中田満帆

わたしはキャデラックの卵巣から電波を受信しました。何卒、よろしくお願いします。

だれがいったい、こんな迷宮におれを誘い込んだんだ？ なぜ、おれはひとりびっちで友達もいないのか？ なぜおれは股下77糎なのか？ だれか教えろ、頼む！

酒が呑みたい、そして愛が欲しい。 家出娘の恋人になって、幻想のベガスを旅したい。 当方37、無学。 恋愛経験なし。 だれか、かまってくれよ。

だれにも望まれない人生のなかでおれは光りを探る。それは文学だ。小説のあいまにおれは少女と出会う。かの女はからだは黒紫に輝いていて… …。

おれは頼まれたヤマをものにしようと躍起だった。ところが、おれたちの計画は破綻のなかで終わってしまった。

ぼくは喪ったものについて語る。あるいは手に入らなかったものについて語る。それはまるで氷上に舌を垂らすようなものだ。だけど、そんなことが偶には救いになったりもする。

気づくと、おれは腹を押さえながら傘を差して、元町は、裏通りのガード下まで歩いてた。雨が激しかった。血はそれほどでてない。いまならまだ助かるというのにそこらで酒を呑み、最期に残って…

茹であがったタンクのなかに野性のジャコメッティが増殖する夜、おれは古紙回収の仕事を首になって、街へ出た。そこで強化プラスティックの甲冑を着た、むかしのクラスメイトたちに出会す。緑…

だれだって普通は仕事にいきたくない。でもおれはそれを実行してしまった。それからというもの、政府のお尋ね者となり、地下世界での苦行に耐えている。おれを救えるのは音。たったひとりの音…

これがおれの人生だ。

マスターベーションに勝る快楽が詩や、思考、そして読むことにあればいいのに、いまはない。

愛に飢えた通りを貨物トラックが走る。そして疾走するその影におれは不定形の猫を見つけた。

なろう系小説なんて大嫌いだ！ おれは垂直なんだ！

たった1台のラジオがおれの人生を奪い去っていった。

至近距離で顔面が打ち抜かれる夢を観た。おれはボールを投げて、室のなかの憂鬱をどうにかしようとする。そんなおれを殺し屋に仕立てた連中をおれは赦しはしない。

港湾労働の夏、おれは口さがない女たちとバナナに塗れていた。

おれは売れない作家もどき。アンドロイド・イレイザー704と暮らしてる。あるとき、おれの光線銃が暴発し、かの女を撃ってしまった。砂漠だらけの惑星で、たったひとりのおれたちは瑕を癒や…

探偵稼業に厭きたおれは旅にでた。街は疫病で封鎖され、たったひとり残された老人が桜の樹に登り、歌を詠んでいた。

おれは中年夫婦の依頼で、葉山にむかった。家出娘がいるはずだった。単純な仕事のはずだった。だが、おれの眼のまえでかの女はひとを殺してしまった。そしてその裏には電子頭脳を巡る戦いが始…

ヴィム・ヴェンダースはまだ生きているのか。ジム・トンプソンは生きているのか。おれは銃把び指紋を数えながら歩く男。連れあいは悪魔。心臓の都市のなかで、獣の眠りを電波する畜群を通り抜…

おれは探偵業から足を洗って、神戸で鰥夫暮らしを始めた。ある日、通りで女の悲鳴がした。金塊を隠し持った女が車に撥ねられて死んでいた。翌日、知らない男から脅迫と依頼があった。おれは旧…

美しいビジョンが呼吸する湖畔で、大人の男が公然猥褻で逮捕された。おれは殺人事件を待っているが、それは小説のなかでは発生しない。混紡とリンボを観点する世界で、もはや血には意味がなく…