【お知らせ】23日にカクヨムの特集「裏切られた人々」4選(カクヨム公式レビュワー柿崎憲 様)にhttps://kakuyomu.jp/features/822139843752366647
「【完結】それでは、ひとつだけ頂戴いたします」を、選んでいただきました!!
以前、「読みだしたら止まらない!24年度上半期 読書継続率の高い作品」にhttps://kakuyomu.jp/features/16818093088515327230#selectedWorkReview-16818093076313245226
「【完結】皆様、答え合わせをいたしましょう」を選んでもらっていたので(goodレビュワー櫻井金貨 様https://kakuyomu.jp/users/sakuraikinka)、こんなことあるんだと正直驚きです。ありがとうございました。
【お礼】さて、「これをもちまして、終了とさせていただきます」を最後までお読みいただきありがとうございました。皆様のおかげで、日間やら何やらの上位に食い込ませていただき叫び出したいほど嬉しい反面、投稿話数のせいか? と、最後の方、日和ってしまい、小出しにしつつの完結となりました。
★、♡、フォロー等励みになりました。ありがとうございます。また、@magis様よりレビューもいただきました。人の精神状態がよくわかるといただいたので、最後、大公の精神状態をお楽しみいただきたいと思います。
長くなりましたが、★、♡、フォロー、レビューなどをこれまでくださった、そしてこれからくださるであろう笑、皆々様へのお礼としてSSを書きましたので是非お読みください。結婚式の前日。大公(お祖父様)sideでの、SSです。
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ラザフォードは、いつものように酒を抱えて現れた。まったく、今日は早く寝ようと思っていたのに。
杯を重ねるうち、話は自然とルシアーナの幼い頃の思い出へと移っていく。あの頃はよく泣いた、よく転んだ。そんな他愛もない話なのに、今夜はひどく胸に染みた。
「それにしても……皆、知っていたとはな」
ふと、思い出す。ルシアーナが王配としてユリウスを望んでいることを、内々に伝えたあの日のことを。
もっと驚かれると思っていた。
だが返ってきたのは、予想外に揃った反応だった。
――やはりな。
そう言わんばかりの、納得した顔。
「いや、分からぬわけがないだろう、大公よ」
ぽつりとこぼした私の言葉に、ラザフォードは不思議そうな顔もせずそう答えた。
「おぬしとて、前に言っていただろう。“ユリウスはどうだ、ルシアーナも案外そのつもりで連れてきたのではないか?”と。あのときは、まだ分かっていなかったのではないか?」
「ははは、耳が痛いな。いや、分かっていた。あれはな、大公の反応が見たかっただけだ。つい、な」
ラザフォードは杯を傾け、続ける。
「だが考えてもみろ。マルセルという、優秀な男がすでにいる。それを承知の上で、あえてユリウスを連れてきた。これから巻き込むことになるユリウスの家族のことまで、分かっていながらだぞ? ……あの冷静なルシアーナが、だ。その時点で、もう答えは出ていただろう」
言われて、ようやく腑に落ちた。
無駄を嫌い、決断を先延ばしにしないあの子が取る行動など、最初から一つしかなかったのだ。
ラザフォードは笑いながら、さらに言葉を重ねる。
「それにしても、さすがというか。ルシアーナが、あまりに淡々と告げ、淡々と話を進めようとしたあのときは、正直、崩れ落ちそうになった」
「確かにな。皆の視線が痛かった」
――これで終わり?
――嘘だろう?
そんな戸惑いが、部屋中を駆け巡ったのを覚えている。
皆の視線が痛くて、休憩を促したことも。
「まったくだ。照れているルシアーナを初めて見られると、少しは期待していたのだがな」
「まあ……戻ってきたあとの顔は、少女のようだったろう。それで皆、満足したのではないか?」
結局、その後も残った案件は淡々と片付けていったのだが。
しばらく沈黙が落ちたあと、ふと、胸の奥に引っかかっていた名前が浮かんだ。
「……マルセルには、悪いことをした」
「マルセル? なぜ、今マルセルの話が出る。ああ、あの若さで宰相になったことか?」
――ラザフォードは、知らなかったのか。
「違う。マルセルは……ルシアーナを想っていただろう? ユリウスも、そのことを気にしていた」
王配が決まった後、ユリウスと二人で酒を酌み交わした夜があった。あまり細かいことを教えてくれないルシアーナの“あの国”での暮らしも詳細に聞けた。そして、ユリウスがどれほど彼女を想い続けてきたか。
同時に、マルセルに対して抱いていた申し訳なさも。私とて同じ。
「は? マルセルが? ルシアーナを?」
「……やれやれ。ラザフォード、おぬしも人のことは言えんではないか」
マルセルは幼い頃、父に頼み込み、この地へ移り住んだ。たとえルシアーナに婚約者がいようとも、せめて傍にいたかったのだろう。
だがその願いは叶えられず、それでも国のために宰相として尽くせと命じている。
――あまりにも酷な役回りだ。
「……大公よ。本気か?」
「何がだ?」
「ああ……本気なのか。皆、知っていると思っていたがーー」
ラザフォードは、少し困ったように言った。
「あー、マルセルは、その……アンヌのことを、幼い頃から慕っている」
「アンヌ?」
思わず問い返す。何を言っているのだ。……ん? 皆? 幼い頃?
呆れたような顔で、ラザフォードはため息をついた。
「い、いやでも。ほら、あの日は、エミリアがマルセルを部屋から出しただろう。あれは王配になれなかった悲しみを整理させるため、中庭にいるルシアーナたちを見せないため、ではなかった……のか?」
「……いや、アンヌも一緒に外に出したではないか。それに、アンヌもマルセルを慕っている」
「なんと! アンヌはマルセルが妙な考えを起こさぬよう、監視につけたのかと……まさか、それも私以外、皆知っていたのか?」
大きく頷き、ラザフォードはまた深く息をつく。
私もまた、深く息を吐いた。
「……どうやら私は、肝心なところで鈍いらしい。まずい! ラザフォード。ユリウスが勘違いをしているやもしれない。説明を――」
「やめておけ。明日だぞ、結婚式。余計な波風を立てるものではない」
そう言って、ラザフォードは微笑む。
「それに、ルシアーナが何とかするさ。いや、もう、しているかもしれん」
確かに最近、二人の距離は自然と近い。
マルセルの前であろうと構わず、ユリウスの視線はルシアーナを追い、彼女が言葉を発すれば即座に耳を傾け、少しでも疲れた素振りを見せれば、さりげなく距離を詰める。
孫娘を想われるのは、喜ばしい。が、保護者としては、少々、気恥ずかしいと感じていた。
そうだな、きっと誤解は解けたのだろう。……やはり私だけが、最後まで知らなかった、ということか。
「ちなみにだが。マルセルはアンヌと婚約するらしい。エミリアが、ずいぶん喜んでいた」
「……いつの話だ。だから、なぜ私だけ知らない。それもまた、皆知っているのか? 仲間外れか?」
「ははは。まあ、いいではないか。皆、落ち着くところに落ち着いたということだ」
ラザフォードは杯を掲げる。
「余計なことを考えず、貴殿は、明日の結婚式で泣く心づもりだけしておればよい」
「……泣かん」
「泣かないのか? 私は泣くつもりだぞ。きっと皆そうだ。仲間外れは嫌だろう? 一緒に泣こうじゃないか」
「ま、まあ、そういうことなら」
笑いながら、酒を重ねる。
そうだ。今夜はたくさん飲もう。
そして明日は、飲んだ分、皆でたくさん泣くのだ。
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ありがとうございましたm(__)m