はじめまして。今度、長編小説として書き進めていく『毛むくじゃらこ式・賢者のレシピ』。その主人公を、本文をお届けする前に少しだけ紹介させてください。
名前は毛むくじゃらこ。2500万歳の暗黒魔導師で、夜だけあらわれるパン屋の店主であり、時空を越えて荷物をとどける宅配員でもあります。……と言っても、本人はいたって普通に、眠かったりお腹がすいたりする子。
今夜も、配達中です
時空をこえて、今夜も一件
毛むくじゃらこのもうひとつの顔は「時空宅配員」。時代も場所も飛びこえて、荷物をとどけます。しっぽを揺らしながら夜道を歩くその足取りは、心なしか弾んで見えます。
「お届け物です、受け取って!」
「いかない……」の夜
レシピの最後の一行が、なかなか決まらない
なんでもうまくいきそうに見えて、実はそうでもないのがこの子。ラベンダーもカモミールも量ったのに、最後の「やすらぎ……?」のところだけ、どうしても埋まりません。丸めた紙には、彼女の字で「いかない……」。
「今日は開けたくない気分。でも開けちゃった。えらいね、わたし」
そのまま、寝ちゃいました
気づけば作業台に、ぐっすり
がんばりすぎて、そのまま突っ伏して眠ってしまう夜もあります。壁に貼ってあるのは「がんばってるよ えらいよ けむくじゃらこ」の一言。誰かに言われたのではなく、自分で自分に貼った言葉です。
「あのね、寝てないの。……いや、寝たわ。三日」
朝、扉をあけたら
手作りクッキーのかごを抱えて
手作りクッキーのかごを抱えて、今日もお店の前に立ちます。受け取った子がにっこり笑うと、毛むくじゃらこの顔もつられてほどけます。看板には「たべて えがおに なってね」。
「はい、どうぞ。……あ、笑った。よかった」
みんなのために、がんばるよ
焼くだけじゃなくて、包んで、届けて
焼くだけでは終わりません。包んで、名前を書いて、届け先を確かめて……。今日は動物のお客さんたちも手伝いに来てくれました。汗をぬぐいながら、やることリストにひとつずつチェックを入れていきます。
「一人ぶんじゃ、笑顔って増えないんだよね。……だからみんなで」
乙女心も、忘れない
2500万歳でも、気になることは気になる
「やせる! げんき!」の立て看板の横を、汗だくで一周。1kmの表示に「えがおまで、あと少し」と書き添えたのは、たぶん本人です。
「リボン曲がってない? ……そこ、笑うとこじゃないんだけど」
そんな彼女が主人公です
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。『毛むくじゃらこ式・賢者のレシピ』は、こんな毎日を送る2500万歳の魔導師が、初めて「自分宛ての荷物」を受け取るまでの物語です。
かわいくて、ちょっと天然で、失敗もするし、疲れて眠ってしまうこともある。それでも誰かの痛みには、ちゃんと本気で向き合う――そんな彼女が焼くパンを、いつかみなさんにも届けられたらと思っています。
「さびしさは、ひとりぶんで焼かないこと」
更新は、もう少しだけお時間をください。気長に待っていただけたら嬉しいです。