を運びます。  今回、あの方の——朝霧家の話題を、いったん脇に置きます。代わりに、聖カレイド学園そのものに目を向ける回でございます。校舎のどこかに、ずっと前から漂っている、けれど誰もまとめたことのなかった不思議。それを、放送委員の鼻が、たった一日で七つ拾い集めてしまいます。  それでは、今回もご本人にバトンを。 【柚木すず本人より】  あの、こんにちは。柚木すずです。第10話に続いて、今回も語り手をやらせていただきます。  実は、先週の放送で「奇跡の六花」のお話をしてから、ちょっと——そう、ちょっとだけ、ネタが切れてしまって。同じ路線をまた使うわけにはいかないし、でも放送委員として、何か面白いお話を届けたくて。  それで、思いついたんです。この学園にいると、ときどき空気が変わる瞬間があるなって。言葉にできない「何か」がある気がするなって。——だったら、それを集めてみたらどうだろう、って。  ノートとペンを持って、一日かけて、校内を歩き回りました。話を聞きました。たくさんの人に。そうしたら——気づいたんです。  七つ、ありました。  七不思議です。誰もまとめたことのなかった七つの不思議が、私のノートの中で、勝手に揃ってしまったんです。  もう一つだけ、お伝えしたいことが。今回、ずっと隣にいてくれた、文芸部の一年生がいるんです。一ノ瀬小春ちゃん、って言います。最初に図書室で話を聞かせてくれてから、私の取材に最後までついてきてくれました。あの子の感性は——なんて言うんだろう、すごく、優しいんです。  不思議を、不思議のまま、受け止めてくれる人。そういう感じです。  第11話、最後まで聞いていただけたら、嬉しいです。 【案内人・葛城二華より】  少しだけ補足いたします。  七つの不思議——どれも、あの方のご家族や、学園の関係者の方々の、日頃の振る舞いから生まれた波紋のようなものでございます。  すずさんはご存じありません。小春さんもご存じありません。お二人とも、ただ、不思議を不思議として、誠実に拾い集めていらっしゃるだけです。  ——皆さまの中には、この不思議について「ああ、あの方のことだ」と、お気づきになる方もいらっしゃるかもしれません。けれど、まだ皆さまにご紹介していない方々の影が落ちている不思議もございます。今は、まだ、おわかりいただけなくて構いません。やがてその方々が物語に現れたとき、「あのときの不思議は、この方だったのか」と、もう一度この回を思い出していただけたら——案内人としては、それが何よりの喜びでございます。  最後に、一つだけ。すずさんが取材の途中で、ふと、こんなことに気づかれます。 「この学園って、大きな事故が一度もない」  その場では、誰も深掘りいたしません。すずさんもノートの隅に小さく書き留めて、次の不思議を探しに歩き出します。——ただ、その一行は、消えずに残ります。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 4月26日

