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四章 貌のない歌姫 あとがき

 清廉未羽という新たな登場人物、ブイチューバー要素の少ない話。
 作者としては読者の皆さんにどう受け止められるのか不安な要素の多い章でした。
 とはいえ、ここまで読んでくれた皆さんは綾野礼の物語としても楽しんでくれているのでは……と思い、どうにか物語を書き終えることができました。話のテンポを気にして省いた話もちょいとあるもののそれでも十五万文字。長旅でした。

 以下、作者による四章についての余談。
 メタ的な視点が苦手な方は撤退準備をお願いします。

・・・

・綾野礼について

 作者としては夏なので『水着回』『コミケ回』みたいな定番や『ブイチューバー』的な話を書こうかなと思っていたものの。 
 礼くんの気持ちを確認してみれば執念にも近い感情でドラムを叩きはじめたのでそれらのイベントはご破算。
 夏期講習、妹のご機嫌取り、真野先輩と遊びに行く以外はずっと太鼓叩いてましたわ。
 通信講座の先生と鬼コーチ清廉の指導、そして『これまでの夏を終わらせる』という精神バフがあったので本番はノーミスで叩けたと思います。

 真野、星野というメンタル安定剤が揃っている上に柚乃との旅行である程度気持ちの整理がついていたのも大きいかと。礼にとっての七月、八月は浄化と禊。
 そして再生の夏でした。


 ・清廉未羽について

 四章のヒロイン。光と灼熱ダブル属性の歌姫。
 作者的ざっくり外見イメージは『雨の降る日、お屋敷の窓辺に静かに佇むお嬢様』みたいな感じでしょうか。

 一方の中身は善良で良識はあるものの、好き嫌いも選り好みもする我が儘お嬢様気質。ストイックで苛烈でプライドも高く、拘りも警戒心も自己肯定感も強い。
 そんな性質を清廉自身も厄介だなと思っているので普段は感情を抑える傾向にあり、その結果愛想が悪くぶっきらぼうな態度に見られることもある――。

 と、いうのが清廉の基本情報。爆弾かな?
 これまでの各章ヒロインの場合、関係性を積み上げて最後に『どかん!』と本音を晒すという感じだったのですがこの歌姫さまの感情やエネルギーの大きさたるや凄まじくポンポン爆発して辟易しました。
 序盤の『星野に認められたいあたし』『なんで綾野が認められるのよ』という感情だけでシナリオ一本出来たのになぁ、なんて書きながら思ったくらいです。心の軽やかさがアンジェとはまるで違う……。
 
 ちなみにゲーム的表現をするならば――。
 礼と清廉はかなり相性の良い気の合う二人ですが、春に礼がマリリと出会わなかった場合は今回のエンディングにはならないだろうなとも思います。
 その場合の夏ルートは柚乃、星野、清廉パパがメインのビターエンド。清廉は『楽しいだけの夏』を終えるか、傍観者で終わる可能性大でした。
『妖精』『天使』『幽霊』を経て心がほぐれた礼でないと清廉を受け入れることは出来ないのでしょう。
 

 ・星野晴について

 女の子ばっかり出る本作で颯爽登場のアラサー男子。……男子?
 作者的ざっくり外見イメージは『すずめの戸締り』の芹沢さん、を三枚目にした感じでしょうか。古着を好む。

 レクチル、というバンド名は作者の誤字。最初は『レチクル』と書いていたはずなのにいつの間にか語感の良さから『レクチル』と書いており――レクチルにしました。
 レチクル……レチクル座。大きな恒星もない小さな星座。星座にまつわる神話も伝承もない。
 バンドを解散したことへの後悔は無いが、未練があった。
 スタジオミュージシャンとして生きる道もあったかもしれないけれど、バンドマンとして目指していた夢があったのだろう。消化不良の気持ちを抱えたままモラトリアムを終えようとしていたが、礼と出会う。
 
 星野の出発と終着。礼の亡失と再生。
 二人の間にある縁を前にしては、とある歌姫さまも『ぐぬぬ』と負けを認めざるを得なかった。
 もし『歌姫』がいないのであれば互いの過去について深掘りもあったかもしれないが、それは純粋に音楽を楽しむ二人には余分な情報、ノイズだっただろう。
 執念、情熱、未練、憧憬――そして、それらを弔う灼熱の歌姫によって星野の夢は輝いた。
 三人揃っての星野ラストリゾートだ。

・・・

 ということで。
 もう、これで完結じゃね?
 作者的にはそんな終わり方を迎えた四章『貌のない歌姫』はいかがだったでしょうか。
 楽しんでいただけたのなら嬉しいです。
 最後に宣伝というほどでもないですが、Xで感想呟いたりしていただけたらイイね押しに行きます。
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 そんなとこです。最近すごく寒いですが、体調に気をつけてお過ごしください。

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