物語のテーマについて
主人公は東京で誰にも見られず、誰にも呼ばれず、「存在しているのに、存在していない」状態だったのです。
だからこそ、「上野さんですね」 という一言が、彼をこの世界に縛りつけます。
人はときに、正しさよりも“必要とされる感覚”を優先してしまう。
その弱さと切実さを描こうと思いました。
倫理が崩れる瞬間の“静けさ”、叫び声でも、暴力でもなく、
静かに壊れていく倫理 。
倫理は大きな音を立てて崩れない。気づいたときには、もう戻れない場所にいるのかもしれません。
罪を背負ったまま愛を選ぶという、倫理では説明できない選択。
この物語は、「正しいかどうか」ではなく「それでも選んでしまう心」を描いています。