たくさん読んでいただき、ありがとうございます。
少しだけ、「灰の大家」で書きたいことについて。
この作品は、荒廃世界で旧世界AIを拾った男が成り上がる話ですが、書きたい中心は「すごい技術で一気に世界を救うこと」ではありません。(そういう小説もとても好きですが)
屋根を直す。雨漏りを止める。帳面をつける。払える家賃を決める。入居者が入り、少しだけ人の流れが変わる。
壊れた街を、そういう地味な手順で明るくしていく話にしたいと思っています。
ただ、書き進めるうちに気づいたのは、不動産業というのは「直す」だけでは終わらないということです。
直した部屋に値段をつける時、その値段は、街の制度と、誰かの帳面と、誰かの裁量と、いつも擦り合わせて決まります。
現実の不動産経営でも、利回りそのものより、その枠組みの中で何を選び、何を選ばないかの方が、ずっと長く効きます。
本作のハヤセも、その枠組みの中で、毎話少しずつ判断を積み上げているつもりです。
作者自身も兼業大家として、地方の中古戸建てをDIYで直して自宅にしたり、全空だった古い20室超のアパートを1つずつ埋めて満室にしたりする経験をしてきました。
もちろん現実は、作中ほど都合よくはいきません。物件探しも、融資も、指値も、修繕も、もっと遅く、もっと泥臭く、数字も薄いです。月利20%なんてありません。
ただ、その泥臭さの中にある
「手を動かした分だけ、少しだけ場所がよくなる」
「自分が直した空き家に、生活の灯が点る」
「チームとレバレッジの力で、1人では到達できない所へ行く」
感覚は、できるだけ作品に入れたいと思っています。
旧世界技術は魔法ではなく、残された人間の手と判断を少しだけ遠くまで届かせる道具として。
家は利回りだけでなく、誰かが明日も寝られる場所として。
そんな方向で、引き続き書いていきます。