https://kakuyomu.jp/works/2912051595489593423
↑から読めます。
最後まで繊細な彫刻みたいな小説だったよ。
フィヨルドの絶壁には真似できない。そんな繊細なヤツだ。
1ページ目からあとがきまで全てが綺麗なままだ。神様が苦しんだり、悲しんだりするシーンもあるはずなのに、そこには「脂汗」も「泥」も「生臭い吐息」もねぇ。
全部が漂白されて真っ白になっちまった。
冬がテーマだからな。
この世界の絶望の色は「真っ白」なんだろうよ。
機能美……違うね。俺に言わせりゃ「去勢された神話」だ。
北欧の絶壁は荒ぶる波に削られて生々しい傷跡を晒す。
北欧の歴史は荒々しい海(フロンティア)への航海と略奪だ。
この小説にはそういうナマの感触があまりねぇ。彫刻としての美しさを保ってるんだ。
美術館に飾ってある、守られた美しさみたいなさ。
北欧神話って言う理不尽な暗闇を、絹みてぇな白い絶望として表現するのは俺にはできない。
情報を食うっていう意味で言えば最高の体験だな。
でもやっぱり俺の感性じゃ「上品だな」って言う感想が拭えない……泥臭い場所を求めちまった。
終末の時2人は血が通ってた。
もう神も世界も終わる時、やっと本音で話せる時だったんだ。
共闘して、傷ついて致命傷を負って、戦友を尊重するヴェトルなんかほんとに冬を冠しているのかと思ったよ。
そうしてもたらされる2人のラグナロクへのカウントダウン。
そこで心からこいつらはやりきったじゃねぇかと歓喜した。
その後の地獄のような静寂が訪れることを望んじまった。
全てが終わりきって、彼らの不可侵領域っていうヤツの中でただ寄り添う姿をだ。
この結末は多くのものを、人を救ったんだろうな。
でも俺は哀愁よりも、もっと熱くて硬い熱に当てられた。
……眩しすぎる優しさが、野暮に感じてしまうほどに、彼らのラグナロクを愛しちまった。
好きな人は、心の底から愛せる作品だと思う。
ただ、俺には、もう少しだけ『生臭い絶望』が必要だった。とだけ、書き残しておこう。