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暮地 織人

  • @orito_kurechi
  • 2026年3月9日に登録
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orito_kurechi
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  • 3日前

    透明なキミが彩づく時 第5.5話:

    「如月さんって、お茶好きなの?」 夕焼けに染まりつつある空き教室で、奏多は紬が飲む緑茶を見て質問する。 「うん…苦いけど、ほんのり…甘いのが、好き、かな…」 「佐伯くんは、コーヒー……好きなの?」 奏多が買ったパックのコーヒー牛乳を見て言った。 「そうだね、こういう甘いのも好きだけど、ブラックでも良く飲むよ」 その答えに、紬は少しだけ驚く。 「ブラックコーヒー、飲めるの…?……大人、だね……」 その反応に、奏多は少しだけ照れくさそうに答える。 「ウチで割と皆飲んでたから、かな?」 「……私には、無理そう」 「まぁ、慣れないとね。俺もエスプレッソまで行くと流石に飲めないよ」 エスプレッソ、と聞いた紬が、どの程度を想像したのだろうか。とても苦そうな顔をした。 想像の味を押し流すためだろう、お茶を一口飲む。 その表情を見た奏多は、話題を変えることにした。 「そういえば、知ってる?」 「和菓子とコーヒーって意外と合うんだって」 その言葉に、紬はキョトンとする。 「合うの…?」 「和菓子と、コーヒー…」 その言葉に手応えを感じた奏多は言葉を続ける。 「これが不思議でね。なんでだろう」 「不思議…だね…」 「今度持ってこようか、和菓子」 「……え?」 紬は再び、キョトンとした顔をする。 奏多は、そんな紬の表情が意外と気に入り始めていた。 「いや、お茶請けにどうかなって」 「でも、和菓子って高いんじゃ…」 「安いものもあるよ、お団子とか手軽なのもあるし」 その言葉を聞いて、紬は少しだけ考え、 「……そっか」 「それなら……私も、試してみたい…かも…」 そう、紬らしく控えめに答えた。 その言葉に奏多は喜ぶ。 「分かった。それじゃ、次回は和菓子、お茶、コーヒーのテイスティング会だね」 「うん……楽しみ……」 紬も、控えめの笑みで答えた。 奏多と紬の空き教室での時間は、こうして、ゆっくりと流れるように過ぎていった。
  • 4月4日

    透明なキミが彩づく時 第4.5話:

    「ありゃ?奏多もう帰ったのか?」 奏多が紬と共に教室を出ていった直後、陽介は普段奏多と共につるんでいるクラスメイト、田中、鈴木、秋山に話しかける。 「そういえば気付いたらいなくなってたな」 「アイツにしては珍しい…」 田中と鈴木が頭を傾げる。 「まぁ、アイツの事だからなんかしら理由があるんだろ?明日聞けばいいだろうよ」 秋山が言うが、それで納得しないのが陽介だった。 「いーや、アイツが隠し事するときは何かしらデカい話がある。絶対に面白い話に違いない」 陽介が鼻息荒く宣言する。 「出た、パパラッチ志望」 「ジャーナリスト志望だっ!」 田中の言葉に即座に反論する陽介。 「あんま詮索し過ぎるなよ?無二の親友だろ、お前ら」 「俺ら高校1年だぞ?浮いた話の一つくらいあってもおかしくないって」 「まぁそうだよな。そうなんだけど……」 田中、鈴木、秋山の語尾が小さくなっていく。 真面目に部活動をしていても女気のなさ故に、そういった出会いが全くないのが三人の悩みの種だった。 「あっはっは!お前らには関係ない話だな!」 「「「 お 前 が 言 う な !」」」 三人が揃って、陽介にツッコミを入れる。 年末が見え始めた11月の半ば。 クリスマスも間近に感じられ始めた中で、4人の男子の青春は良くも悪くも平穏無事に過ぎていくのであった。
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  • 4月2日

    透明なキミが彩づく時 第3.5話:

    奏多と書店で初めて会話を交わしたその日の夜、興奮冷めやらぬまま眠りについた紬は、夢を見た。 自分は正方形のテーブル席に座っている。 椅子はフカフカのソファーのようなもの。 テーブルの上には控えめなポップと呼び出しボタン。 どこかのファミレスのようだった。 「………」 横を見ると、長テーブルに何人かの男女が楽しそうに過ごしている。 何人かは見覚えがあるクラスメイト達だった。 騒がしいはずなのに、彼らの声も、喧噪も、全く聞こえない。 ――あぁ、これは夢だ。 紬は理解した。 そもそも、自分がこういった集まりに参加すること自体が非現実的だ。 そう思いながら、目の前にいつの間にかあった温かいお茶を飲む。 自分の好みの味だった。 そして、対面する席に人影。 佐伯 奏多。 彼は座って紬を静かに見ている。 ――ほら、やっぱり夢だ。 あまりにも、都合が良すぎる。 意識ではそう思いながら、しかし身体は彼との会話を始める。 彼も、何かを話しているが、会話が聞こえてこない。 ただ、自分が彼との会話で笑っているのだけは感じられた。 誰かとの会話で笑うなど、最近では家族以外ではほとんどない。 しかし、何か言った自分の言葉に、楽しそうに返す奏多を見るのは、悪くはない。 むしろ、 ――こういう風に彼と話ができたらな。 紬は、率直にそう思った。 そうしていると、次第に視界が白く霞んでいく。 目覚めの時間なのだろう、 紬はなんとなく察した。 紬は、目覚めた後まで夢を覚えていることはほとんどない。 この夢も、忘れてしまうだろう。 ひと時でも、夢の中だったとしてもいい。 誰かと一緒に笑いあえたという、この情景を覚えていたい。 紬は、強くそう願った。 *** まどろみの中で、紬は目を覚ました。 身体を起こす。 11月の朝の冷たい空気が容赦なく、紬の身体を刺す。 のそのそとベッドを出て、窓を覆ったカーテンを開く。 起床時のいつもの流れ。 窓から朝日が部屋を明るく照らす。 ベッドに戻り、枕もとのスマホを手に取る。 画面を付けると、寝る前まで開いていたチャットアプリの画面がそのまま表示された。 画面上の『佐伯 奏多』の名前。 それを見て、何かを思い出しそうになるが、上手く思い出せない。 ただ、 ――今日も、話せるといいな。 窓越しに、青く晴れた空を見ながら、紬はそう思った。
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