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メリクリ閑話

※アマツ戦が終了した後に起きていた......かもしれないお話。
皆様、メリークリスマス!! チキンとケーキを貪り喰ってちょっとお高いお酒で乾杯したり、恋人や家族、友達と楽しんだり、ソロを満喫したりしてください。
それでは良い聖夜を!!
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「あー血が美味ェ」

全裸のクソダラしない格好で極上の血を飲むタクミの傍らで、これまた極上の肉を食むナイフ。戦闘終了後の格別な時間を楽しんでいる一人と一振り。

どちらも血に塗れた汚ったない姿だが、それを咎める物は誰も居なかった。そう、ボス部屋は今や彼らだけの聖域だった。

「......ふぉっ!?!?」
「――!!?」

そんな彼らに急に訪れた異変が襲いかかった。
アホほど気を緩めていたタクミはその変化に襲われて情けなく叫び、その声を聞いて触手をビャッと生やして驚くナイフ。その大袈裟な動きで身体に付着していた血が飛び散り、汚い音を奏でた。

「......何で雪降ってきてんねん」

先程まで大嵐だった部屋の中、今は雨は止み何の天候変化も無かった。なのに雪が降ってきて、全裸ボディが雪に触れればあの驚き様も仕方ないかもしれない。

「あ、なんかゴメンね......冷たくて驚いただけだから、うん。食事続けていいよ」

タクミが叫んでから厳戒態勢だったナイフを宥めた。本当に悪い事をしたと一人凹むタクミ。大人しく予備の服を着てから吸血を再開する。


――シャンシャンシャンシャンシャンシャン


「今度は何だよ畜生ッ!!」

ある時期にだけよく流れてくる音が不意に鳴り出し、至高の時間を邪魔された事でややキレるタクミ。食事を再開していたナイフの雰囲気も、また中断を余儀なくされて剣呑になっている。

「――――ッ!? ナイフ君、最大限の警戒を!!」

上空の空間が揺らいだ事を確認し、ダラけモードからスイッチを瞬時に切り替えて戦闘モードになるタクミとナイフ。

空間の揺らぎはどんどん変化を続け、遂にゲートと表現していいモノが出来上がった。そこからはさっきまで戦っていたアマツ野郎なんかと比較するのも烏滸がましいプレッシャーが垂れ流されてきた。

ババアと同じ。勝てない。戦闘にすらならない。

即座にそう悟るくらい、圧倒的なモノが顕現しようとしていた。

「......はぁ......はぁ......」

心を落ち着けるようにナイフを拾い、握り締める。押し潰されるようなプレッシャーに、情けなくも物理的に潰して欲しいと願いたくなったタクミ。

逃げたくても身体は動かない。あ、出てきた......コレは無理だ......ヤバい......死んだ......


鹿? トナカイ? 何かわからない......こんなん、勝てる訳がねぇよ。

耐えきれずに目を閉じ、来る死に備えた――

「わふっ」

「......は?」

どうにもならないと覚悟がキマったタクミだったが、耳に届いた予想だにしない可愛い声に情けない声をあげた。

「きゃんっ」

目を開けて声の方向を見ると、トナカイ風のコスプレをした鹿っぽい化け物が牽くソリにチョコンと乗っているサンタコスをしたハスキーの子犬という、脳が処理を放棄したくなる映像がタクミに齎された。

「............」

見た目極悪な鹿の化け物。警戒するなら真っ先にコイツだろう。
だが、確実にソリに乗った子犬の方がヤバい気配を放っていた。

「......アマツの血はキマるタイプだったか。あはは」

こうなりゃとことんキマれ!! と、タクミは再び血を吸い始める。現実逃避、万歳。

「きゃんっ」

「可愛いわんこだなー......ハハッ」

プレゼント袋っぽいソリに積まれた袋に顔を突っ込んでガサゴソしているわんこを見て和む。振られた尻尾とぷりぷりのケツを見て、死を強烈に押し付けられながらも笑えてきてしまう。

「わふん」

目的のモノが見つかったのか、袋から一つの小箱を咥えたわんこがタクミの元へソレを運んできた。
見た目は小動物、気配はババアかそれ以上。タクミは気が気がじゃない。

「きゃん」

「......くれるの?」

ドヤ顔をして頷いたわんこを見て、漸く気を緩めた。どうやら俺を殺す気じゃない......と、理解出来たから。

『んー、なんて言うんだっけ? あ! そうだ! メリークリスマス!! で合ってたよね? それじゃーね!!』

脳に直接届いた幼い声。
なんか知らないけど俺はクリスマスプレゼントを貰えたようだ。

「......ハハハ」

幻の様に目の前から消えたトナカイと犬。
強烈な死の気配が霧散して漸く動く事を思い出し、その場に力無く腰を落とした。ナイフも取り落とし、そのまま地面に転がった。動く気配が無いからナイフもヤバかったんだなぁと乾いた笑いを零した。

「......ふぅ、何だコレ......んー」

貰い物だからと丁寧に震える手でラッピングされた小箱を開けていった。

「......〈あんピノ玉〉って何やねん。鑑定は名前しか教えてくれねぇからわかんねぇよ......ん? 下にもなんか......ビーフジャーキーかな? あ、何これゲロ美味ッ......ナイフ君これ食いな」

謎のプレゼントを貰い、ビーフジャーキーを齧る。考えるのはもう止めている。
馬鹿みたいに美味かったジャーキーはナイフを再起動させ、一人と一振りは粉雪が振る中、ジャーキー片手にクリスマスを祝った。

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