    第十話「奇跡の六花」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第10話をお届けいたします。  これまで、家の中の物語を主にご覧いただいてまいりました。第10話では、視点が一歩、外に出ます。学園の中で、あの六人がどのように見られているのか——一人の放送委員の生徒が、今回の物語の語り手となります。  それでは、ご本人にバトンを。 【柚木すず本人より】  は、はじめまして……! 高等部一年、放送委員の柚木すずです!  聖カレイド学園には中等部から通っていて、もう四年目になります。だから——三年前のあの日のことも、しっかり覚えています。当時まだ中学一年生だった私は、本校舎の廊下から見たんです。校門から、六人が並んで歩いてくるところを。  あれは、奇跡でした。  「奇跡の六花」——誰が最初に言い始めたのか、もうわかりません。でも、学園の誰もが、そう呼んでいます。あの日、一度でもあの光景を見た人なら、きっと、わかってくれると思います。  それから、ええと、私は——黒耀のランウェイの「崇拝者(アドーア)」です。あ、その、夏凪先輩のファンクラブの正式名称で……。  ご、ごめんなさい。夏凪先輩のお話を始めると、指先が震えてしまうんです。これは、本当です。  第10話、最後まで聞いていただけたら、本当に、嬉しいです。 【案内人・葛城二華より】  すずさんについて、少しだけ補足いたします。  聖カレイド学園には、いくつかのファンクラブが存在いたします。朝霧家のお嬢さま方それぞれにファンの方々がいらっしゃると、ひとまずはお考えください。すずさんは、その中の一つ——夏凪さんの集団に所属しておられます。  ただし、一つだけ、どうしても立ち上がらないファンクラブがございます。お名前は何度も挙がるのですが、そのたびに、誰かによって、静かに、見事に、立ち消えになっております。誰の話なのかは——ご想像にお任せいたします。  それから、もう一つだけ。第2話で、夏凪さんが街で迷われ、あの方に拾っていただいた場面を覚えていらっしゃいますか。第10話では、その構造が、学園の中で静かに反復されます。誰が、誰を、案内するのか。立場と役割が、ほんの少しだけ、入れ替わります。 【お礼の言葉・美琴二凛より】  第10話まで、読んでくださって——ありがとうございます。  二桁、ですね。プロローグから数えますと、十一回目になります。  応援もフォローも、いただくたびに、本当に嬉しくて。皆さんが、この家のお話を見届けてくださっていること——その一つひとつが、次の一話を書き進めるための、大切な灯りになっています。  第10話は、家の外から、夏凪さんを見る回です。学園の中の、一人の女の子の目を通して。  これからも、よかったら——もう少しだけ、一緒に見届けてもらえたら、嬉しいです。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 4月25日

    第九話「六時三十分は私のもの」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第9話をお届けいたします。  第1話と第5話で、朝と夕方の六花円舞曲をご覧いただきました。六つの花が、朝には騒がしく、夕方には甘く、食卓と玄関を埋め尽くす光景を、覚えていらっしゃいますか。  あの家には、いくつかの「ルール」がございます。  四女の美空さんが主導し、全員の合意を重ねながら、三年をかけて少しずつ形になってきたもの。起床の時刻、お風呂の時間割、冷蔵庫の棚の区分け——誰も困らないように、誰も寂しくないように、細やかに設計された日々の約束事です。  その中で、たった一つだけ、どうしても合意に至らなかった領域がございます。 席順でございます。  六人の姉妹が、誰一人として「隣」を譲りませんでした。曜日ごとのローテーション、五十音順、くじ引き——あらゆる提案が、全員一致で否決されました。結果、その領域だけがルール化されないまま、毎朝の争奪戦として残っているのです。  そして、もう一つ。 六時三十分。これが、朝霧家の分水嶺でございます。それ以前は、あの方が一人でコーヒーを淹れる、静かな時間。この時刻まで、誰もダイニングに足を踏み入れません。——ただし、六時半を一秒でも過ぎれば、そこから先は、何があっても不思議ではございません。  ……個人的な所感を申し上げてもよろしいでしょうか。  深夜二時まで草案を練り上げる方。気配を消して誰より先に座ってしまう方。三階から弾丸のように滑り込んでくる方。正面の席を選んで「ここが一番よく見える」と言い切る方。そして、ここ二週間ずっと隣を取れていないことを、ついに事実ベースで告白してしまう方——。  そのすべてを、キッチンで次女の方が、配膳の順番という名の主導権を静かに握りながら見守っていらっしゃいます。  ルール化できなかったものにこそ、あの家の本音が最も濃く滲み出るのだと、私は考えております。  六時三十分、その一秒の攻防を、どうぞ見届けてくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 4月21日

