_______最近、よく話しかけてくる人がいる。
「雪村さん、いま帰り?」
「……はい」
彼方を待っているとさわやかな男子がにこりと笑って話しかけてくるけど、正直名前を覚えてない。
高校生になって1年以上経つから流石に覚えるべきだけど、友達以外はだいたい一緒にいる彼方にコミュニケーションを任せているし……正直そのほうが楽だし……
「よかったらさ、今度遊びとかいかない?」
「? なんでですか?」
「いや、雪村さんクラスメイトだし、いつも明日さんとかと一緒にいるからあんまり話せないけど、ゲーム好きって聞いたから話し合うかもなぁって」
クラスメイトだったんだ。
遊びには行きたくないし、話なら学校でもできるのに。
首を傾げていると、突然背後から肩に手が置かれる。
優しく包みこむような優しい手の置き方に、私は振り返らずに声をかけた。
「彼方、用事大丈夫なの?」
「あ、明日さん……」
クラスメイトさんが少し後退りをする。
「うん、終わったよ〜、えーっとお話中だった?」
「うん、でも大丈夫」
私はぺこりと頭を下げて、踵を返す。
クラスメイトさんは、がっくりと肩を落としてとぼとぼと去っていった。
「……もしかして告白とかされてた?」
「いや、遊びに誘われてた」
「サシで?」
「うん」
「わー」
嫉妬、とかはしてくれないか……
少し期待してた自分に嫌気がさす。
なんとなく彼方のほうを見ると軽く両手で頬を揉んでいた。
「どうしたの?」
「やー、窓のほう見たら自分がすっごい怖い顔しててビックリしちゃって」
「え」
それって
「告白かもとか考えちゃって、嫉妬しちゃってたかも」
てへへと笑う彼方に、何も言えずに私はただ、ただ嬉しくて俯いて顔を熱くすることしかできず、そっといつものように彼方の手を握って帰路につくのだった。