黒猫に気付いた真宙はしゃがんでじっくりと観察をし始める。
「あ、あんまりジロジロ見るな!」
「ここは猫が喋れる世界なの?」
「違う、逆だ。生き物はみんな喋ってる。俺達の言葉が分かる世界って事だ。お前、ぷりんの相棒なんだろ?」
「相棒……かなぁ?」
流暢に喋る黒猫に困惑しながらも、真宙はぷりんについて考える。魔法陣から呼び出したのは彼女だけれど、自分の意志でそうした訳じゃない。あの不思議な本に導かれて――何かに操られた結果と言えなくもない。けれど、同居して暮らしていく内に段々ぷりんのいる生活が心地良くなってきているのも事実だった。だからこそ、もっと良く知ろうとして今こんな事になっているのだから。
考えがまとまったところで返事を返そうとすると、黒猫は突然立ち上がり、どこかに向かって歩き始めた。
「ついてこい。お前の疑問に答えてやる」
「ちょ、待って」
話の流れからついていかざるを得なくなった真宙は、ワンテンポ遅れて黒猫の後を歩き始める。黒猫もまた、たまに振り返ってははぐれていないかの確認をしている。その事から言っても、何らかの使命感を持って真宙の前に現れたのは間違いないようだ。
知らない街で黒猫に道案内されながら、真宙は情報収集を試みる。
「あなたはぷりんの関係者? 飼い猫とか?」
「俺の名前はペロスだ。こっちでのぷりんのお目付け役をしていた」
「ふ-ん。あ、私の名前は真宙! よろしくね。これ、どこに向かってるの?」
「ついてくれば分かる」
ペロスは無愛想な態度のまま、猫らしく狭い道を選んで歩き続ける。その迷路のような道順に、真宙は何となくそう言うアトラクションを遊んでいるような感覚になっていくのだった。