    第八話「計算の外」 朝霧 月詠(あさぎり つくよ)紹介

    【月詠本人より】  ごきげんよう。朝霧月詠、十五歳。末の妹——六女でございます。  聖カレイド学園の中等部に通っておりますわ。趣味は読書と、お茶を淹れることと、少しだけ——ものごとの流れを考えること、でしょうか。  姉さまたちはそれぞれ素敵な方ばかり。夏凪姉さまの凛々しさ、深雪姉さまの慈愛、氷華姉さまの静けさ、美空姉さまの芯の強さ、陽花さんのまぶしさ。わたくしは末の妹ですから、皆さまの間をそっと歩くだけですわ。  ……ふふ。兄さまのお気に入りの席に、偶然お茶が用意されていることがあるかもしれません。でも、それはただの偶然でございます。策などと——滅相もないことですわ。 あ。  ……いえ、なんでもございません。お茶菓子を落としただけですの。  どうぞ、よしなに。 【案内人・葛城二華より】  六女の月詠さんについて補足いたします。  「深窓の令嬢」という表現がそのまま当てはまる、神秘的でおしとやかな方です。  すべてを見透かすような優雅な微笑みの奥には、緻密に物事を考える知性が潜んでいます。  ご本人は「そっと歩くだけ」とおっしゃいますが、実際にはご家庭内で最も多くの「偶然」を設計なさっている方です。お茶の準備、座席の配置、タイミングの調整——いずれも高い精度で計算されています。  ただし、完遂率にはやや課題がございます。最後の一手で茶葉を間違える、お菓子を落とす、計算通りの時刻に寝落ちする、といった事案が定期的に発生いたします。 策謀と凡ミスの共存。それが月詠さんの魅力であることは、おそらくご本人が最も自覚しておられないことかと存じます。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 4月20日

    第七話「百倍の笑顔」 朝霧 陽花(あさぎり ひまり)紹介

    【陽花本人より】  はじめまして! 朝霧陽花です! 十五歳、五女!  聖カレイド学園の中等部三年で、バトントワリング部のリーダーをやってます! 体を動かすのが大好き! あと、お菓子作りも好きで、つくつく——月詠と一緒に作ることもあるんですよ!  えっと、自己紹介で何を言えばいいかな……。好きなものは、ひなたぼっこと、みんなの笑顔と、お兄——  あっ、えっと、その、家族のことが大好きです! 毎日楽しいです! 朝起きたら関ヶ原だし、帰ってきたら関ヶ原だし、でもそれが楽しいんです!  あっ、あと、力持ちって言われます。自分ではよくわかんないんですけど、お兄ちゃ——家族をぎゅってしたとき、たまに「浮いた」って言われます。……強すぎ、ですか?  よろしくお願いします! えへへ! 【案内人・葛城二華より】  五女の陽花さんについて補足いたします。  「歩くだけで周囲に花が咲く」と形容される、六姉妹で最も直球の明るさを持つ方です。双子の姉にあたり、妹の月詠さんとは対照的な陽性を担っています。  ご本人の自己紹介をお読みになれば、おわかりいただけるかと思いますが——美化の余地がありません。そのまま、すべてが素です。隠す技術をお持ちでないのではなく、隠すという発想そのものがないのだと思われます。  なお「たまに浮いた」は控えめな表現です。ある方が玄関で迎撃を受けた際、両足が完全に地面から離れた事例が複数回確認されています。  天真爛漫という言葉がこれほど正確に当てはまる方を、私は他に存じません。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 4月16日

    第六話「会長の背中」 朝霧 美空(あさぎり みそら)紹介

    【美空本人より】  はじめまして。朝霧美空、十七歳、四女です。聖カレイド学園高等部二年で、生徒会長を務めています。  まず言わせてください。この家には、ルールが必要です。朝の身支度の順番、お風呂の時間割、冷蔵庫の棚の区分け——決めなければ、毎日が大騒ぎになりますから。私が管理しなくて、誰がするんですか。  ……と、堅いことばかり言っているように聞こえるかもしれませんね。でも、本当は、みんなのことが大好きなんです。姉さんたちも、妹たちも。あの騒がしい朝も、取り合いになる夕方も——全部、大切な日常です。  それから、兄さ——いえ、なんでもありません。家族の話はまた今度。  よろしくお願いします。きちんと、最後まで。 【案内人・葛城二華より】  四女の美空さんについて補足いたします。  生徒会長として学園の秩序を支え、ご家庭でも料理以外の家事全般を引き受けていらっしゃる、六姉妹の実務の要です。前生徒会長の西園寺玲さんから直接薫陶を受けた方でもあります。  「きちんとした人」という印象は揺るぎませんが、一つだけ構造的な弱点があります。ある方に「美空のおかげで助かってる」と言われると、それまでの秩序が一瞬で崩壊します。眼鏡の位置を直す回数が急に増え、声が半音上がり、語尾が不安定になります。  ご本人は「ちょろくない」とおっしゃいますが、客観的データはそれを支持していません。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 4月14日

