ほけぇ。としながら6話目を書いているのですが、ふとApex Legendsをしながらこういう風な作品に盗賊の英雄を進めていこうと思っていたんだなぁ。と改稿前のお話です。
くど過ぎるかなー。と途中から方向を転換した次第。
↓は改稿前の盗賊の英雄の1戦闘シーンでした。
10万字程度書いて結局全部ボツにした奴です。
おかげさまで3話から全部書き直してどちらかというとのんびりした話になってます。途中からダークファンタジーに戻しつつも今の雰囲気を生かしていきたいなぁと思っております。よければ使われなかった盗賊の英雄の過去の文体もお楽しみください。
最後はネタです。性格がにじみ出てますね
↓↓
抜群の透明度と輝く白い砂で美しいユーフォン河は血で赤くどろりと濁り見る影はなく。色彩豊かな背の高い草花は踏みにじられ無残にも潰され、あらゆる方向に倒れ、千切れている。変わりに花を彩るのは赤黒い水。その周りには男の仲間達が先程の草花のように千切れ、曲がり、無造作に転がっていた。
何も動かない死の世界の中心にいたのは一人の女性。
漆のように漆黒の長い黒髪。精巧に作られた洋風の人形を思わせる端正な顔。すらりと伸びた均整の取れた柔肌。白磁のように透き通る白い肌。蝶を思わせる作りの濡れ羽色の羽衣。天女を思わせるその女性だが、衣服の丈が異常に短く、白い柔肌が前面にこれでもかと押し出され天女にしては妖艶すぎる。
男が言葉を失うのも無理はなかった。
だがしかしこの場においては異様だ。
異様というより、異常といった方が正しいのかもしれない。
全体を舐めるように確かめているというのに、相変わらず彼女の表情は変わらず優麗で美しく。微笑みすら浮かべるその様子は、やはりこの死で満ち溢れる戦場を弔いに来た天女なのだと納得してしまいそうになる。
というより納得してしまいたかった。
彼女の右手にぶらりと下げられている、白い刃から赤い血が垂れていなければ。風に揺られるたびに黒い衣服の裏側がみえ白く透き通る衣服だと気づかなければ。
――あれは恐らく血で染まって黒くなっている。
ならば、この地獄を作り上げたのも十中八九。
彼女だ。
◇◆◇
あのような地獄を生み出したのが彼女だと、剣を交えてハッキリと分かった。無残に殺された仲間の為にも油断は絶対するわけにはいかない。体力も力も、技量でさえも負けてはいない。
――それなのに、数分立っても男は攻め切れない。憎き敵を切り伏せる事が出来ずにいる。
「くそッ!」
戦いの最中だというのに、幾度も白磁のように透明感のある白い肌に目が奪われ、剣に精彩を欠いてしまう。その点彼女は元々面積の少ない服を着慣れているのか、それも策略の内なのか、まったくこちらを気にする様子はない。それどころか剣戟を重ねるごとに確実に鋭さが増し、気づけば常に後手に回らされていた。
――このまま斬り合っては確実に負ける。
焦りから距離を離そうと右足に力を入れたその刹那。
突然足元から鋭く立ち上がる剣閃が鎧を切り裂き、喉元を襲ってきた。
「――~~ッ!!」
反応よりも反射の域で身をよじらせ命からがら回避をするが、息を付く間もなく鋭い痛みが全身に走り、剣を躱し切れなかったのだと否応なしに思い知らされた。
男はすぐさまぐっと無様に仰け反った姿勢を無理に戻し、無傷だと言わんばかりに強く刀を構え相手を睨みつける。だが表情とは裏腹に、体には贔屓目に見ても浅くはない傷が腰から胸にかけて残されており、流れ出る血の量は尋常ではない。
恐らく持って数分。
男は諦めたように不敵に笑うと、もう一度剣を強く握り直し女を睨みつけた。
(次だ、次の一撃で終わらせる……!)
命の火はもうない、ならば――。
呼吸を整え後の先を狙う。男はこの一撃に全て懸け、最後の一太刀をただ只管に待ち続けた。
狙うは相打ち。
どの様な一太刀だろうと体で受け、渾身の一撃で斬り潰す。腐っても剣豪と呼ばれた男だ。仲間のためにも無様に死ぬことは己自信が許せるわけがない。
許してなるものか。
(――必ず殺す)
気を滾らせ彼女を待ちうける男。
それに反し、剣呑な空気を掻き消し、穏やかな雰囲気を纏い始める女。
相反する二人だが、男が放つ獅子の気配は増すばかりだ。
そんな男の覚悟に何かを感じたのか、彼女はにこりと微笑み、凛と不思議な音を奏でる鞘に白い刃を収めると、艶やかな黒髪を魅せつける様にかきあげ優しい声でこういった。
「ニンゲン。ココハゴブリンノスミカダ。オトナシクカエレ」
そう。彼女はゴブリンだった。