読者選考期間も終わって一段落。あとはできることもないし、ほっと息が抜け気が楽になったので、いい機会だし「即死モブ」関連の雑談など。
「即死モブ」に限らず作品の組み立てで当方が一番影響を受けているのは、半村良の伝奇物と、南総里見八犬伝。特に半村良ですね。個人的には勝手に、できの悪い押しかけ弟子くらいのつもりで書いてます。いやマジで。
市井の小市民がふとしたきっかけで不思議な世界に誘い込まれ、現実のすぐ裏にある黒い底流、欲望のままに流れる闇色の大河に溺れていくあのグルーヴ感覚は、最高です。「石の血脈」とか「産霊山秘録」「黄金伝説」といった全盛期の伝記小説は、ぜひにとお薦めしておきます。
「即死モブ」だけでなく「異世界左遷」「異世界巨大アパートの管理人」などもそうですが、背景に謎に満ちた世界を置いて、主人公がその謎の縁を綱渡りしながら次第に深みにはまっていく構成になっているのは、そのためです。溺れるような恋愛要素を入れ込んでいるのもそう。徹夜で半村良を読んだときの読後感、あの甘い感じを意識しています。
職業編集者としての当方の目で見るとWeb小説って面白くて、こうなんというのか、投稿作家が試行錯誤してきた分厚い経験知地層の上に積み木を置いて、読者と対話しながらああでもないこうでもないと積み上げていくライブ感がある。
こうしたWeb小説フォーマットをリスペクトし、その文脈に則った上であの半村良世界を組み立てられないだろうかという実験ですかね。それが当方の趣味になっているわけです。根が雑誌屋なんで、仕掛けて反応見るのが好きでして……。
その試みがうまく行ってるかどうかは正直わかりません。読者の方の評価も、作品によってまちまちです。でも書いてて楽しいからいいや……といったところ。
願わくば読者の方も「こいつの作品なんかヘンだけど、読んでて楽しいからいいや」と思ってくれるといいなあと。