世界設定だけはたくさん書き記したので
少しだけですけどここで世界の解説書をアップしておきます。
ネタバレは一切ありませんので。
剣の世界
― つるぎのせかい ―
はじめて読む方へ
物語の先を知らずに読める 世界と世界観のご案内
自然は厳しい。
人間は弱い。
だから、人は寄り添う。
この素晴らしき世界。
人生は、素晴らしい。
※この内容は物語の展開、人物、起きる事のいずれも含んでいません
この物語を開く前に
『剣の世界―つるぎのせかい』は、剣を持つ人々の物語です。けれど、剣があるからといって、戦争や魔王討伐を中心にした世界ではありません。人々が剣や槍や盾を必要とする一番の理由は、人間よりもずっと強い自然の中で、自分たちの暮らしを守るためです。
この世界の人間は、生き物として特別に強くありません。だから壁を築き、道具を作り、畑を耕し、食べ物を蓄え、怪我を治し、子供へ知識を教えます。一人ではできないことを、村や街という共同体で補い合っています。
そして、世界そのものは決して暗くありません。大地は肥沃で、水は豊かです。森には命があふれ、季節が巡れば花が咲き、実がなり、人々の食卓も豊かになります。危険な自然と、恵みを与える自然は、同じものです。
この世界の基本
人間は自然を征服していません。
自然の中に小さな生活圏を作り、それを守りながら暮らしています。
1 「魔物」ではなく、強い野生
この世界には、人間にとって非常に危険な生き物たちが暮らしています。けれど、彼らは異界から現れた怪物でも、人間を滅ぼすために存在する魔物でもありません。
犬科のヘルハウンドや猫科のサーベルタイガー、猪であるビッグボアそれらでさえ、この世界では怪物ではなく動物。その中には、ただ『猿』と呼ばれている厄介な野生動物もいる。
つまり、人間と野生の関係は『善と悪』ではありません。獣は悪だから人を襲うのではなく、餌を求め、縄張りを守り、子を守り、生きるために行動します。人間もまた、自分たちの畑や家や家族を守るために行動します。
そのため、この世界で優れた判断とは、何でも倒せることではありません。危険を見つけたら近づかない。子連れなら避ける。逃げ道を塞がない。手に負えないなら退く。戦わずに済ませる知恵も、立派な強さです。
2 剣は、英雄の証ではなく暮らしの道具
人間は生身では弱いため、武器は生活圏を守るための技術として根付いています。衛兵なら盾と槍、外へ出る仕事なら護身具、専門のハンターなら狩りに適した武器。役割によって必要な道具は違います。
そして武器は使い捨てではありません。欠ければ研ぎ、曲がれば直し、柄や部品を交換し、長く使います。鉄は生活にも防衛にも必要な大切な資源だからです。古い道具には、古さではなく『何度も直され、使われ続けた時間』があり
3 三つの季節
この世界の暮らしは、乾季・雨季・温暖期という大きな季節の循環とともにあります。季節は背景ではなく、仕事、食べ物、移動、野生動物の行動、人々の過ごし方そのものを変えます。
季節
乾季
自然は
晴れが続き、植物には厳しい。動物も水や食料を求めて動く。
人は
水を守り、獣を警戒する。一方で道が安定し、移動には向く。
雨季
自然は
雨が大地を潤し、植物が勢いよく育つ。
人は
外仕事が減り、道具や建物を直し、備える時間が増える。
温暖期
自然は
花が咲き、実りが増える。野生動物には繁殖の季節でもある。
人は
採集や狩猟の恵みが増える一方、子を守る動物への警戒も必要。
どの季節も『良い季節』『悪い季節』ではありません。雨には雨の恵みがあり、乾いた空には乾いた空の利点があります。人々は自然を変えようとするより、自然の変化に合わせて暮らし方を変えます。
4 村という、小さな生存共同体
