こんにちは。
まだまだ暑いですよね。
虎口の追憶5〜安楽の酒〜に入れようと思ってたけど編集の都合でカットしたアサヲの旅籠での小エピソードを紹介します。
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「お待ちどうさま。氷あずき、二つ」
硝子の器が、アサヲの前へ置かれた。
山のように盛られた白い氷。艶のある小豆。その上を、白い練乳がゆっくり流れている。
(これは……いったい……何が起きてるの)
目が離せない。
氷なのに、菓子。
しかも、少しずつ形を変えている。
「アサヲ」
「……」
「食べないのか」
「……綺麗ですね」
ようやく、それだけ言った。
それから我に返ったように器へ顔を寄せる。
「氷が細かいです。練乳は――」
「溶けるぞ」
「……しまった」
慌てて匙を入れる。
一口。
アサヲの動きが止まった。
「どうした」
「……甘いです」
「そうか」
もう一口。
三口目。
四口目。
「早い」
「溶けますから」
「さっきまで見てただろ」
「観察は終わりました」
さらに二口。
その直後、匙が止まる。
アサヲは無言で額を押さえた。
「どうした」
「……頭が痛いです」
「食うのが早い」
「……先に言ってください」
そう言いながらも、器だけは手放さなかった。