実は今週の後半は転勤にともなう引越休暇で
電車移動や諸々の待ち時間、そして夜中はもっぱら小説を読んで過ごしておるのですが、
改めて永嶋恵美作品と湊かなえ作品は一気読み禁物だと痛感しました。
心をズタズタにされますね。
ミステリやサスペンスは、偶然や気紛れという要素を徹底的に排除し
「犯人は、それ以外の行動や手段を選択し得なかった」という論理と説得力をもって
読者に真相を叩き付けるのが美徳であると認識しておるのですが、
登場人物の経験、考え方、置かれた状況をち密に設定し、
毒々しくも自然な心理描写でもって
衝撃的な真相を読者に納得させる技法はもはや魔術師の御業だと思います。
私は登場人物の思考や判断理由を正確に伝える目的で
一人称視点で主観も心理も細々・長々と書きがちなのですが、
今回、プロの作品を何冊か一気読みして気づいたことがありました。
登場人物には性格や思考の傾向が確かに存在するものの、
そのすべてが断定的に書かれている訳ではなく、
読者が容易に想像できる部分は適切に省略されていました。
この省略はまた、読者が自由に推理・解釈できる余地にもなっています。
(そしてこれらは、ミスリードという痛快さや、
許される範囲で読者の想像に委ねる余白という作品の深さにつながっています)
今まで作品を素直に読みふけり、熱中し、楽しんできましたが、
今回は作品作りの勉強という心持ちで読み解いてみた結果、
細部に仕掛けられたプロの技術と凄味に驚かされると共に感動できました。
何事も勉強するほど奥深く、面白いものですね。
この気づきを自身の作品にも活かします。(執筆活動に関すること、この一行だけ)