「如月さんって、お茶好きなの?」
夕焼けに染まりつつある空き教室で、奏多は紬が飲む緑茶を見て質問する。
「うん…苦いけど、ほんのり…甘いのが、好き、かな…」
「佐伯くんは、コーヒー……好きなの?」
奏多が買ったパックのコーヒー牛乳を見て言った。
「そうだね、こういう甘いのも好きだけど、ブラックでも良く飲むよ」
その答えに、紬は少しだけ驚く。
「ブラックコーヒー、飲めるの…?……大人、だね……」
その反応に、奏多は少しだけ照れくさそうに答える。
「ウチで割と皆飲んでたから、かな?」
「……私には、無理そう」
「まぁ、慣れないとね。俺もエスプレッソまで行くと流石に飲めないよ」
エスプレッソ、と聞いた紬が、どの程度を想像したのだろうか。とても苦そうな顔をした。
想像の味を押し流すためだろう、お茶を一口飲む。
その表情を見た奏多は、話題を変えることにした。
「そういえば、知ってる?」
「和菓子とコーヒーって意外と合うんだって」
その言葉に、紬はキョトンとする。
「合うの…?」
「和菓子と、コーヒー…」
その言葉に手応えを感じた奏多は言葉を続ける。
「これが不思議でね。なんでだろう」
「不思議…だね…」
「今度持ってこようか、和菓子」
「……え?」
紬は再び、キョトンとした顔をする。
奏多は、そんな紬の表情が意外と気に入り始めていた。
「いや、お茶請けにどうかなって」
「でも、和菓子って高いんじゃ…」
「安いものもあるよ、お団子とか手軽なのもあるし」
その言葉を聞いて、紬は少しだけ考え、
「……そっか」
「それなら……私も、試してみたい…かも…」
そう、紬らしく控えめに答えた。
その言葉に奏多は喜ぶ。
「分かった。それじゃ、次回は和菓子、お茶、コーヒーのテイスティング会だね」
「うん……楽しみ……」
紬も、控えめの笑みで答えた。
奏多と紬の空き教室での時間は、こうして、ゆっくりと流れるように過ぎていった。