「私は手をあげた」シリーズは、動きを言語化する練習のために始めました。
もともとアクション映画が好きで、自分の創作にもアクション要素を取り入れたいと思っていたのですが、いざ書いてみると、動きを文章にするのは思った以上に難しく、単調になったり、間延びしてしまったりすることが多くありました。
ただアクションを書く練習をしても、目的がないとまとまりに欠けてしまい、結局「物語の中で、その場に合った表現をする力」にはつながらないのでは、という悩みもありました。
一方で、アクションを主軸にした物語をがっつり書く余裕もなく、メインである『キャンパス・ガーディアンズ』を書きながら、「心温まる物語」シリーズの試作をしていました。
そんな中、『キャンパス・ガーディアンズ』で「手をあげて抗議する」場面を書いた直後、別の原稿で教室のシーンを書いていたら、今度は生徒が「手をあげた」んです。
そこで、同じ「手をあげる」という動作なのに、意味合いがまったく違うことに気づいて(当たり前なんですけど)、「これ、めちゃくちゃ面白いな」と思いました。
その勢いで、手元にあった手帳の、まだ使っていなかった12月の週間ページに、「手をあげる瞬間」を書きなぐってみたんです。
「ブーケトスを取るために」「引っ越しの荷物を運ぶために」「観客に応えるために」「PKを決めて」……気づけば50個くらい出てきました。
その中に「相手を斬るために」という一文があって、最初は時代劇の映像を思い浮かべたんですが、「これ、過去でも未来でもいけるな。人はずっと手をあげ続けてきたんだな」と、いろいろな設定が連想されていきました。
これなら、動きを書く練習になる。
しかも、その“一瞬”を切り取って、同じ「手をあげる」という行為を、まったく違う書き方で描ける。
そう思ったのが、このシリーズの始まりです。
構成を考えていくうちに、純粋なアクションよりも、その場の空間や感情にフォーカスしたほうが面白くなると感じ、今の形になりました。
一話完結の短編として、これからも100話を目標に続けていくつもりです。
「いつ」「誰が」「どこで」「どうして」手をあげたのか――
そんなことを想像しながら、風景を思い浮かべつつ読んでもらえたら嬉しいです。