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箱入り娘の言い訳

 皆さんごきげんよう、どうも僕です。

 今回から自分の作品の、補足というか裏設定というか、見えない部分について、つらつらと書いていこうかなと思っています。こういう所で自我を出せば、創作の刺激を与えてくれる交流とエンカウントするかもしれないし、なにより宣伝になるって寸法ですね。

 こんなもの書いてる暇があるのなら、新しい作品の一つでも出せと言われそうではありますが、まあ、初めてコメント付きレビューをもらったやつが浮かれているだけですので、どうか大目に見ていただければなと。

 挨拶はここまでにしておいて、本題に入りましょう。

 つい5日くらい前、カクヨム公式のキャンペーンという存在を知りました。とにかく色んな人に読んでもらって承認欲求を満たしたい僕は、この祭りに参加しようと思い、この『箱入り娘』を書いたわけです。

https://kakuyomu.jp/works/16818093073438688976

 (キャンペーン3回目のお題は‪"箱"‬)

 まあ、無難な王道の話です。

 応募期間が4日しかないので、ゼロから書き始めて〆切を守るとなると、どうしてもコンパクトな話にする必要があります。どんなに速筆な人でも、4日でロードオブザリング全編は書けないわけで。

 それに僕は自慢じゃないけれど、かなりの遅筆で、面倒くさがりで、そのくせ諦めが早い人間なので、重厚な世界観や設定のない、陳腐な短編にせざるを得なかったのです。

 案の一つとして、今書いている新作に文字通り箱を組み込むというのも考えはしましたが、ちょっとその作品とは噛み合わせが悪かったのでやめにしました。そもそも、お題とのチューニングで4日以上かかる気がしたっていう。

 とにかく、白紙から短編を書いたわけですね。内容は短編らしくシンプルで、小難しいテーマもない。

 しかしまあ、これは僕の悪癖なんですが、作中に見えない部分を匂わせてしまいました。

 一言でまとめると、解説不足。

 そこが脳内で補完するのが楽しいんじゃないか、という意見を推したいところですが、昨今どんなコンテンツもわかりやすさを重要視している節があります。

 なので少しばかり語りましょう。要するに、ひぐらしの解答編みたいなものですね。



 ではまず、‪"そもそも何故箱の中に歯が入っていたのか"‬についてです。

 聡明な皆さんなら、別にこれ歯じゃなくてよくね? と思ったはず。髪や指、目などでも物語としての影響はないわけですから。けれども、これにはちゃんと理由がありまして、歯というのは人間のパーツにおいて、小さいながらもかなり個性が出て、身体から無くなっても活動にそこまでの影響はないんですよね。

 虫歯があったらだらしなさや不衛生、何かしらの不足をイメージさせることができるし、ホワイトニングしてあれば生活に余裕があることを連想させる。差し歯や入れ歯、金歯や銀歯などなど、個性があるんですよ。髪の毛も色や長さや枝毛、キューティクルなどで妄想はできますが、そういうのって結構まじまじと観察しないと難しくないですか? 歯だったら結構ぱっと見でわかるでしょう? 

 わかりやすさを求めるなら、NARUTOやHUNTER×HUNTERみたいな目玉とか、呪術廻戦みたいに指とかにすりゃ良いじゃん! という意見についてですが、これには裏設定がありまして……

 作中に出てきた異常な男なんですが、彼って語り手同様に何も持ってないんですよ。力も顔も金もない、全てが平凡以下なんですね。そんな人間が他人から身体の大事な部分を奪うのって、無理なんです。人間って大事なパーツほど外れにくくなってるので。だから彼は、歯のようにどうにでもなってしまうものを、なんとかするくらいしかできないんですよ。

 だからこそ、歯を選んだわけです。

 それに連なって‪"あの歯はいったい誰のものなのか"‬についてですが、異常な男と、彼が一方的に好意を寄せている女性のものです。

 少し、男の話をしましょう。

 男は何も成し遂げられませんでした。昔からいじめられて続けて、学校も中退して、ようやく受かった仕事もすぐにクビになって、また頑張って仕事に就いてクビになる。そんな様子を見た親からは縁を切られる。けれど自殺する勇気なんてなく、身体は健康体で、死のうにも中々死ねない。生き地獄なわけです。

 そんな彼にも癒しはあります。前の会社で、上司に無理やり連れて行かれた、オンボロのソープランドで出会った女性です。男は自分がどういう人間かを語りました。女は真摯に聞いて慰めました。私でよければまた話聞くよ、なんか手伝えることあったら言ってね、お兄さんと話してると楽しいな、ついつい時間忘れちゃうね、お兄さんはすごい人だよ。

 男にとって言ってほしい言葉をくれたのは、彼女がはじめてでした。

 まあ、そういう商売ですからね。

 足繁く通っていたある日、女から、お兄さんにしか言えない相談があるんだけど、聞いてくれる? と言われました。男は喜びました。ついに自分を頼ってくれる人ができたんだ、と。もう他人同士じゃないんだ、と。

 もしかしたら、自分のことを好いているのかもしれない、と。

 飛び出しそうな心臓を抑えながら話を聞きます。

 彼氏の誕生日プレゼント、何がいいかな?

 男ははじめて暴力を振るいました。3発ほど顔を殴ったあと、目の前にいる人は、思っていたよりも脆いこと知りました。

 このままだと部屋から逃げた女が警察に通報して、逮捕されてしまいます。なんとか証拠を消そうと、男は必死で動きました。シャワーで血を洗っていると、床になにか落ちているのが見えました。

 ボロボロで真っ黒の歯でした。色んな男と交わっているからこんなに虫歯だらけで汚いんだろうと、男は思いました。

 結局店が店なので逮捕まではされませんでしたが、多額の賠償金と勤めていた会社の解雇通知は、しっかりとした罰に違いありません。

 以上が男の話です。

 そんなわけで、箱に歯が入っていたんですね。自分の一部と女の一部を同じところに保管しているあたり、まだ未練タラタラなのでしょう。気持ち悪いですね。

 最後に‪"箱から聞こえた声はなんだったのか"‬については、わかりません。彼の想いが起こした奇跡なのか、商売の要である顔を台無しにされた女の呪いなのか、雰囲気に呑み込まれた語り手の勘違いなのか……そもそも、真っ黒い箱は何処で手に入れたんでしょうか。

 今回はここまでにしておきましょう。読んでくださりありがとうございました!

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