新作ラブコメを考え中(2回目)
さっきとは別作品となります。二つともダメだと判断したらノクタでエロ修行しようと思います(決意のこもった眼差し)
───
1.氷の女王は幼馴染
|梨乃原《なしのはら》高校には、氷の女王と呼ばれる女子がいる。
その女子の名は|四条《しじょう》|冬華《ふゆか》という。
銀髪のロングヘアの美人で、女子の中では身長が高い。
物静かな性格で、黙ってたたずんでいるだけでクールな印象を与える。
圧倒的な容姿は誰もが一目置かずにはいられない。なのに本人は群れることなく孤高を貫いている。それがまた自分をしっかり持っていて好感が持てるらしい。
「四条さん……俺の彼女になってくれないか?」
だからだろう。彼女は男子からよく告白をされていた。
教室という、人目を気にすることのない場所での告白。もちろん注目を集めるのは当然で、廊下を歩いていただけの俺ですら目を向けずにはいられなかった。
告白をした男子生徒は爽やかなイケメンだ。
遺伝子の勝利者である彼は、断られるという考えが一切ないのだろう。放課後になってすぐという、教室にまだ生徒が残っている時間帯で告白するということは、成功した未来を思い描いていなければなかなかできることではないはずだ。
つまり、俺の敵である。
「ごめん……、興味ない……」
彼女は静かな声で、だけど確かに断った。
「え……?」
よほどの自信があったのか、あっけにとられるイケメンくん。ざまぁ。
しかし、人前で恋に破れた姿をさらすのはつらかろう。俺は止まっていた足を動かし、帰路に就くことにした。
四条冬華は誰もが振り返るほどの銀髪美人で、常人では話しかけることすら躊躇ってしまうほどの孤高のオーラを放っている。
そして、どんなイケメンにもなびくことなく、冷徹に男を振る姿から「氷の女王」と呼ばれるようになったのだ。
◇ ◇ ◇
帰宅後、俺の部屋。
「ともくんずるい。こっちの弱点ばっかり的確についてくるなんて」
「対戦ゲームとはそういうものだ。悔しかったらもっと戦略を練ってから出直してこい」
どんなイケメンにもなびかない氷のような美人。そんな氷の女王は、今俺の隣でゲームをしていた。
画面を真剣に見つめながら頬を膨らませている表情からは、学校でみんなが口にするクールビューティーさを感じられなかった。
そう、四条冬華は、俺こと|朝倉《あさくら》|智也《ともや》の幼馴染なのである。
だから冬華がみんながイメージするクールな奴ではないことを知っている。
「そういえば、冬華ってさっき教室で告白されていたよな?」
「うぇっ!? み、見てたの……?」
慌てふためく姿は小動物のようで、冷たい印象なんて微塵も感じられない。
これだけでも学校の奴が見たら目を疑うだろうな。
「けっこうカッコいいって噂の男子だろ。断って良かったのか?」
「い、意地悪言わないでよ…。ともくんは私が男子のこと苦手に思っているのを知っているでしょ」
もちろん知っている。
冬華は幼い頃から目立つ容姿だったこともあり、男子からよくちょっかいをかけられていた。
それを助けていたのが俺だった。
同じマンション住まいという共通点から、仲間意識を抱いていたのだろう。小さい頃の俺は漫画に影響されたのか「仲間に手を出す奴は許さねえ!」なんて言っていたっけ。
そういう経緯から、冬華は男子に苦手意識を持ちながらも、俺だけには心を許すようになったのだ。
「それは知ってるけど。でも彼氏の一人でもいた方がクラスの輪に入りやすくなるんじゃないか?」
男が苦手と言っている冬華だけど、じゃあ女子が得意なのかと聞かれればそういうわけではない。
みんなから孤高だと思われているようだけど、冬華はただのコミュ障なのだ。
本当はクラスの輪に入りたいと思っているのに、その勇気がないのである。口数が少ないのだって、クールだからではなく何をしゃべっていいかわからないだけだ。
俺の前では表情豊か。でも他の人の前では緊張からか無表情になってしまう……それが氷の女王の正体だった。
「そ、そんな理由で恋人を作るなんて不誠実……」
「別に、お試しで付き合っている彼氏彼女なんてたくさんいるぞ。うちのクラスでもしょっちゅう男をとっかえひっかえしている女子がいるし」
と、恋人の一人もいたことのない俺が偉そうに言ってみる。
「わ、私はそういう気持ちで誰かと付き合いたくないな……」
同じく恋人がいたことのない冬華が消え入りそうな声で言った。
冬華はコミュ障なだけで、本当はとても誠実な子なのだ。
人と向き合う時は必ず正面から。だからこそ、傷つきやすくもある。
そういうところを、ずっと見てきたのだ。
「あっ、また弱点ばっかり……うぅ、ずるいよともくん」
「氷タイプを使う冬華が悪いんだって。攻撃は優秀だけど防御面の弱点が多いんだよ」
ゲームに意識を戻し、いつも通りの時間が過ぎる。
放課後は部屋でまったりゲームをする。それが俺たちのいつも通りだった。
対戦が終わって伸びをする。適度なストレッチは健康のためだ。
「……」
冬華が何やらもじもじとしている。
何か言いたげな様子だ。
「何か話でもあるのか?」
「ふぇっ!? ど、どうして……わかる、の?」
「何年幼馴染やってると思ってんだ。遠慮とかいいからさっさと言えって」
冬華はこくんと頷き、小さく口を開いた。
「その……私、好きな人ができた……かも」
頬を桜色に染めて放たれた冬華の言葉に、俺は衝撃を受けた。
恋を自覚した女の顔。いつも傍にいた幼馴染が初めて見せる態度に、なぜか胸が高鳴った。
冬華は男子を苦手にしている。学校でも男子を極力避けているのを知っている。
そんな冬華が好きになる奴なんて……俺しかいないのでは?
「もしかして、それって……」
「……ともくんにはすぐバレちゃうんだね」
くすっと控えめに笑う彼女から、色気のようなものを感じ取った。
昔は女子だからとか、可愛いからだとか、そういう下心は一切なかった。
でも思春期になってから、幼馴染の距離感というものが近すぎるように感じていた。本人には絶対言えないが、冬華の残り香で興奮してしまったこともある。
だけど冬華自身は、俺を男と意識する様子がないと思っていたものだけど……ついにその時が来たようだった。
痛いくらいに胸を打つ心臓の鼓動を悟られないようにしながら、無言で続きを促す。
「そう……たぶん、ともくんの想像通りだよ」
冬華は目をつぶり、両手で自分の胸を押さえる。
これから行う告白を、緊張で台無しにしないようにしたいのだろう。
俺も同じ気持ちだ。背筋を伸ばしていつでも受けられる準備をした。
パッチリとした目を開き、俺を見つめる冬華が、ゆっくりと告白をした。
「私ね……|一ノ瀬《いちのせ》|紗夜《さよ》ちゃんが好きなの!」
「うん……うん?」
え……一ノ瀬紗夜……ちゃん?
……ちゃん!?
───
あらすじ的には好きな子が百合に走るので、なんとかしようとしているうちに百合の間に挟まって三角関係ラブコメする話。
最初の人がまだ残っている教室での告白はちょっと現実味がなかったかも。主人公に自然に目撃してもらおうと思って、逆に不自然になった気がする(ご都合主義発動!)
よかったら面白かったとか気になった点など意見をいただけたら嬉しいです(迷える書き手に愛の言葉を!)