あらためて本作の目次を見てみると、「西洋事情」と「窮理図解」のあいだで投稿日が四か月空いている。
投稿時期と執筆時期がズレてるので、実際に執筆がストップした期間は半年ほどである。
どうしてそうなったのか。「日本文学全集」にそった新たなエピソード作りに難航していたからだ。
「福沢諭吉集」まではすんなり話を作ることが出来たけど、次の巻から先がぜんぜん出来なかった。
朗読する作品が、なるべく物語を動かす装置として機能するように作っていたのだが、その縛りが仇となったようだ。
実をいうと、当初の予定では「福沢諭吉集」の次に来るのは「政治小説集」ではなかった。
第二巻 仮名垣魯文集
「西洋道中膝栗毛」「安愚楽鍋」「胡瓜遣」
第三巻 啓蒙翻訳集
中村正直「西国立志編」「自由之理」、中江兆民「民約訳解」
このように続くはずだったのだ。
ところが仮名垣魯文のヤローがまったく話に絡んでくれない。
登場人物の行動のきっかけにはならないし、状況と二重写しになったり対比的にもならない。そもそも翻訳ができない。
ないない尽くしの、まるでコミュ障でボッチの陰キャみたいな作品ばかりであることが判明したのだ。
坪内逍遥らが脱却を目指した戯作のサンプルとして必要だったのだが、泣く泣く「仮名垣魯文集」はカットすることにした。
では「啓蒙翻訳集」はどうか。こちらはもう、どんな登場人物にもうまく絡んでくれる、コミュ力オバケのような作品群である。
ただ、いかんせんこの巻は論文集なのだ。最初の二巻が論文集になってしまうと、文学全集っぽさが全くなくなる。
という訳でこれもカット。
おかげで入れる場所がなくなった要素が山ほど出てきた。
トーレを追放した喇叭隊のその後とか、ケーンが代役をつとめる芝居を見にいく話、カラフルなマントをくれた丁稚との交流や、貴族屋敷の下男がマフィアの情報屋に転落する話などである。
ほとほと疲れ果てた筆者は、執筆を投げ出して別の作品に取りかかることにした。それが「異世界でわかるSDGs」だ。
この短編は2025年6月2日から7月15日にかけて投稿された。
短編とはいえ、ひとつの作品を書き上げた高揚感に包まれた筆者は、一週間後の7月22日に本作をエイヤッと投稿してしまった。
五話まで書き溜めてるし、何とかなるだろうと思ったのだ。ところがならなかった。新たな問題点を発見したのだ。
「学問のすゝめ」と「西洋事情」を読み返してみて分かったのは、作品解説と引用文が想像以上に容量を圧迫するということだ。
一話あたり5000字前後と決めてたんだけど、通常の小説のつもりで叙述していると、思ったほど話が進まない。
このままだと何も起こらないまま、いたずらに朗読を重ねるだけの小説になってしまう。
もっと効率よく叙述して、密度を上げていく必要がある。
そこで効率のいい叙述を学ぶために、柴田錬三郎の「眠狂四郎無頼控」を読み返してみることにした。
この作品は、今まで読んだ小説の中で一番密度が高いと思ったからだ。
また、一話完結のエピソードを連ねながら、全体として一つの物語になっているという構成も、本作に取り入れたかった。
ただ、いったんクールダウン期間を設けてしまうと、腰が重くなってなかなか執筆再開できなくなるんだよなあ。
「眠狂四郎無頼控」全五巻を読了して、なんとなくコツがつかめた気がしたのでパソコンの前に座ったら、指がぜんぜん動かない。
そうこうしてるうちに夏が終わり秋も深まる。
なんとか「窮理図解」「文明論之概略」を書き上げて、作品のペースをつかんだと思えたのは、師走に入ろうという頃だった。
これでようやく脳が執筆モードに入り、いけると確信できたので、筆者は12月3日にふたたび投稿を再開したのだった。
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創作ノートは以上となります。
新作「ドラゴンライダー慕情」鋭意執筆中です。
舞台はナーロッパ世界ではなく、ドラゴンや魔獣がいる並行世界における、第二次世界大戦前夜の国際謀略ものです。
ジャンルはSF? ファンタジー? 歴史? ミステr……分からん!