はぁ……まだ受け止められねえ。俺はどうもあと一年、もって二年生きれるらしい。らしいってのは、医者がそう言ったからそうとしか言えない。
「まだ二十なったばっかだぞ俺。」
そう呟きながら安静に、と言われた病室で空を眺める。平凡に生きて卒業して就職して、良いぐらいの歳で結婚して死ぬのかなんて。
普通の人生ってレールから外れて、しかもその道は長くて二年しかないらしい。どうすんのよこれ、やりたい事多すぎんだが。
「調子どうだよ。」
「なんか悪いな、毎日来てもらって。」
「つっても親御さん遠いんだし、これくらい任せとけって。」
付き合いの長い友人が差し入れと共に、静かな病室を賑やかにしてくれる。
「……お前には言っとくよ。」
「お!?治るとか退院とか!?」
「退院はできるらしい。」
これ以上処置のしようがない、少ない時間動ける時間は外で使いたい俺の意思だ。だからもう家には帰れるんだ。
「良かったじゃねえか!大学の奴らも心配して」
「2年だ。」
「……は?」
「俺はあと一年、もって二年で死ぬ。」
「……なあ、冗談だとしたら笑えねえぞ。」
「この顔で、冗談言うか?」
俺なりに真剣な顔って奴だ。あいつも察したのか事実だと分かり、下向いて暗い顔してやがる。
「それってどうにも」
「ならねえ。治すとかじゃなくて、遅らせるのが精一杯なんだとさ。」
「でも長くて2年て、卒業できるかどうかってことか!?」
「そもそも学校行くかも迷ってる。」
「ど、どういうことだよ。」
「だってさ、あと2年あるかないかだぜ?行ってみたい場所とかやりたいこととか、楽しいことして死にてえじゃん。」
「……そうだな。」
「だから悪いけど、俺は死んだことにでもしてくれ。学校側にもそれで説明してくれないか、試してみるが。」
「俺がポロっと言っちまうかもよ?」
「だとしてもすぐ死ぬんだ。」
「……あの子には何て言うんだ。いい感じだったじゃねえか、2年友達やってお前も好きだって。」
「その恋もすぐに燃え尽きる。たった2年の思い出で、あの子を縛るような男にゃなりたくねえよ。」
「だが知る事は許してくれよ。お前らの側にいた俺は、とても嘘つけねえ。」
「好きにしてくれ。」
長いような短いような。俺が終わるために始める物語がこれから始まる。
未筆の理由
こういった病気への知識が薄いため