    第五話「六つの花、もう一つの顔」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第5話をお届けいたします。  第1話で、朝の六花円舞曲をご覧いただきました。六つの個性がぶつかり合う食卓を、覚えていらっしゃいますか。  あの家には、もう一つの戦場がございます。夕方——あの方が帰ってくる時間です。  玄関に響く足音を、誰よりも早く聞きつける子。廊下を走るなと叱りながら、自分も小走りになっている子。そして、すべてが偶然だと微笑みながら、お茶の準備を済ませている子。  朝の争奪戦が「おはよう」の物語なら、夕方は「おかえり」の物語です。  同じ家、同じ家族。けれど、迎える側の顔は朝とは少し違います。四女の声は、あの方にだけ、ほんの少し柔らかくなりますし、五女の突撃は朝よりもさらに容赦がありません。六女の策は——今回はどうでしょう。最後までうまくいくかどうか、どうぞ見届けてくださいませ。  ……あの方が玄関を開けた瞬間、この家がどんな顔をするのか。  私も、何度見ても飽きることがありません。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 4月12日

    第四話「ことばの在処」 朝霧 氷華(あさぎり ひょうか)紹介

    【氷華本人より】  ……朝霧氷華。十八歳。三女。  高等部三年。深雪とは双子で、私が妹のほう。  趣味は……静かにしていること。あと、あったかい場所にいること。猫舌だから、熱いものは少し待ってから。寒いのも、実は苦手。……矛盾してるって? よく言われる。  学校ではあんまり喋らない。でも、家では——うん、もう少しだけ喋る。聞いてくれる人がいるから。  好きなものは、毛布と、静かな時間と、……隣にいてくれる、あったかい人。  ……以上。よろしく。 【案内人・葛城二華より】  三女の氷華さんについて補足いたします。  学園では「触れたら切れる氷の刃」と評されるほど寡黙で近寄りがたい方ですが、その儚さは国宝級とも言われています。  ご本人は「もう少しだけ喋る」とおっしゃいましたが、ご家庭ではかなり饒舌です。特定の方の隣に座ると、堰を切ったようにお話しになることがあり、ご家族は「氷華のマシンガントーク」としてよくご存じです。  毛布ごと移動してその方の隣を確保する姿は、家の中では日常の光景です。本人に指摘すると「……偶然」とだけ返されますが、毎日の偶然をどう解釈すべきかは、読者の皆様のご判断にお任せいたします。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 4月10日

    第三話「いつものことです」 朝霧 深雪(あさぎり みゆき)紹介

    【深雪本人より】  はじめまして。朝霧深雪、十八歳。六人姉妹の次女です。  聖カレイド学園の高等部三年に通っており、文芸部で部長を務めています。お料理が好きで、家ではみんなのごはんを作ることが多いです。心を込めて作ったものを「おいしい」と言ってもらえる瞬間が、何より幸せです。  ……ただ、家族の中でも特に大切な方には、少しだけ、盛り付けに力が入ってしまうことがあるかもしれません。特別、というわけではないんですけれど——いえ、特別です。隠しても仕方ありませんね。  お買い物も得意です。旬の食材を最高の状態で、最良のお値段で手に入れること。これも、大切な人のためのお料理には欠かせない技術ですから。  どうぞよろしくお願いします。ふふ。 【案内人・葛城二華より】  次女の深雪さんについて補足いたします。  学園では「現代の聖女」と呼ばれるほどの包容力をお持ちで、言葉を交わすだけで心が洗われるような方です。文芸部のマドンナとして慕われ、後輩の方からは「深雪先輩に相談すると、必ず救われる」という声が絶えません。  ご本人は「少しだけ力が入る」とおっしゃいましたが、実際には、ある方のお皿だけ盛り付けの精度が明らかに異なります。他のご家族の分が八十点だとすれば、その方の分は百二十点です。本人はごく自然にそうなさるので、おそらく無意識なのだと思います。  慈愛の完成形。ただし、その微笑みの奥にある温度を正確に読める人は、多くはありません。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 4月8日

