近況ノート自体を普段書かないのですが、告知をします。
現在カクヨムにて執筆中の『散髪したら893に似てるって言われたから』ですが、無期限で筆を置きます。
理由は、僕自身が書いていて不快に感じるようになってしまったからです。
『散髪893』はギャグ一辺倒の作品で、今年の夏に「何となく、ノリで」書き始めました。それも、明るく笑い飛ばせる描写だけでなく、人間の弱さとか滑稽さとかを極端にデフォルメしたブラックなギャグのつもりで、です。
しかし、ここ数ヶ月で心境の変化がありました。それは、僕がウェットな感情を伴ってキャラ設定やストーリー創作をするタイプの人間だと確認したからです。
作者個人から見て散髪893はナンセンスなギャグです。しかしギャグは時としてウェットな情感たっぷりの残酷劇以上に悲しい、と感じるようになってしまった。
サーカスのピエロに例えるとわかりやすいでしょうか。ピエロ(道化)は自らの哀れな行ないや惨めな有り様を衆目に晒すことで笑いを取ります。そして、その頬には自らの堕落する生への悲しみの涙が流れています。
散髪893の主人公・荒川光くんはそのピエロの役にとても似ています。不幸に不幸を重ね、グラフにすれば右肩下がりに堕落していく彼の運命を書いているうちに、罪悪感と不快感を抱いてしまったのです。
人によってコメディーの在り方は様々です。
堕ちていく様がただただ面白いという人もいますし、実際ひたすら堕ちていく様を描き切ることで比類なき名作を産み出せる作家さんもいらっしゃいます。
ですが、僕にはその作業の過程が苦痛に感じつつある。
本作に登場するあらゆる暴力を駆使するキャラクターも、それに翻弄される荒川光くんのようなキャラクターにも、例え虚構の世界の話とは言え生命がある。
そういった生命は現実にごまんと存在している。
世間から後ろ指を指されるような者でも、ひとつひとつの生命。それを笑いのネタとして扱っていいものか。せめてもっと丁寧に描くべきなのでは……そういう疑念や書くことへの罪悪感や不快感が湧いて来た時点で、もう駄目だな、と感じました。
これはブラックなギャグを描く人たちを否定するわけでは断じてありません。僕自身の心境の変化と認識の変化です。抵抗感なく描き切るには、僕はあまりに未熟で浅はかでした。
決して善人ぶるわけでも、人として尊いものを目指すわけでもなく、書いていて自分の生理に合わない。そう思ったのです。
よって、この作品は凍結します。
本作を「それでも面白い」「好きだ」と言ってくださった真に有り難い読者の皆さんには本当に申し訳ありません。全ては僕の浅はかさと力量不足が招いた結果です。
今後は作品を書き始める時はもっと慎重に、丁寧に執筆計画を練ろうと思います。読者の方々はもちろん、他の誰でもない作者自身の為に、です。
散髪893は凍結……若しくは僕自身が抵抗なく「書ける」と確信した時が来たならば再開しようと思います。
今後著したい作品のプランは他にも沢山あります。現在進行形で書いている作品も含め、そちらをお読みいただけるとありがたいです。
応援してくださる方々、改めて感謝いたします。心を改め、執筆に励みます。