今回は、少し踏み込んだ内容を書きました。
本編では、美術大学受験における不正行為や反則行為について触れていますが、ではそもそも、なぜそれらが禁止されているのか。
今回はその点について、少しだけ補足したいと思います。
まず、提出作品そのものを加工する行為について。
これは単純に「受験生本人の技量を公平に見るため」という理由があります。
また、それだけではなく、提出後の作品の状態が変化したり、他の受験生の作品を汚してしまう恐れがあるため、禁止されているという側面もあります。
外部と連絡を取り、指示や助言を仰ぐ行為については、言うまでもなく受験生全体の公平性に関わる問題です。
ただ、現実として、二次試験が複数日にわたる場合、一日目の制作後に予備校へ戻り、先生に相談することが可能なケースもあります。
その意味では、大手予備校に通っている受験生と、そうではない受験生との間には、情報量や対策面で差が出ることもあると思います。
もちろん、それ自体が不正という話ではありません。
ただ、受験には「絵の技量」だけでなく、「環境」や「情報」の差も少なからず関わってくる。
そういう現実も、今回の話では少し意識しています。
次に、油絵具を別の絵具に置き換える行為について。
有名な私立美術大学の中には、アクリル絵具の使用が認められている試験もあります。
また、アクリル絵具を使った作品にも素晴らしいものはたくさんありますし、ミクストメディアのように、性質の異なる素材や技法を組み合わせる表現も当然存在します。
ただし、この物語では、主人公が藝大油画を受験することを念頭に置いています。
そのため、ここで問題にしているのは、
「あくまで油絵具を用いる試験において、指定された画材を偽って使用すること」
についてです。
以前、ある人から聞いた話ですが、画家として作品を販売する以上、作品が短期間でひび割れたり、変色したり、崩れてしまうことは信用に関わるのだそうです。
それは作家個人の信用だけでなく、藝大生、藝大卒という看板を背負う以上、大学そのものの信用にもつながる。
そんな話を、半分与太話のように聞いたことがあります。
もちろん、これはあくまで私が聞いた話であり、作品表現の正解を決めるものではありません。
アクリル絵具にはアクリル絵具の良さがあります。
油絵具には油絵具の良さがあります。
混合技法にも、それぞれの表現の可能性があります。
今回の話は、あくまで「油絵具を用いた藝大入試」という文脈の中での話として読んでいただければ幸いです。
なお、実際の試験で使用できる画材や禁止事項は、大学・年度・専攻によって異なる場合があります。
受験を考えている方は、必ず各大学の最新の募集要項や試験要項をご確認ください。