みなさま、こんにちは。
宮草です。
昨日公開した『筋肉女子はフクロウの夢を見るか』(
https://kakuyomu.jp/works/16817330654282687979)を、知人に読ませてみましたら、感想をくれました。
「もう少し二羽の素晴らしい筋肉と滴る汗と交わし合う熱い視線の描写を(」
確かに、777文字では伝えきれなかったところもあったと思います。
というわけで、続きを書いてみました!
以下は、筋肉を見せないと入れない部屋の先を見る度胸のある方のみ、閲覧ください。
(※全裸(パンツ一丁)で戦う描写があります。閲覧注意です!)
1500字程度の文章になります。
なお、縦読みしたい方は、Twitterのほうをご覧ください。
https://twitter.com/miyakusa_h/status/1634808452626391040ではでは~。
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「筋肉を見せないと入れない部屋」
扉がおごそかな音を立てて開き、らいむとはっさくは部屋の中へ入っていく。
中は壁に囲まれた大広間となっていた。その中心に、スーパーマッチョマウスな夢鼠がいた。人の倍ほどの大きさがあり、腹筋はシックスパックに割れ、腕の筋肉を見せつけるようにポーズをキメている。
「肉弾戦は初めてですね」
「二度とやりたくないな」
らいむは姿勢を低くし、はっさくは両手を軽く握って身構える。
ここは筋肉を見せないと入れない部屋。己の筋肉のみで戦わなければならない。ゆえに、二人は身を包む衣装を脱ぎ捨て、武器をも捨ててきた。
二人はともに細身ながら、引き締まった身体をしている。はっさくは男性らしいがっしりとした筋肉がつき、らいむは女性的なフォルムをしているが、しっかりと筋肉が浮き出ている。
夢鼠が二人の筋肉を見て、ニヤリと笑ったように見えた。二本足で立ったまま屈み、床を蹴って二人のもとへ突進してくる。
らいむは翼を広げて上空へ飛び立った。はっさくは翼を羽ばたかせて、真正面に夢鼠を迎え撃つ。
両者が腕を引き、固く握られた拳が、ぶつかり合う。
衝撃が波のように周囲を振動させ、砂埃を舞い上がらせた。
夢鼠が左の拳をはっさくの腹に叩き込もうとする。はっさくは空いている左手でそれを受け止め、右手を引いて夢鼠に拳を向ける。高速連打の応酬。目にもとまらない速さで、はっさくと夢鼠の拳がぶつかり合う。
両者が一瞬身を引き、両手をつかんでぶつかり合った。どちらも一歩も引かない。腕の筋肉がふくれあがり、力と力が、せめぎ合う。
その時、夢鼠の頭上へひとつの影が落下してきた。らいむが片足を顔の前に上げ、夢鼠に向かって踵を落とすように蹴りを繰り出す。
ひゅんっ。
寸前で夢鼠は気配に気づき、はっさくから離れて距離を取った。蹴り降ろされた足は空気を切って、音を奏でる。
今度ははっさくが身を引いて、らいむが夢鼠へと飛んでいく。夢鼠は拳を構え、懐へ入ったらいむへ強烈な右ストレートをお見舞いする。
その拳は空を切った。らいむはギリギリまで近づくと、ふっと翼を羽ばたかせて上空へ飛んだ。夢鼠の頭の上を、弧を描くように回り、背後を取って蹴りを入れる。
しかしその直前、夢鼠は素早く後ろを振り返ると、らいむの繰り出した右足をつかんだ。攻撃を読まれていた。らいむの目が、一瞬丸く見開く。
夢鼠は足をつかんだまま体を捻り、らいむを壁に向かって投げ飛ばした。
体勢を戻せないまま、らいむが壁へと突っ込んでいく。衝突する直前、飛んできたなにかが、らいむの身体を抱き留めた。
「いけるか」
「もちろんです」
らいむを抱いたはっさくが、壁に足を置く。二人は前を向き、指を絡ませ手を繋いだ。はっさくが壁を蹴ると同時に身を捻り、勢いつけてらいむを投げ飛ばす。
夢鼠が避けるよりも速く、らいむの強烈な蹴りの一撃が、鳩尾をえぐった。
夢鼠はそのまま、斜め上空へと吹っ飛ばされる。
らいむとはっさくは互いに視線を合わせた。翼を羽ばたかせ、夢鼠を挟み撃ちにする。らいむは右から夢鼠の腹に向かって蹴りを、はっさくは左から夢鼠の顔に向かって拳を、それぞれ叩き込む。
夢鼠の体がいびつに曲がった。その姿が、光の粒子となって弾けて消える。
二人が交差すると、散った汗が舞う光に反射して瞬いた。
地面に降り立ち、らいむは足もとに転がってきた筋肉色の夢玉を拾い上げる。
「さて、帰りましょう」
同じく地面に降り立っていたはっさくも、軽く息を吐いて、歩き出す。
「開放感のある戦いでしたね。他の皆も連れてくれば良かったでしょうか」
「やめろ。うるさくなるだけだ」
「帰ったら、なんて言いましょうか」
「なにも言うな」
こうして、筋肉同士の戦いは、幕を閉じたのであった。
《おしまい》