『狛犬をひき逃げ』にレビューコメントをいただきました。
https://kakuyomu.jp/works/16818792437680413792武江成緒様、本当にありがとうございます。
感謝の気持ちを込めて、武江成緒様の作品をご紹介させてください。
『螭が月を呑む話』
https://kakuyomu.jp/works/16817330663946996815本作は、本日完結した傑作中編です。
南の大洋。その深淵の底には、光を忘れ、鯨さえもひと呑みする巨大な洋螭(わだみずち)たちが潜んでいました。
ある夜、一匹の巨螭(おおみずち)が月を呑まんと海を割り、天へと昇り始める。そこから物語は始まります。
巨螭の起こした大津波による余波とその顛末。
そして、月に挑んだ巨螭がどうなったのかという物語です。
さて、武江様といえば素晴らしい描写をされる方です。本作では、七宝島(しっぽうじま)が初めて登場した場面での筆致が冴え渡っています。
せっかくなので……いえ、私がぜひに読んでいただきたいので引用させてください。
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内地よりはるか南。
藍染布のような海のただ中に、並べ展げられた七つの金銀宝貝のごときその島々は、その美しさをたたえられ、七宝島、と呼ばれていました。
朝な夕なに陽をあびて崇く輝き、海へとそそぐその川床に砂金をきらめかせる黄金島。
その背後にひそやかに鎮座して、白砂の裳裾をしずかにひろげ、その肩からは銀の閃きのぞかせる白銀島。
珊瑚でできた青くひろい裾のなかに色とりどりの魚を遊ばす珊瑚島。
珊瑚の裳裾はやや小さくとも、そのなかに彩りゆたかな貝たちを数多はべらす宝貝島。
深い紺色の海のふところに無数の真珠貝をかくす真珠島。
深い山から河口まで、川沿いに色とりどりの玉石を敷く瑪瑙島。
そしてこのちいさな島。兄姉たる六ツ島よりも南にて、浜から山の奥までのいたる処を水晶のきらめきで飾る玻璃島。
(引用ここまで)
あまりに素晴らしく、ため息しか出てこないですね。
この圧倒的な映像美と世界観をぜひ味わってみてください!