ずいぶんと前に書いて、書いただけで満足してどこにも投稿していなかった短編がありましてね。つまり第1章「金色の砂漠」のことなんですが、当時は単に「夢の国の外側」とだけしかタイトルをつけていませんでした。それで、メモ帳の整理がてら何の気なしにそれを読み返してみたら、どこからともなく聞こえてきたんです。
「夢の国の人口制限は、地球人口の半分だって知ってるか?」
そしたら、私の内側から
「突如、若い男の声が聞こえてきた。」
なんてナレーションまで聞こえてきちゃって。
驚く暇もなく次々とそのナレーションが状況説明やら背景描写やら続けるもんだから、私は慌ててメモ帳に書き留めたんです。
それが、第2章「黒色の艶髪」の始まりでした。
「黒色の艶髪」を書き終わった頃にはかなり満足していて、自分でいうのもなんですが割と綺麗にまとまったと思います。
ところが、ものを書くならやはりトリロジーだろうということで、どうにかして第3章を書こうということになりました。
例の台詞「夢の国の人口制限は、地球人口の半分だって知ってるか?」とどこへともなく問いかけて、その返事を待っていたのですが、待てども待てども何も聞こえてこない。これはしまったと私は思いました。
第1章と第2章は、聞こえてきた声を千切れないようにそっと手繰り寄せて文字に起こしたものでした。しかし、私が書こうとしている第3章は、聞こえるどころか、こちらから声を発していたわけです。それじゃ書けるものも書けない。こちらから呼びかけるならば相応のものを用意しないといけない。そう気づいたわけです。
それまで、次にあの青年に出会うのはどんな人間だろうかと躍起になって考えていたのですが、それは違う。完結編としての第3章なんだからもっとやりたいようにやろうと。つまり、どうせ終わるんだから壊しちゃおうぜと思ったわけです。積み木は崩すときが一番楽しいですからね。
そうして出来たのが、青年本人が語り部となる第3章「白色の月光」です。
サブタイに関しては、本編中に色の描写多いから色統一が綺麗だなということでこうなりました。
この作品が書かれた経緯はこんなところです。
さて、ようやく本題に入れます。
先に書いたように、第1章は元々完結かつ独立した短編として書かれて、そのあとに2,3と続いたので、読む人が読めば話の構造がそのようになっていることに気づかれたかと思います。
これは意図的なものですが、果たしてその意図をあえて説明するならば、「私がそういうのが好きだから」の一言に尽きます。
第1章を書いてから第2章と第3章を書くまでの長い時間のあいだに、私は「アダプテーション」と「インセプション」という映画を観ました。つまりそういうことです。