『夜魔殺ぎ』 ~盲目の少女と、一振りの刀……そして“猫”は少女とともに歩き出す~
キャッチコピー:世界で一番美しい「絶望」が、そこに産まれ落ちた。
https://kakuyomu.jp/works/822139844616829260
5話読了(レビューは三和時点)
総評:
心をくすぐる語彙のセンス。
美しい×絶望という相反するような色を持つ言葉が並んでいる点が興味を引く。
伏線に見える要素も散りばめられており、次話への推進力がある。読ませる力は強い。しかしながら、タイトルに掲げている、盲目と猫の話はいつ出てくる? という疑問が序盤に付き纏う点が没入感を削いでいる。
良いと思える点:
・美しい×絶望という相反するような語感が並んでおり、キャッチコピーの時点で興味が惹かれる。
・ユズリハ
慌て方が、可愛い。「あああああの、私は大丈夫みたいです。ありがとうございました」 辺りはコミュ障だからかと思えば、お姉さんが美人という予想外の理由。
・情景や、動作がしっかり描かれていて物語が頭の中で映像化できる。
・第3話でメガネを掛け直した瞬間に、女性が「鮮烈で強烈な『緋色』を纏っていた」と視える世界が立ち上がる「眼鏡で色が見える」という作品の固有性が、説明ではなく出来事として出てくる点が良い。
・1話ごとの推進力がある。
会話のテンポもよく、情報がスラスラ入ってくるので、次回は何が起きるのか?という気持ちが、次話をクリックさせる。
・———スグハ姉さんも、優しいひとだった。からの人物紹介と、設定開示が自然で手が止まらない。
・ユズリハ×お姉さんのバディ感
・「……やっぱり派手な人生送るヒトタチって怖い。 」
→ヒトタチというカタカナワードが出た瞬間にツクラレタに通じる不気味さを感じた。
気になった点:
・盲目・猫の扱い:
前提として私は盲目=失明だと思って作品を読みました。
概要では設定が明言されているのに、序盤の本文が通常視力の描写で書かれていて、読者体験として盲目が伝わりにくい 。
意図的なのかもしれないが、見る関係の描写が多く、見えているの?見えていないの?と読者として手が止まる。
「フレーム越しに見える、あの野太い声の持ち主は~」「メガネ越しに見えるその色~ 」などは、読み返すと引っかかったが、初見ではまず無理。
第2話ラストで「視界は真っ暗になった」と置いているので事故で失明する話なのかと思いきや、そうではなく、失明は?となる。
「おーい」声をかけてくれていた女性が、私を無視するな、と言わんばかりにこちらを覗き込んでいた。」や「自動車がひしゃげていた。」
→この直後に「メガネのレンズ越しに姿を現したその女性は——— 」となるのでメガネ無しで見えているじゃんとなる。
設定を考慮しても、物理的な形状や衣服のディテールまで正確に把握できている点で違和感が生まれる。描写がうまいからこそより目立つ 。
タイトルで猫を約束している一方、概要でも猫が説明されない。
・語彙選択
文体の美しい和語・比喩が強みなので、地の文の『陽キャ/陰キャ/クールダウンなどはは、語彙の温度差が出やすく、地の文では違和感が出る読者がいる。
・私———山祇やまづみユズリハは~父と姉を亡くした。
→今16歳で事件は13歳に見えるが、齢16で~と出てくるので16歳の時に事件が起きたようにも読めて、いつの話?となる。
・いつもと変わり映えのないある日の夜~どうしても思い出せなかった。
→我が唐突に出てくる。
時間の跳躍。記憶の欠如。集めるのが大変だった、ツクラレタなどの語彙の選択から、主人公が何かしらに巻き込まれた、若しくは取り憑かれていたなどの可能性は考えられる。直後に医者のシーンを置いており、これはPTSDですよと誘導しているようにも見えるので意図的にも見えるが、だとしても梯子がないため「我」が初見時には、唐突に感じる。
・ユズリハ
→私は孤独だった。の一文で済まされており、主人公の足場(行動原理)が見えない。故に行動や、選択の背景が感じられず、作者都合で動いているように見えるリスクがある。過去開示はあるが、それがどう主人公の行動などに影響しているのかのボールが1話の時点ではこちらに渡されている。
・「———あ」~自身に迫る危険にまったく気が付かなかった。周辺
→シーン、文章自体はわかりやすいが、読者の脳内映像が一瞬つまずきやすい順番になっている。意図があるのでなければ修正したほうがいいと思います。
・あとに出てくる子宝市にはルビをふっていて、先に出てくる子宝山にはないので、ミスであれば修正したほうが良いと思います。