村では、農家、職人、衛兵、ハンター、商いをする人、教育や医療を担う人など、さまざまな仕事がつながっています。農家がいなければ食べられず、職人がいなければ道具を直せず、守る人がいなければ生活圏を維持できません。
だから、この社会では助け合いが単なる美徳ではなく、生きるための合理的な方法になっています。食料、基本的な衣服、仕事に必要な道具、医療、教育など、生きるための土台は共同体が支えます。ただし、誰もが同じ物だけを持つ社会ではありません。もっと良い物、好みに合う物、特別な加工を望むなら、その人自身の選択と働きで手に入れる余地があります。
村の考え方
必要なものは、皆でみんなに。
欲しいものは、自分で。
優れたものは、次のみんなへ。
5 村の中では「信用」が動く
この世界の村では、毎日の暮らしのたびに硬貨を渡すとは限りません。共同体が保障する基礎生活とは別に、特別な注文や追加のサービスには、帳簿に記録されるポイントが使われます。顔の見える小さな社会では、『誰が何を働き、何を頼んだか』という信用を記録することが、通貨の役割を果たします。
村の外との交易になると、今度は現物の貨幣や物々交換が必要になります。つまり、村の内側と外側では経済の仕組みも少し違います。これは豊かさを独占するためではなく、限られた資源を無駄にせず、共同体を長く維持するための工夫です。
6 子供と知識は「次の世界」
自然の危険が身近な世界では、知識を一代で終わらせることは大きな損失です。読み書きや算術だけでなく、季節の変化、動植物、危険の避け方、応急処置、仕事の基礎まで、生きるための知恵が次の世代へ渡されます。
家の仕事を子が継ぐこともありますが、それが絶対ではありません。向いている仕事を学び、職人や農家のもとへ弟子入りすることもあります。親を失った子供も、共同体の中で新しい居場所を探します。
また、年齢や怪我で現場を離れた人の経験も失われません。『生き残ったから知っていること』を教えることは、この世界では立派な仕事です。
7 豊かな世界だからこそ、自然は強い
『危険な世界』と聞くと、荒れ果てた土地を想像するかもしれません。けれど、この世界はむしろ逆です。豊かな水があり、豊かに植物が育ち、食べ物が生まれる。だから森も豊かになり、そこに暮らす動物も大きく、強くなります。
人間にとって自然は、食料、木材、薬草、皮、骨、牙、蔓、樹脂など、多くのものを与えてくれる存在です。同時に、一歩間違えれば命を奪う存在でもあります。その二つを切り離さずに受け入れていることが、この世界の人々の自然観です。
8 この物語で大切にしているもの
この世界では、世界を救うことだけが偉業ではありません。畑を守ること。壊れた道具を直すこと。食べ物を保存すること。怪我人を治すこと。子供へ教えること。外へ出た人が帰ってくること。みんなで食卓を囲むこと。
大きな事件が起きていない一日は、何もなかった一日ではありません。農家が働き、職人が直し、守る人が見張り、誰かが備えたからこそ、普通の一日が普通のまま終わったのです。
人間が弱いことは、この物語では絶望の理由ではありません。弱いから、知恵を使う。弱いから、道具を作る。弱いから、誰かと支え合う。そして、その積み重ねの中に、働くこと、食べること、笑うこと、恋をすること、育てることの価値があります。
さあ、物語の中へ
ここまで知っていれば、あとは登場人物たちと一緒に、この世界を歩いてみてください。村の壁、畑、店、工房、食卓、そして壁の向こうの自然。説明されない小さな仕草や会話にも、この世界で人が生きてきた理由が隠れています。
誰が何を成し遂げるのかは、ここでは語りません。
どんな出来事が待っているのかも、ここでは語りません。
ただ一つ、この世界を見るための言葉だけを。
自然は厳しい。
人間は弱い。
だから人は寄り添う。
この素晴らしき世界。
人生は、素晴らしい。
『剣の世界―つるぎのせかい』 はじめて読む方へ