バックホーンの『孤独な戦場』の話。
冬はとても良い季節です。
煩そうに俺を睨んで目の前を通り過ぎていく。アイツらの死んだ様な目を見たのは、昨日鏡の中だった。次から次へと駅から溢れてくるアレは、いったい何匹居るんだ。眠くなるまでなら、数えられそうだ。
大した取り柄なんか無い。人並みの学があるなんて、今時自慢出来る事でも無い。オマケに金も無くなった。考えたって思い出せそうに無いんだ。自分が本当に憧れてたかなんて。ここの良い所なんて1つだけ、12月だってのに温かい。
残高不足の通帳から端金を取り出して、募金箱に捨てた。買ったのは壊れたギターと果物ナイフ。人生で一度位、好き勝手してやる。誰も俺の不平不満なんて聴きやしない。好き勝手怒鳴ったって少し睨み付けて去って行く。お前らが言えないなら変わりに言ってやろうか、目障りだって。
誰にも何も届かないって分かれば、清々しいもんだ。音が外れて不快になるのは、自分くらいだから。あぁ今日は嫌な日だ。12月だってのに、こんなに寒いなんて。優しい位退屈な冬の思い出なんて、見たく無い。訳もなくイライラして、無軌道に怒り散らす、そんな迷惑なヤツなんだから。訳知り顔で小銭なんか投げてくれるなよ。そんなんじゃ刺しちまいたくなる。
今更、意味なんか持ちたくは無いんだから。