物語を嗜んで20年ほど。 趣味がこうじて、昼間から喫茶店でのんべんだらりと物を書く人になった。 遅筆もここまで来れば《《あの人はそういう人だから》》とみんなに笑ってもらえる。 それでも付き合いが切れないのだから、ははあ、私の周囲はなんと呑気なのだろう──と言ったらさすがの暢気な笑顔もひきつるかもしれないが。 珈琲はBLACK。たまには微糖を嗜んで、一日二度の食事と、コップ一杯の晩の酒。 日々が退屈なほどに楽しく、唯一足りないのは運動か、それとも若くして失った右半身の身体機能か。 左脳の出血は私を障碍者として生き残らせはしたが、家族との別れは胸に重たかった。 まあそれでも。 私はいま人生を楽しんでいる。 身体障碍一級で、仕事も、家族も失って、暗く閉ざされた未来の只中、気力もなく死んでいくのだろうと思ったが、そうは問屋が卸さなかった。 日々、大好きな珈琲と物語を書いて過ごせている。驚きだ。人生何が起こるかわからない。 楽しいこともあれば、苦しいこともある。 生きろ! 何て言わないが、折角だ、楽しいを充分に楽しんで拳を突き上げて死んでいこうかと考えている。
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