「やあ、アッシだよ。埴輪ハオちゃんだよ。今日は寒空の下、マッチョを売るよ」
マッチ売りの少女ですね! 流石は我らがヒロイン。悲劇の少女役も似合います。
……え? 今、なんて言った?
「マッチョ、マッチョは要りませんか?だよ」
待ってください。 ハオちゃんはプロテイン片手にマッチョを販売しています。
人身売買はいけません。それにマッチョ達は雪の降る中、ブーメランパンツ姿です。
これではマッチョ虐待です。
「ああっ、だよ」
なんと! 心無い通行人がハオちゃんにぶつかってきました! ハオちゃんは地面に倒れ込み、涙ぐんでいます。
なんて可哀想なのッ?!
そんな中、マッチョは『ハオちゃん、大丈夫かい? さあ、僕の大胸筋で温めてあげよう』と、胸板を高速でピクピクさせました。
その空気摩擦で、辺りがジンワリと温まってきました!
ハオちゃんは凍える手を、そっと大胸筋にかざします。
「ああ、あったかいステーキが見えるんだよ。有難う、マッチョさん」
その時でした!
『Oh!!!!』と、マッチョは叫んで、大胸筋の動きが止まってしまいました。
–––– 攣ったようです。
「温もりが…… 消えちゃったよ」
ハオちゃんは、いけないと思いながらも、他のマッチョに手を伸ばします。
『ハオちゃん! 見てよ。僕の燃える上腕二頭筋を!』
その暑苦しさで、また辺りが熱気に包まれました。
「ああ、あったかいんだよ。暖炉の前に居るみたいだよ」
しかし、このマッチョもすぐに燃え尽きました。どうやら、ボディローションを塗り忘れていたようです。 見るも無惨な乾燥肌が、熱気を奪ってしまったのです。
「もう一体、もう一体だけ……」
ハオちゃんは最後のマッチョを籠から取り出しました。
『ハオちゃん!安心して!僕はローションをバッチリ塗ってるよ! さあ! 燃えろ!僕の大腿筋!!』
最後のマッチョはスクワットを始めます。
その輝く汗が、情熱が。
周りの雪を溶かし始めました。
しかし、物語は残酷です。
近年の温暖化により、急に気温が38度まで急上昇したのです。 そのため、マッチョは水分不足になって倒れてしまいました。
「ああ、マッチョが……マッチョが……」
ハオちゃんは、涙を流してプロテインをマッチョに与えました。
その後、復活を果たした彼らマッチョ3人組の行方は知れませんが、きっと何処かで誰かのハートを温めている事でしょう。
その後、ハオちゃんはマッチョの名トレーナーとして名を馳せ、財産を築いたと文献に残されています。
筋肉が紡いだ奇跡の物語でした。
–––– おわり
カクヨマーの皆さん、こんにちは!
突然のゲリラハオちゃんでした!!
本当に皆さん短時間で仕上げる手腕は凄いですね! 私は間に合わなかったので、ここで供養したいと思います。
それではまた!