    第二話「長女の矜持」 朝霧 夏凪(あさぎり なぎさ)紹介

    【夏凪本人より】  はじめまして。朝霧夏凪、二十歳。六人姉妹の長女よ。  アルカディア芸術大学に通いながら、モデルのお仕事もしているわ。……ええ、そう。よく「近寄りがたい」って言われるけれど、別に怖い人間じゃないから安心してちょうだい。  長女ですから、妹たちのことはちゃんと見ているつもり。まとめ役? そうね、そういう立場だと思っているわ。家事は……得意な子たちに任せたほうが、全体最適でしょう?  趣味は——強いて言えば、街を歩くこと。新しいお店を見つけるのが好きなの。……たまに、少しだけ遠回りすることもあるけれど、迷っているわけじゃないわ。散歩よ、散歩。  私にとって大切なのは、あの家で過ごす時間。騒がしくて、落ち着かなくて、でも——帰りたくなる場所がある、というのは、きっと幸せなことだと思うの。  よろしくね。 【案内人・葛城二華より】  朝霧家の長女、夏凪さんについて、少しだけ補足いたします。  「近寄りがたいカリスマ」という評判は事実です。大学構内でも振り返らない人はいないほどの存在感をお持ちです。ただ、ご本人が「迷っていない」とおっしゃった点については——方向音痴であることは、ご家族の間では周知の事実です。  長女としてのプライドが非常に高く、妹さんたちの前では常に余裕を崩しません。けれど、ある方の前でだけ、耳の先まで赤くなるのを隠しきれなくなることがあります。ご本人はおそらく気づかれていないと思っていらっしゃいますが、周囲にはよく見えています。  強がりの奥にある不器用な優しさ。それが、夏凪さんの本当の魅力だと、私は考えております。 【お礼の言葉・美琴二凛より】  読んでくださって、ありがとうございます。応援もフォローも、とても励みになります。  この物語には、まだまだ多くの皆さんが関わってきます。次は夏凪さんのお話。強がりの奥にある、あたたかい長女の物語です。  よかったら、もう少しだけ——一緒に見届けてもらえたら、嬉しいな。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 4月7日

    第一話「六つの花、咲き乱れて」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  第一話をお届けいたします。  プロローグの静けさを覚えていらっしゃいますか。あれは本当に、ほんの一瞬のことでした。  朝の六花円舞曲は、六つの個性がぶつかり合う戦場です。長女の矜持、次女の微笑み、三女の沈黙、四女の秩序、五女の突撃、六女の策謀——すべてが一つの食卓に集まります。  そしてその真ん中に、誰よりも穏やかに、誰よりも的確に、六人それぞれを受け止めるあの方がいます。  ……少しだけ、私の個人的な所感を申し上げてもよろしいでしょうか。  この家の朝を見ていると、騒がしいのに、不思議と心が凪ぐのです。  ——では、六つの花が咲き乱れる朝を、どうぞご覧くださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。
  • 4月6日

    プロローグ「静かな朝、騒がしい予感」に添えるコメント

    【案内人・葛城二華より】  はじめまして。葛城二華と申します。この物語の案内役を務めさせていただきます。  これからお届けするのは、ある家族の日常の物語です。  六人の姉妹と、その中心にいる一人の男性。彼らが暮らす家を「六花円舞曲」といいます。  華やかで、騒がしくて、甘くて、少しだけ——危なっかしい。けれど、どこまでも温かい日々。  まずは、静かな朝の風景から始めましょう。この静けさが続くのは、あと数分だけですので。  どうぞ、ごゆっくりお楽しみくださいませ。 ※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。